【携帯】物書き総合スレ【ゲーム】

このエントリーをはてなブックマークに追加
1ぬるぽ
携帯ゲーム全般の小説やSSを書きたい香具師はここでどうぞ
2名無しさん、君に決めた!:05/01/03 20:26:51 ID:???
>>1
ガッ
3名無しさん、君に決めた!:05/01/03 20:27:10 ID:???
こんなスレ立てる発想は俺にはできない
さすが>>1
4名無しさん、君に決めた!:05/01/03 20:27:45 ID:???
4様gettttttttttttttt
5名無しさん、君に決めた!:05/01/03 20:30:48 ID:???
こういうのはゲサロだと思います
6名無しさん、君に決めた!:05/01/04 18:44:33 ID:???
Rivieraスレの>>462待ちsage
7リヴィエラスレ462のSS:05/01/04 18:49:21 ID:???
ここはリヴィエラ…守護者ウルスラと共に数多くの精霊達が住まう地である。
神界が発動させた神罰により、滅びへの道を辿る事になったが………それは告死天使エクセルとその仲間らの尽力によって免れた…。

晴れ晴れとした麗らかな日より。
暖かな陽光と、広く澄み渡る青空……その下に佇むラクリマ城。
かつて黒き魔城と呼ばれ恐れられていたそれは今、観光地として賑わいを見せている。
近隣のエレンディアの精霊達が中心となって外観や内部の修復が行われ、その姿は見違える程のものだった。
そんな中、一角の中庭で…。

緑髪の少女が、中庭へ抜ける道からひょこっと顔を出す。
そして、辺りをきょろきょろと見回していると視界の隅に見慣れた者を確認した。
「エクセル…様?」
その隅で屈み込み、地面の何かを調べている少年に声をかけながら歩み寄っていく。
少女の腰には1本の突剣が携えられていて、動きに合わせ鞘がしゃらんと軽やかな音を立てる。
「…ふーん、これは……え?…やぁ、フィア」
エクセルと呼ばれた少年は、自分に声をかけてきたフィアに気付くとそちらを向く。
彼もまたフィアと同じく、腰に帯剣していた。
雷光を象ったような特異な形状をした長剣だった。
「こんにちは、エクセル様。何か見つかりましたか?」
「うん、今丁度これを見つけたよ」
その手には、たった今採ったであろう草が握られている。
「あら…薬草ですね。ちょっと貸して頂けますか?」
「あ、はい。うーん…僕にはよく分からないな…」
8リヴィエラスレ462のSS:05/01/04 18:50:09 ID:???
フィアに薬草を手渡しながら、エクセルは首を傾げる。
薬草はおろか、植物に関しての事には滅法疎いので当然と言えば当然だろう。
それに反してフィアは…。
「ありがとうございます。…ふふ、気になさらなくていいですよ」
優しげな微笑みを向け、自分も屈み込んだ。
同時に、彼女の長髪がふわりと柔らかな靡きを見せる。
「あ…うん、ありがとう」
エクセルは何処か照れくさそうに返す。
「………これは幻草キュクネ、ですね」
受け取った薬草を観察して暫しの後、その種をはっきりと伝える。
「そうだったっけ…でも、どうしてこんな所に…」
フィアが言う幻草キュクネは「エリクサー」という大きな回復効果がある薬を調合する時の薬草として重宝されていた。
調合するのは難しく、その手の熟練した知識を持つ者でないと不可能と言われている。
「群生地と違う所に生えているという事はよくありますわ」
「そうなの?」
「ええ。でも、キュクネがこのような所にあったのは初めてです」
掌にある幻草キュクネと、それが生えていた所を交互に見やる。
不思議そうな表情でいたフィアは、少しの間だけ思案していたがふとエクセルと顔を合わせた。
「え?」
「とりあえず考えるのは後にしますね。折角なので今からエリクサー調合してみますけど…エクセル様はどうされますか?」
9リヴィエラスレ462のSS:05/01/04 18:50:54 ID:???
「僕はもう少し探してみるよ。まだ何かあるかもしれない」
エクセルはそう言って、また地面に目を向け探しだす。
「分かりました。では、また後程」
「うん、またね」
フィアは軽く会釈をし、エクセルの声を聞きながら踵を返す。
その後には、地面や壁とにらめっこをするエクセルが残された。

コツコツと音を立てて、石段を上がるフィアは先にある武具や道具を管理する倉庫に向かっていた。
途中、あちこち石壁をくり貫いただけの窓から陽が差し込み地に光の四角を作る。
この城は拠点として建てられ、かなりの時が経っていたがそれでもしっかりとその形を崩さずにいた。
しかし、中にはまだ不安定な場もあり修復にも時間を要していたのだった。
「この上よね…」
と、一歩踏み出し石段を登りきったその時…。

ドガシャッ!ガラガララッ!…ズ…ズン…

「えっ?」
突如、けたたましく響いた何かが落ちる音と崩れる音。
胸騒ぎがして、とっさに腰に差した鞘から突剣を抜き、手に握る。
そして、素早く駆け出し眼前にある倉庫入り口の脇で立ち止まった。
「………まさか…まだ魔族が…?」
警戒を強め、慎重に部屋の様子を伺おうとちらりと顔を覗き込ませる。
薄白い埃と塵とが舞い、霧のように部屋一帯を包んでいた。
「けほ…けほ…」
それを少し吸ってしまい、小さくせき込む。
すぐに何とか我慢して、目を凝らして中を見てみるがまだ霧が晴れずにいた。
が、しかし…。
「けほけほっ…ル、ルゥリちゃん…もっと静かにお願いね…」
「こほっ…ご、ごめんなさい〜…」
10リヴィエラスレ462のSS:05/01/04 18:51:45 ID:???
中から聞こえてきたその2つの声は、フィアがよく知るものだった。
「シエラ、ルゥリ?」
フィアは、突剣を鞘に収めると声をかけながら部屋に入っていく。
すると、徐々にであるが霧が晴れていき中が見えてくる。
そこには崩れ落ちた樽や木箱、宝箱によって山が出来ていた。
「……………」
その様を見て、フィアは沈黙してしまう。
哀れ、ルゥリは頭から宝箱を被って必死にもがいている。
かたやのシエラは見事に埋もれてしまっていて山の中から両の手が伸びていた。
シエラは急ぎそれらを凄い早さでかき分け、すぐに立ち上がり膝をぽんぽんと叩く。
ブーツに付着していた埃が吹き出てまたせき込んでしまう。
「けほ…わたしとした事がドジっちゃいましたね」
苦笑いを浮かべシエラは山から出てくるとふぅ、と一息つく。
「あの…大丈夫でしたか?」
「わたしは大丈夫だけど、ルゥリちゃんが…」
シエラが指さす先には、宝箱を引っこ抜こうと頑張るルゥリが。
「あっ!ル、ルゥリ…ちょっと待って!」
「え?あっ、その声はフィアちゃん〜」
ルゥリはフィアの声を聞き、嬉しそうにする。
しかし、宝箱を被ったまま喜ぶルゥリの姿は何処か異様な感じだった。
「え…えっと…とりあえず、ルゥリ?そこでじっとしていて下さい」
そう言ってルゥリの後ろに行くと、宝箱に手をかけた。
すっぽりと被さったそれを見てフィアはどうしたものか…と考える。
「ねぇ…?どうするのかしら?」
シエラが横から声をかけ、自分も宝箱に手を置く。
「ええ…でも、流石に力任せというのは無理がありますよね…」
「それだとルゥリの首が痛くなっちゃうよ〜。今もさっきので少し痛いもん…」
11リヴィエラスレ462のSS:05/01/04 18:52:39 ID:???
先程、力一杯に引っ張っていたせいで首がつってしまい痛みだしていたのだった。
ルゥリは首をさすりながら力任せ、という案に反対する。
「じゃあ、もしかしたら何か引っかかっているのかもしれないわね」
シエラは腰を屈ませると、ルゥリが被った宝箱の中を下から覗く。
「何か、ですか…」
「そう。ちょっとそのままでいてね」
「分かったよ〜、シエラちゃん」
快く答えたルゥリはその場でぴたりとも動かない。
そして、シエラが丹念にあちこちを調べ始めだす。
宝箱の外観を眺め回した後に、中に手を入れて探る。
すると…。
「あ…」
「え?ど…どうしたの、シエラちゃん?…あっ?」
ルゥリが声をあげるのと同時に、パチンと軽快な音がする。
「ふふ、良かったわね。…これで宝箱が取れるわ」
そう言ってシエラが、中から手を抜いた。
「シエラさん、何があったんでしょうか?」
「ルゥリちゃんの髪留めが宝箱の中で引っかかっていたのよ」
不思議そうな顔で自分を見るフィアに、優しく答えてやる。
「ルゥリの髪留め…あ、だから髪もちょっと痛かったんだ…」
「そうよ、でももう大丈夫。宝箱も…ほら、この通り」
シエラが宝箱を両手で掴み、持ち上げる。
さっきまで取れなかった事が嘘のように、難なくスポッと取れた。
「あっ、取れたー。わ〜い♪ありがとう、シエラちゃん!」
被さる宝箱から解放されたルゥリは、途端にはしゃぎだす。
「ルウリったら…調子にのっているとまた…」

パシッ…ヒュン!

フィアが言い終わる前に突然何かが飛来してきた。
「……!」
12リヴィエラスレ462のSS:05/01/04 18:54:37 ID:???
その何かに狙われていたのはルゥリだった。
それにいち早く気が付いたフィアは地を蹴立て、ルゥリを抱きかかえ飛び退く。
カツッ!
乾いた音と共にルゥリがいた所の石畳の隙間に刺さったのは…。
「矢?………ッ!?」
シエラは地に突き立った矢を見た後、入り口に鋭い視線を向ける。
そこには、既に次の矢を番え弓を構えていた何者かがいた。
それは弓を専門武器として正確な一撃を得意とする魔族、アマゾネス。
「魔…族?」
「倉庫を潰せば有利になるかと思ったが…」
呟くフィアを余所に、アマゾネスが番える弓に一層力を込める。
「へっへ…そう力むんじゃねぇ」
「そうは言っても相手は油断ならないよ」
不意にアマゾネスの背後の入り口両脇から声がした。
「え?え?まだ何かいるの〜?」
「落ち着いて…。動揺を見せるのは敵に余裕を与えてしまいます」
フィアはルゥリを窘めると、そっと鞘に手をかける。
「おっと…妙な動きをするんじゃねぇぞ」
その動きを見て、ブロードアクスを玩具のように軽々と扱う魔族が睨みを利かす。
斧使いバンデットウォーリア…蛮族の戦士たる者で高い攻撃力と体力を持つ。
「ふん、あの小僧はいないようだけど…まぁいい、あんた達にはここで消えてもらうよ」
続いて出てきたのは、樫の杖を手にしたバンシーという魔女だった。
メリッサと名があるバンシーは、エクセルらと浅からぬ因縁があったのだ。
もっとも、それは逆恨みの類であるのだが…。
「メリッサ、とりあえず1人潰しておこう」
アマゾネスはにやりと笑み、矢の切っ先をシエラに向けた。
「そうだな…俺も見たとこ、あの女が頭のようだぜ…」
137〜12:05/01/04 18:55:53 ID:???
っと・・・代わりに貼らせてもらいますたm(_ _)m
14名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:13:16 ID:???
>>13


続きを期待しつつ空age
15名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:18:07 ID:???
バンデットが出てるって事はMax技のカルネージドライヴあたりで服が切(ry
16名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:19:56 ID:???
本当に来るのだろうか・・・・。
462よ、このスレならスレの趣旨にも沿ってるし、期待してる奴もいる。
非難・中傷に負けずに頑張って続けてくれ!
17名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:20:39 ID:???
バンシーの炎魔法で(ry
18名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:24:34 ID:???
>>13
貼り作業もつかれさん

>>15
>>17
おまいらはそんなにそういう方向に期待すんのかよw





















むしろシューティ(ry
19名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:40:37 ID:???
何にしても展開は462次第だな、当たり前な事だけどさ。
20名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:44:41 ID:???
>>17
炎で合ってる………と思うでち
フレイストームだかフレイストリームだったような気がするでち
21名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:47:08 ID:???
またタイニィシーフが紛れ込んでるのか。
つか、魔法系のあいつら杖でたたくだけなのに何で属性付きなんだ?
どう見ても物理・・・。
22名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:47:52 ID:???
「死ねっ!」
アマゾネスが矢を射ろうとしたその瞬間だった。

    ズン

「ぐぼぉ・・・・」
アマゾネスの腹部には剣が突き立っていた。フィアがその剣の持ち主を認め、明るく叫ぶ。
「・・・アクセル様!」
「皆、大丈夫だった!?」

と喜ぶのもつかの間、矢を射る瞬間に不意をつかれたアマゾネスの手元が狂い、矢はシエラではなく、
思いもよらぬ方向に放たれた。

「アヘッ!!?」

気が付けば、その矛先は仲間であるバンデットウォーリアの頭部を横から射抜いていた。

「「「「「・・・・・・・・」」」」」



エクセル「みんな、勝ったよ!!」
23名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:49:44 ID:???
>>22
ワロタwww

てかアクセルってスパロボAの?
それともX?はたまたKH?
・・・・いや、すまん
24名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:50:36 ID:???
>22
コーヒー吹いたw
マジでこんなんなったらすげぇw
25NAME OVER:05/01/04 19:55:26 ID:???
いつの間にこんなスレが…。
今はまだ構想を練ってる最中だけど、書けたらなりきりダンジョン3のを投下してもいいかな?

と、いうかまだクリアしてなかったりw
26名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:56:32 ID:???
アヘッ、がツボに………(w
27名無しさん、君に決めた!:05/01/04 19:59:21 ID:???
( ゚д゚)462まだー?

>>25
どうぞどうぞ。
存分に書いちゃっておくんなまし。
28名無しさん、君に決めた!:05/01/04 20:04:15 ID:???
壁|∀・)他にも書き手さん来ないかなー
29名無しさん、君に決めた!:05/01/04 20:21:55 ID:???
Riviera萌えスレはここですか
30名無しさん、君に決めた!:05/01/04 20:24:08 ID:???
リヴィエラ専用になるのはちょっとなぁ・・・。
31名無しさん、君に決めた!:05/01/04 20:26:13 ID:???
ってか、他ゲームネタも待ってる゚+.(・∀・)゚+.゚
32名無しさん、君に決めた!:05/01/04 20:27:42 ID:???
ダンシングソード閃光の百合萌えSSきぼん
33462 ◆KpJXLAj9Eo :05/01/04 20:57:29 ID:???
遅れてすまん。
とりあえず俺のはこっちで続けるよ。
今日は訳あって休ませてもらうけど…。

>>22
あっさりした決着……つい笑ってしまった。
何か敵が間抜けっぽいのは気のせいかな?
34名無しさん、君に決めた!:05/01/04 21:02:27 ID:???
>>33 幾らでも待つさ!(*・∀・)b
35名無しさん、君に決めた!:05/01/04 21:05:29 ID:???
(´∀`)よかったよかった
462さん、これからも頑張れ
36名無しさん、君に決めた!:05/01/04 21:21:44 ID:???
462氏よ、俺も気長に待つぜ。
マイペースで頑張れーヾ(・ω・。)人(。・ω・)ゞ
37名無しさん、君に決めた!:05/01/04 21:32:35 ID:???
無理(・A・)イクナイ!!
462のペースにお任せするからがんがっておくれ。

(*´−`)。o(これからどんな展開になるのかどうか気になる罠)
38名無しさん、君に決めた!:05/01/04 22:00:50 ID:???
今の所は462氏だけなんだな…漏れも待ちだけど。

(´・ω・`)アイデアとか考えるのは出来そうだけど、いざ文にするのが難し杉…OTL
39名無しさん、君に決めた!:05/01/05 00:30:01 ID:???
あー、462氏に触発されて何か書きたくなってきたよ
40名無しさん、君に決めた!:05/01/05 00:31:25 ID:???
>>39
カイチャエ!
4139 ◆R62vajPc3M :05/01/05 01:10:52 ID:???
>>40
書き始めてみた
一応ゲーム終了後
とくにネタバレはなしの予定
4239 ◆R62vajPc3M :05/01/05 01:13:12 ID:???
 夜も更けたリヴィエラ。かつては恐ろしさに満ちていた夜の闇も、平和を取
り戻し魔物の数を減らした今となってはただ静かで、優しい。
 そんなリヴィエラの町の一つ、エレンディア。
 そこには一軒の家がある。木々に囲まれた、と言うよりは木によって作られ
たその家の中は、木特有の暖かみに包まれているかのようだ。
 その一室でランプの炎が揺れている。昼は賑やかな空気を生み出すであろう
食卓のテーブルは、そのあえかな明かりに照らされ、今は落ち着いた暖かみに
包まれていた。
 そのテーブルに一人つくものがいた。
 腰まで届く、深い緑のまっすぐな髪の少女。その顔は、伏せているためその
緑の髪に隠れ見えない。
 ただ俯き、微かに肩を震わす以外に動きはない。時折しゃくり上げるような
声がする以外、音もない。
 ただランプの明かりがまどろむように暖かで。
 それらは一言で言うなら、やはり。静か、と言うべきだった。
「フィアちゃん、どうしたの〜……?」
 静寂が破られる。突然の誰何の声に跳ね上がるように緑の髪の少女――フィ
アの視線の先にいたのは、
「ル、ルゥリ……!?」
 フィアのねぼけまなこをこすりながら、階段を下りてくるのはルゥリだ。い
つもは二つに分け結んでいる亜麻色の髪を、寝床にいたのか今はストレートに
おろしている。
「眠れないの……?」
「え、ええ。ちょっと目が冴えてしまいまして居間まで来ただけで別に特別な
ことはなんでもないんですよっ、いやですね眠れないと肌が荒れてしまうと言
いますし」
4339 ◆R62vajPc3M :05/01/05 01:14:41 ID:???
 ルゥリの問いかけにまくし立てるように答えながら、フィアは目をこする。その声はたどたどしく、滑舌も微妙に怪しい。妙な様子にルゥリはわずかに眉を寄せる。
 こすられるフィアの目元は赤く腫れているし、瞳もまた潤んでいる。
 ルゥリはそんなフィアを前に、寝惚け眼をはっきりさせるように目をこする。
 二人して、言葉もなく目をこする。つかの間のどこか気まずい沈黙。
 その静寂を破ったのは、やはりルゥリだった。
 静かな暇に響く音は、昼と変わらぬルゥリの軽快な足音。それは驚くフィア
まであっという間に達する。
「ル、ルゥリ……?」
 目を丸くするフィアに答えるのは、ルゥリの満面の笑顔。
 笑顔のままに、ルゥリはフィアの手を取り、強引に立ち上がらせる。
「よし、フィアちゃん! いっしょに寝よっ!」
 疑問の声に応えるのもまた、突然と言えるほどに明るい声だった。
 抗議の声を上げる間もなく、ルゥリは強く手を引き木の階段を登り、まるで
投げ出すようにベッドへとフィアを寝かしつける。
 白いベッドシーツの上に緑の髪が広がる。
「ちょっ……ちょっとルゥリ……!」
「ダーイブ」
 文句を言い終える間もなく、言葉のままに身体を中へと投げ出すルゥリ。
 それは真っ直ぐにベッドに横たわるフィアへと落下する。
「きゃあっ!?」
 辛うじてかわすが、ルゥリのダイブにベッドが波打つ。その激しさにフィ
アはつかの間翻弄される。
「いい加減にっ……!」
 フィアの抗議はまたしても遮られる。今度はルゥリに抱きしめられたからだ。
慎ましいとと言うよりは幼いと言った方が適切なルゥリの胸の、柔らかな感触。
それにつぶされて口が開けず、今度は声自体が出せない。でも、なにより。
 暖かい。
 そう感じてしまったことが、なによりフィアの言葉を止めさせた。
 でも、それもつかの間。
「……怒りますよっ!」
 抱きしめる腕から強引に抜けルゥリに言葉をぶつける。それを迎えるのは、
ルゥリの真っ直ぐすぎるほどひたむきな瞳だった。
4439 ◆R62vajPc3M :05/01/05 01:16:25 ID:???
今晩はとりあえずここまで
書いて問題ないようだったら、
続きは明日以降に
45名無しさん、君に決めた!:05/01/05 01:38:53 ID:QWvGznpL
ちょっと怪しいとこありそうだけどなんか…

スゲー(゚∀゚)イイ!!
46名無しさん、君に決めた!:05/01/05 01:39:55 ID:???
>>39
グッジョブ!
続きもよろしくね
47名無しさん、君に決めた!:05/01/05 01:44:06 ID:???
セレネが居ないのはなぜだろう
生贄にでもされたか
48名無しさん、君に決めた!:05/01/05 01:55:20 ID:???
突発的でここまで書ける人が羨ましいよほんと。
>>39がんがれ蝶がんがれ
49名無しさん、君に決めた!:05/01/05 14:02:42 ID:???
リヴィエラスレの避難所になってそうな悪寒
50名無しさん、君に決めた!:05/01/05 15:34:34 ID:???
        ,.‐'´ `''‐- 、._ヽ   /.i ∠,. -─;==:- 、ゝ‐;----// ヾ.、
       [ |、!  /' ̄r'bゝ}二. {`´ '´__ (_Y_),. |.r-'‐┬‐l l⌒ | }
        ゙l |`} ..:ヽ--゙‐´リ ̄ヽd、 ''''   ̄ ̄  |l   !ニ! !⌒ //
.         i.! l .:::::     ソ;;:..  ヽ、._     _,ノ'     ゞ)ノ./
         ` ー==--‐'´(__,.   ..、  ̄ ̄ ̄      i/‐'/
暇になって小ネタでも出来たらこちらに書き込みたいが…スレ違いか?
51名無しさん、君に決めた!:05/01/05 15:39:45 ID:???
ネタでもおk おもしろければな。
5239 ◆R62vajPc3M :05/01/06 00:23:55 ID:???
>>45-48
ありがとうございます
大丈夫なようなので、続きを貼っちゃいます
5339 ◆R62vajPc3M :05/01/06 00:25:37 ID:???
>>42-43続き
 あまりに真っ直ぐに見つめてくるルゥリの瞳に、何か気圧されるものを感じ
フィアは思わず息を呑む。二人してベッドに横たわったまま、鼻がをつきあわ
せてにらみ合う。
「ル、ルゥリ! さ、さっきからいったいなんなんですかっ!?」
 フィアの抗議に、しかしルゥリは怯まない。
「フィアちゃん……泣いてたでしょ?」
「な、何を言っているんですか……なんでそんなこと、なんでわかるんですか
……?」
 目を逸らしながら呟くフィアの言葉は言葉は弱い。そんなフィアに、ルゥリ
は言葉を続ける。
「わかるよ」
「どうして?」
「ルゥリだって……エクセルがいなくなってさびしいもん」
 今度こそフィアは抗議の声も上げられなくなる。図星だった。
 リヴィエラを救う冒険の旅を終え、エクセルは残る魔物の討伐のため旅立っ
た。セレネもシエラも、それぞれの目的のために行ってしまった。
 別れは寂しかったが、それから一月以上にもなる。フィアはそれについては
気持ちの整理をつけたつもりだった。
 しかし、今夜は夢に見てしまった。あの旅をした日々を。辛いこともあった
けれど、それでも楽しかった冒険の日々を、夢の中に思い出した。
 夢から覚め、目に入ったのは居間のテーブルだった。何の気なしにランプに
灯をともした。照らされたそこは、目覚めたエクセルと初めて話した場所だっ
た。そのときのことを鮮明に思い出し、胸がいっぱいになった。気づけばフィ
アは泣いていたのだ。
 そして今。震えがきた。
 また泣き出してしまう。フィアはそう思った。
 すると、ルゥリはフィアの手を取る。
「ルゥリ……?」
「大丈夫だよ、フィアちゃん」
 言葉と共に、ルゥリはフィアの手を引き、自らの胸へとおしあてた。柔らか
な胸と、小さな手に包まれる暖かさをフィアは得る。
5439 ◆R62vajPc3M :05/01/06 00:27:00 ID:???
「大切なものは、ここにあるから」
 ルゥリはいつものように、無邪気とすら言える明るさでそう言った。
 触れた手から伝わるのは、とくん、とくんと穏やかな鼓動とゆるやかなぬく
もり。
 フィアにはルゥリの言葉の意味がわからない。でも、なにか感じるものがあ
った。
 だからルゥリの手をとると、フィアは同じように自らの胸に当ててみた。
 とくん、とくんと。静かに、穏やかに。でも確かに伝わる鼓動を感じる。ぬ
くもりが伝わる。鼓動の穏やかさを、胸のぬくもりを、お互いの手を通して感
じあう。
 その暖かさの中、フィアはわかったような気がした。
 エクセルたちとの冒険の旅は時にはつらいこともあった。魔物との戦いは、
命の危険を感じることもあった。だからこそみんなで力を合わせて戦った。絆
を強く感じた。今の平和な生活にそんな鮮烈な体験はない。だから、それは失
ったこと。でも、あの旅で本当に大切だったのは、みんなでいたこと。このぬ
くもりだったのではないだろうか。
(ああ……忘れていました……)
 確かにエクセルは旅立ち、セレネもシエラも行ってしまった。でも、みんな
で旅した記憶は失われてはいない。そのぬくもりは、ルゥリの言う通りこの胸
の中で暖かに息づいている。
 ルゥリは子供のように純粋だから、みんなで旅をすると言う時間が失われる
ことを早くから気づいていたのかもしれない。そして純粋だからこそ、「失わ
れたもの」だけでなく「失われないもの」を、言葉に出来なくとも知ることが
できたのかもしれない。フィアは「失われたもの」ばかりを見て、その寂しさ
に泣いてしまった。
 二人には、そんな違いがあった。違わないのは、二人ともあの冒険の旅を、
エクセルたちとともにいたことをかけがえのない大切なことだと知っていたこ
と。
 だから二人は、こうしてぬくもりを分かち合える。
 気づけば、先ほどまでこみ上げてきた涙は、どこかへ行ってしまっていた。
5539 ◆R62vajPc3M :05/01/06 00:28:10 ID:???
「フィアちゃん……落ち着いた……?」
「ええ……」
「でも、わかるよ。ルゥリも急に悲しくなることがあるもん」
 珍しく寂しげにルゥリはため息をつく。こんな顔をするルゥリを、フィアは
ほとんど見たことがない。見たことがあるとすれば、風邪で寝込んだときぐら
いだろうか。
 それで、急に思いついた。考えてみると、それはとてもワクワクする素敵な
ことだった。
「わ、フィアちゃん? 急に心臓、どきどきしてきたよ?」
「ルゥリ。わたし、いいこと思いつきました」
「いいこと……?」
「前から考えていたんですが……旅に出ようと思うんです」
「え!?」
 フィアの急な話に目を丸くする。そんな顔を見て、フィアは内心おもしろい、
と思った。さっきからルゥリには驚かされてばかり。だから、ちょうどいいと
思った。
「ええ、旅に出るんです。いろいろな薬草を探す旅です」
 それはフィアが本当に前から考えていたこと。あの冒険の旅のように戦うこ
とではなくリヴィエラの為に役立てること。
「旅……」
「でも一番の目的は……寂しい気持ちをなくす、『いちばんのおくすり』を探
すための旅です」
 得意げに言うフィアに、ルゥリはわけがわからず目を白黒させる。寂しさを
なくすもの。ルゥリにもすぐにわかった。
「ル、ルゥリも! 旅に出ようと思っていたんだ! リヴィエラのいろんな場
所に行って、いろんな宝物を探す旅! それで、ルゥリも『いちばんのたから
もの』を見つけるの!」
 『いちばんのおくすり』『いちばんのたからもの』
 二人の言うそれは、同じ。
 今、二人の心にあるのは、最強のディヴァイン・エクセリオンを携えた翼の
ない告死天使の姿。ひたむきで真っ直ぐな少年の横顔。
 ルゥリとフィアは、これ以上ないぐらい楽しそうな笑顔で見つめ合う。
5639 ◆R62vajPc3M :05/01/06 00:29:06 ID:???
「いっしょに旅に出ましょうか」
「うん! きっと楽しいよ!」
「そうですね」
 魔物が減ったとは言え、まだまだ危険な場所は多い。二人が行こうとするの
はそうした場所だ。でも、二人でならば恐くない。つらいこととも楽しいこと
に出来るはずだ。
 そして、いつか。再び会えるかも知れない。
「あのときと変わりませんね」
「うん、変わらないよね」
 そう、きっと変わらない。エクセルと旅だったあの日。それと、きっと変わ
らない。
「……ほんと変わらないね……」
 フィアの胸元にあるルゥリの手が大きく動く。視線もまたフィアの胸元。変
に思い、フィアもまた視線をそこへと向ける。そこには、冒険の前も後もきっ
とこれからもずっと大きさの変わらない、清楚でつつましい胸がある。
「……ルゥリ〜」
「えへへ……じょ、冗談だよ。ごめんねっ」
「許しませーんっ!」
 声と共に、フィアは猛然とルゥリをくすぐる。
「あは、あは、あはは! フィアちゃんやめて〜」
「そんなこという子は、こう、こう、こうです!
「あはは、やめてやめて、や〜め〜て〜」
 逃げようとするルゥリ。それをおさえるフィア。子供のように無邪気に、猫
のようにじゃれ合う。それはとても賑やかだった。

「うるさ〜い!」
5739 ◆R62vajPc3M :05/01/06 00:31:10 ID:???
 声と共に、ルゥリとフィアはぺしんぺしんとたたかれる。驚き見上げると、
ふよふよとたよりなく飛ぶフェアリーのココがいた。
 たよりなくはばたき、そのままゆらゆらと自分の寝床へ着地。
「ちゃんと寝ないと明日起きれませんよ〜。起こすのは私なんですからちゃん
と寝てくださぁい……」
 取り戻された静寂。しかしその中に響くのは、すこし大きい、でもかわいい
ココのいびき。しんとした夜の中、なんだかその音のほうがよっぽどうるさく
感じられた。
 二人は顔を見合わせ、クスリと微笑む。
「……寝ましょうか」
「そうだね」
 そう、眠らなくてはならない。明日からはきっと忙しい。旅を始めるにはい
ろいろな準備が必要になる。それは大変で、でも楽しいものだろう。
 だからわくわくしながら、それでも眠りにつく。お互いのぬくもりで暖めあ
うように……優しく、優しく抱き合いながら。
 エレンディアの夜は静かで、穏やかだった。
 
Fin


……ということで、長文失礼しました
書いたあとで気づきましたが、ルゥリの部屋にあるのは
ベッドじゃなくてハンモックだったorz
58名無しさん、君に決めた!:05/01/06 00:54:44 ID:???
                  ∩
                  ( ⌒)      ∩_ _ グッジョブ!!>>39
                 /,. ノ      i .,,E)
             / /"      / /"
  _n グッジョブ!!>>39/ / _、_   ,/ ノ'
 ( l     _、 _   / / ,_ノ` )/ / _、_    グッジョブ!!>>39
  \ \ ( <_,` )(       / ( ,_ノ` )     n
   ヽ___ ̄ ̄ ノ ヽ      |  ̄     \    ( E)
     /    /   \    ヽ フ    / ヽ ヽ_//
59名無しさん、君に決めた!:05/01/06 00:57:26 ID:???
ちゃんとココにも出番を与えてあげるあたりに>>39の愛を感じた(*´∀`)
60名無しさん、君に決めた!:05/01/06 01:04:34 ID:???
>>39
イイネ!! 非常にイイ!! GJ!!
61名無しさん、君に決めた!:05/01/06 01:07:14 ID:JrWZlSnp
>39
イイネェ(・∀・)

無理に書けとは言わないが続きキボン
62462 ◆KpJXLAj9Eo :05/01/06 03:15:49 ID:???
「ふん…ならそうしておくとするかね」
バンデットウォーリアに賛同し、懐から一冊の本を取り出すとそれを広げる。
一見するとただの古ぼけた本だが、実際は魔力を秘めた魔導書である。
彼女ら魔女や魔法使い等が、魔法を行使する際の重要な媒体となる。
そして、すぐ詠唱に入るメリッサ。
「…燃ゆる熱き炎よ、全てを包み灼く…」
「…させませんっ!」
その様子を見ていたフィアは鋭い声を飛ばし、唐突にその場から疾駆した。
一陣の風が吹き、ほんの数歩だけでアマゾネスの至近距離にまで動く。
「何!?……くっ、やらせはしない…」
狼狽した声を発し戦くも、果敢に反撃行動へ移行しようとした。
シエラに向けていた弓の目標を急遽、眼前に迫るフィアに変更する。
「あっ!」
「フィアちゃん、危ないよ!」
2人が一斉に危険に声をあげたが、それは問題でなくなる。
至極簡単な事…フィアの方が素速さに勝っていたからだった。
既に腰の突剣は引き抜かれ、下段構えの状態で持っている…後は狙うたる敵を突くのみ。
「受けなさい!」
叫び、突剣を突き出してそのまま目にも止まらぬ早さで連続突きを放った。
息つく間もなく風切り音が幾度か鳴り、煌めく刃がアマゾネスを襲う。
「うっ、ぐぅ…が、は…」
全ての攻撃が命中して、その身を切り裂かれながら苦痛の呻き声をあげる。
仰け反りバランスを崩して後ろに倒れるアマゾネスに脇目もふらず、フィアはメリッサへと向かっていく。
だが、間に合わない。
フィアがメリッサの所に届くよりも早く………詠唱終了し魔法が完成した。
「…業火の嵐を発現せり…その力を以て我の敵を焼き尽くせ……フレイストーム!!」
メリッサが叫ぶのと同時に、魔力が解放され言葉通り炎の嵐がフィア達の前に生み出される。
63462 ◆KpJXLAj9Eo :05/01/06 03:18:34 ID:???
変な時間にすまない。
しかも今はこれだけ……うーん、いかんな…。

>>39
キタキタキタ━━━━━━(・∀・)━━━━━━!!!
俺も見事にGJでした。
フィアとルゥリのやり取りが何とも言えない。
ちまちまとやる俺とは違うな…。
64名無しさん、君に決めた!:05/01/06 03:41:03 ID:???
ところがどっこい
こんな時間にもいたりしてw

462さん、気にしなくていいからゆっくりでいいよー(゚∀゚)ノ

39さんも462さんも頑張ってーや
65名無しさん、君に決めた!:05/01/06 04:06:07 ID:2wjiDN5J
壁|∀・)ミタヨー
マイペースカキコでも構わないからがんがれ

39氏グッジョブ!!
バリ萌えた〜(゚ー゚*)エヘ
66名無しさん、君に決めた!:05/01/06 11:16:03 ID:???
>>63
ちまちまでも問題ないでち
続き期待してるでち
67名無しさん、君に決めた!:05/01/06 12:14:15 ID:???
投下期待age
68名無しさん、君に決めた!:05/01/06 15:13:12 ID:???
462の人まだ〜??
69名無しさん、君に決めた!:05/01/06 16:07:02 ID:???
リヴィエラばっかりだけどワイルドカードかいていいでつか?
70名無しさん、君に決めた!:05/01/06 16:14:52 ID:???
いいよー。いつでもカモーン(・∀・)ノ
71名無しさん、君に決めた!:05/01/06 17:47:44 ID:???
リビエラ以外の小説もきぼんぬ!ですよ。
72名無しさん、君に決めた!:05/01/06 18:03:44 ID:???
↓ここで462が登場↓
73名無しさん、君に決めた!:05/01/06 23:03:59 ID:W3E3EcVY
(^^)<ぬるぽ
74名無しさん、君に決めた!:05/01/07 07:42:35 ID:???
>73
(^^)<ガッ
75名無しさん、君に決めた!:05/01/07 11:53:18 ID:???
ガンガレ!みんなガンガレ!
76名無しさん、君に決めた!:05/01/07 14:45:33 ID:???
>75
時は流れて東へ西へ
7739 ◆R62vajPc3M :05/01/07 22:18:16 ID:???
>>58-61>>63>>65
どうもです
好評いただいて調子に乗ってもう一本書いてみました
お題は「さわるメイドインワリオ」のアシュリーより
7839 ◆R62vajPc3M :05/01/07 22:19:16 ID:???
 夜も更けた頃。
 町の一角にある洋館。ところどころ古びた石造りの壁、葉もつかず立つ木々
は月におどろおどろしく照らされ、オバケ屋敷と呼ぶのにふさわしい風情があっ
た。
 そこに連れだって入る者がいた。
 紅い服に漆黒のツインテール。人形のように整った顔立ち、人形のようにか
わいらしい姿。しかし人形のように表情を変えないその少女は、この館の主
『アシュリー』。
 その手に連れるのは、二頭身の赤い悪魔、『レッド』。
 二人は先ほどまで魔法を成功させるため、材料探しに出かけていた。曲がり
角で出会った白いモヤシみたいなヤツ。アシュリーはそいつを材料にすること
を望み、頼まれたレッドはしかしつかまえることができなかった。
 そしてアシュリーは言った。
「だってレッドがいるから」
 レッドは震えていた。
(……オレ、材料にされてしまうんやろか……!?)
 あれから一言の会話もない。だからあの一言がどんな意味を持っていたのか
わからない。言葉の通り、レッドを材料にするつもりなのだろうか。
(いや、そんなことはないはずや……)
 レッドは思う。自分は今までアシュリーの為にいつも必死に材料を集めてき
たのだ。そんな仕打ちはあり得ないはずだ。それにアシュリーは魔女の必須ア
イテム「マジョルカ・スープ」を作るのに一生懸命だ。レッドを材料にするよ
り、材料を集めさせた方が合理的に決まっている。だからレッドを材料に煮込
んだりするはずがない。
(そうやな……オレが考えすぎたんやな……)
 そう、アシュリーは一生懸命なのだ。その証拠に、今だって出かける前の失
敗も気にせず真っ直ぐマジョルカ・スープの鍋に向かっている。鍋に水を張り、
ガスに火をつける。流れるような作業。そのさなか……なぜか、レッドの手を
離さないままだった。
「……なあ、アシュリー……?」
 アシュリーは、つまんでうごかすのが得意。だからレッドが疑問の言葉を言
い終えるより早く、つまんでうごかし、鍋にたたき込んだ。
7939 ◆R62vajPc3M :05/01/07 22:20:17 ID:???
「ぎ、ぎゃああっ!?」
 驚きが悲鳴となって外に出た。しかしアシュリーはそれに躊躇することはな
い。つまんでうごかすのが得意なアシュリーの鍋をかき混ぜる手は巧みで、は
い上がろうとするレッドの動きをことごとく回す流れに巻き込み翻弄する。
「ア、ア、アシュリー!? なにするんやーっ!?」
 アシュリーは答えない。わずかに口元をへの字に曲げるだけで表情もなく、
黙々と鍋をかき混ぜる。その動きに翻弄されながら、しかしレッドもまたつま
んでタッチの達人だ。かき混ぜ棒をつかんで流れを止める。
「No,No」
「いやNo,Noやなくて……」
 そして二人は見つめ合う。アシュリーは口数が少ない。だから微妙に会話が
通じず、レッドは見つめ合うことでいつもアシュリーの意をくんできた。
(そうや……見つめれば伝わるはずや……)
 じっと見つあう。赤い紅いレッドを見つめるアシュリーの瞳。吸い込まれる
ように深いその瞳に、感情は感じられない。そんなアシュリーだから、友達が
なかなかできない。しかしレッドは違う。彼にはわかる。見つめ合う今、確実
に心は通じ合っている……!
(そう、愛……アシュリーには愛がたりないんや……オレの愛を感じてくれや、
アシュリー……!)
 仮にも悪魔が愛とか言ってるのは痛いことこの上ないが、それほどにレッド
は追いつめられていた。だってそろそろ湯加減がレッドゾーン。このままでは、
煮立つ。
 そして、アシュリーに動きが生まれた。
「アシュリー、わかってくれたか!?」
 動きはやはり、つまんでうごかす動き。懐から出した赤いものを次々と鍋に
投げ込む。
「なんや……?」
 投げ込まれたのは、世界最強の辛さを誇る唐辛子・ハバネロ。
 瞬く間に鍋の中は赤く染まる。湯加減も同時に急上昇。レッドゾーンはあっ
さりと突破だ。むしろ加速。暴君ハバネロ大暴れだ。
「熱っ! そして辛っ!」
8039 ◆R62vajPc3M :05/01/07 22:21:14 ID:???
 愛が足りないとレッドは考えていた。心が通じ合っていると信じていた。し
かし、アシュリーは、
「赤が足りないとか考えとったんかーっ!?」
「Excelent!」
 レッドの叫びをアシュリーの賞賛の声が迎える。声が弾んでいる。とても楽
しそうだった。
 レッドは身体がピリピリと痺れてくるのを感じていた。ハバネロの辛さが染
みてきているのだ。とくにお尻周辺がひどい。この後トイレに入る機会があっ
たなら、きっとホットな体験が出来ることだろう。
 意識がぼんやりとしてきた。レッドはもう、アシュリーのかきまぜる棒の動
きに抵抗できず、ただ流れに身を任せていた。
(ほんとにオレを煮込むつもりなんか……友達やなかったんか……?)
 走馬燈のように過去の記憶がよみがえる。
 山に材料にとりに行かされたあの日。必死に山を登るレッドを後目に、アシ
ュリーは麓でずっと待っていた。
 海に材料を取りに行かされたあの日。ひたすら海に潜るレッドを後目に、ア
シュリーは浜辺でずっと待っていた。
 空に材料を取りに行かされたあの日。非情にも大砲で空に打ち出されるレッ
ドを後目に、アシュリーは野原でのんびりしていた。
(友達や……なかった……んか……?」
 客観的に見てパシリだった。
「いいかげんにせんかーっ!!」
 ついに、と言うか、ようやく、と言うか。レッドが切れた。
「さっきからなんなんや!? こんなムチャクチャな手順でマジョルカ・スー
プができるわけないやろっ!? こんなん魔女失格や! あほうっ!」
8139 ◆R62vajPc3M :05/01/07 22:21:59 ID:???
 ピタリ、とアシュリーの手が止まる。顔を伏せ、その表情は前髪に隠れ伺い
知ることが出来ない。沈黙が降りる。聞こえる音はグツグツと煮える鍋の湯の
音。その様子に、レッドの心に罪悪感がぐつぐつとわき上がる。ちなみに自分
の身体もぐつぐつと煮立ちつつあるが、ハバネロのせいもありその辺の感覚は
麻痺しつつあるらしい。ヤバイ。
(そうやったな……アシュリーはいつも一生懸命やったよな……)
 そうだった。マジョルカ・スープを作るため、いつも真剣でひたむきだった。
だからレッドはアシュリーを助けたいと、少しでも力になりたいとがんばった
のだ。
 今日は確かに材料を逃してしまってがっかりしていた。だからといって無意
味にこんなことをするアシュリーではない。なにか理由があるはずだ。しかし
どんなに考えても、レッドにはわからない。熱さもわからなくなってる。ヤバ
イ。
「言い過ぎてごめんな……でも、どうして……どうしてこんなことするんや、
アシュリー?」
 静かに問いかける。レッドは強く、強く思う。この無口な少女の想いを知り
たい。もしマジョルカ・スープを完成させるためなら、この身を捧げることも
厭わない……そう、レッドは決心した。熱さで思考が沸騰している。ヤバイ。
「だって……」
 ようやく、アシュリーの重い口が開く。固唾を呑んで見守るレッドは、もは
や熱さも感じない。ヤバイ。
 そして、アシュリーは、
「だってアシュリーだもん」
 そう、一言で答えた
 アシュリーの顔を占めるのは、とても爽やかな笑顔だった。爽やかでありな
がらレッドをぞっとさせずにはいられないその笑みは、あえて言うなら「地獄
のように爽やか」とでも言うべき笑顔だった。
8239 ◆R62vajPc3M :05/01/07 22:23:21 ID:???
 なにか致命的な勘違いをしているとレッドは思った。煮立った頭をそれでも
フル回転して考える。
 レッドの知るアシュリー。彼女は無口で、怒ると恐い。そして今、自分は…
…恐い。つまりアシュリーは怒っている。
(ああ、そうか。ようやくわかったで……)
 やはりあの材料を逃した自分のことを、アシュリーは怒っている。
 そしてアシュリーはそんな自分に「だってレッドがいるから」と言った。
 怒っている。そしてレッドのことが必要。つまり、つまりコレは……
「材料が手に入らなかった腹いせかーっ!?」
「Cool!」
「涼しかないわーっ!!」
 微妙にずれたレッドのツッコミなど意に介さず、アシュリーは手当たり次第
に材料を放り込む。会話になっていない……そう、怒っているアシュリーは、
初めからレッドとまともに会話するつもりなどなかったのだ。
「ジャガイモニンジンなんて入れて、オレはカレーかい!? だからってイモ
リはやめい! ヤモリもやめてぇ! お次は野菜の切りくずに魚の骨って……
もはやなんでもいいんかいっ!?」

 絶叫がこだまする。
 それはお化け屋敷のような洋館に相応しい声。しかし、お化け屋敷のような
洋館に相応しくない賑やかさでもって、今日もアシュリーの家の夜は更けてい
くのだった。
 
Fin
83名無しさん、君に決めた!:05/01/07 23:40:56 ID:???
ヤヴァイ
さワリオに興味出てきた
明日にでも買ってくる ノシ
84名無しさん、君に決めた!:05/01/08 00:33:15 ID:???
>>39
激しく乙。
アシュリーかわぃぃよアシュリー
ついでにはっとく
メイドインワリオのアシュリータンはエロリカワイイ 3薬目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/poke/1104591713/l50
85名無しさん、君に決めた!:05/01/08 19:55:05 ID:???
>>39
グッジョブ!
86名無しさん、君に決めた!:05/01/08 21:44:26 ID:???
なんだワリオにもこんなキャラが居たのか。

・・・

マリオ売り飛ばして買って来る!
87名無しさん、君に決めた!:05/01/08 23:26:08 ID:???
盛り上がってるんだか過疎ってるんだかよくわからないスレだな
88名無しさん、君に決めた!:05/01/08 23:32:50 ID:???
基本的にSS書きの人が現れるまでマターリ待つスレって事・・・なんじゃない?
89名無しさん、君に決めた!:05/01/08 23:35:00 ID:???
感想くらい無いとやる気でないと思われ
90名無しさん、君に決めた!:05/01/09 00:28:26 ID:???
どうやって口の部分を判別してるのかは気になる
歪んだパックマン書いたらどうなるんだろう?
91名無しさん、君に決めた!:05/01/09 00:29:13 ID:???
スマン、誤爆した。吊ってくる。
92名無しさん、君に決めた!:05/01/11 08:23:38 ID:???
停滞してるね。
リヴィエラファンはフィアスレに流れたかな。
930X0 ◆0X0ssw45s. :05/01/11 17:42:07 ID:???
0X0 ケケケ
94名無しさん、君に決めた!:05/01/11 19:14:25 ID:qaKgpGBD
ならばぬるぽ
95名無しさん、君に決めた!:05/01/13 10:36:41 ID:???
廃れてる?
96名無しさん、君に決めた!:05/01/14 00:31:00 ID:???
だれもいないね。
97462 ◆z75wWsaGvo :05/01/14 02:10:51 ID:???
すまん、規制+PC不調+スランプのコンボで凹まされている。
今は携帯からの書き込みだったりするが。
てか39氏、上手いな…。
98462 ◆z75wWsaGvo :05/01/14 02:17:32 ID:???
大きく唸りをあげ、放射状に広がる炎は瞬く間に辺りを蹂躙していく。
そこに保管されていた数々の道具がその炎に巻かれ、悉く燃えていってしまう。
「ああっ!道具が燃えちゃうよ〜!」
「道具は仕方ないわ、危ないからこっちへ!」
「わ…わっ!」
シエラは自分もメリッサと同じく魔導書を手にし、ルゥリを後ろに引っ張る。
「ははは、どうだい!これであんた達もこの倉庫も楽に潰せるってものだよ!」
勝利を確信するメリッサは、余裕の表情を浮かべ炎が勢いを増す向こうで高笑いをしていた。
「これくらいの炎で喜んでいるようじゃまだまだのようね」
言って、不敵な笑みと挑発するかのように本をくるくると回す。
「シエラさん?」
燃え盛る炎が蠢く先の場から後退してきていたフィアが怪訝そうな顔つきで、シエラを見やる。
シエラのすぐ側にいたルゥリもきょとんとした顔で見上げていた。
「…何だって?」
その一言を聞いたメリッサは眉を細め、視線を飛ばす。
直ぐに気に入らないね、と言い表した顔で不機嫌そうになる。
「……へっへ、強がりとはよくやるもんだなぁ?えぇ?」
メリッサの心境に気付いてか、援護がてらバンデットウォーリアが横から割って入ってきた。
「ふふ…いいえ、強がりなんかじゃないわよ」
「シ、シエラちゃん…大丈夫なのー…?」
毅然とした態度でシエラは言い放ち、魔導書を開く。
99462 ◆z75wWsaGvo :05/01/14 02:19:22 ID:???
とりあえず、1つだけでも…。

…それと、本当にすまない。
うーん…何か俺ぐだぐだだな……はぁ。
100100:05/01/14 02:23:11 ID:???
100
101名無しさん、君に決めた!:05/01/14 07:51:52 ID:???
>>98
乙です。楽しみにしてます。
102名無しさん、君に決めた!:05/01/14 10:52:06 ID:???
>>98
連載乙。最後の2台詞は順番逆の方がいいんじゃない?
103名無しさん、君に決めた!:05/01/15 12:59:52 ID:???
〃'´⌒` ヽ      これを見た貴方は、童貞を卒業することができるのじゃー
〈((リノ )))i iヽ   これをそのまま5分以内に他のスレにコピペすれば、運命の人に出会えるのじゃー
l从・∀・ノ!リ人   貼らなかったり、虐待したりしたら、結婚した相手との間に
⊂)丕⊂))ヽ)     奇形児が生まれるのじゃー。
 〈/_|j_ゝ
104名無しさん、君に決めた!:05/01/21 22:05:01 ID:LjcK8mgb
やばそうだからあげとく
105名無しさん、君に決めた!:05/01/22 18:51:43 ID:???
ねえ誰かいますか?
106名無しさん、君に決めた!:05/01/27 03:29:20 ID:???
ぽるぬ
107名無しさん、君に決めた!:05/02/01 00:16:16 ID:???
神よ、降臨せよ!
108名無しさん、君に決めた!:05/02/06 23:17:40 ID:???
もう来ないの?
109名無しさん、君に決めた!:05/02/13 14:17:50 ID:???
ふぁ〜ぼれ〜しょ〜ん
110名無しさん、君に決めた!:05/02/18 01:39:17 ID:???
なにこのすれ
11139 ◆R62vajPc3M :05/02/26 21:39:00 ID:???
すっかり過疎ってるけど
久しぶりに貼ってみます。
「アナザーコード 2つの記憶」より
「アシュレイ」
 呼びかけの声に振りかえるのは、一人の少女。
 振り向く動きにその白い髪がなびき、降りそそぐ陽光を銀色に跳ねる。
 少女の名は、アシュレイ。死んだと聞かされていた父親からの突然の連絡に、
ここブラッドエドワード島にやってきた。謎に満ちたこの島で、今は行方がわ
からなくなった親代わりのジェシカ、そして未だ姿を見せない父親を捜してい
る。
 アシュレイの振り向く先には、呼びかけた少年の姿がある。蒼くほのかに輝
き、わずかに背後の壁が透けて見せる少年は、生者ではない。
 57年前に命を失い、そしてほとんどの記憶も失ったゴースト。名はディー。
 二人はこの島で出会い、そして共に自らの求めるもの――アシュレイは父親
を、ディーは失った記憶を求めて――二人は共にエドワード家の館に向かう道
の中にあった。
 まだ出会ってから時間は経っていない。しかしアシュレイはディーの様子に
今まで感じたことのない違和感を覚えた。
 いつもは真っ直ぐすぎるほどのひたむきな瞳でアシュレイを見つめるディー
の視線。それが、今は常よりも下に向いているのだ。
「ディー、どうしたの?」
 アシュレイの問いかけに、
「アシュレイはどうしてそんな格好をしているの?」
 いつもの子供らしいとも言える真剣な瞳のままに、ディーは問う。しかしア
シュレイにはその意味が分からない。
「そんな格好って……」
 予想もしない問いかけにアシュレイは首を傾げる。
 アシュレイの服装は、橙と白の二色に分けれた丈の短いTシャツ。黒のジー
ンズに白のベルト。スニーカー。そして両手には黒いリストバンド。
 特に変わった格好ではない。
「なにかおかしい?」
「見える……」
「見える?」
「おへそ……おへそが見える……」
 言われて、アシュレイは自らのおなかを見る。たしかに丈の短いTシャツだ
から、おへそが見えている。いつもより下を向くディーの視線はそこに向いて
いるのだった。
「そんな格好で恥ずかしくないの?」
「?」
「ぼくが生きていた頃、女の人はそんな格好はしていなかったよ」
 ディーが生きていた時代。女性は無闇に肌を見せるものではなく、着るもの
にしても今のアシュレイのように身体の線が出てしまうものではなかった。
 アシュレイはどちらかと言えばまだ子供。14歳を迎えようと言う彼女は
『女性』ではなく『少女』だ。
 その服装はまだ男女の区別を意識したものではない。男の子といっしょに走
り回っても違和感のない、軽快な服装。ピッタリとしたTシャツは慎ましく未
成熟な胸のふくらみを隠さない。ジーンズもまたまだ女性的な丸みを帯び始め
たフラットな脚のラインを出す。
 そして、なにより。へそだ。おへそが見えるのだ。
 それがディーには珍しく感じれるのだ。
 そんなアシュレイの姿しげしげと見るディー。その視線に、アシュレイはい
まいちわからないながらもどこか居心地の悪いものを感じる。
 そんな微妙な空気の中、
「あ……!」
 唐突にディーが声を上げる。
「思い出した……」
「思い出した?」
 記憶を求めるディーが何かを思い出すというのはアシュレイにとってもうれ
しいことだ。しかし今はそうは感じられない。なにしろ自分のおへそを見なが
ら思い出したというのだ。
「絵を見つけたんだ……」
「絵?」
「なぜだか奥に隠してあったその絵は、女の人がなにも着てなくって……」
「え……?」
 突然語り始めたディーになにか不穏なものを感じて、アシュレイは一歩引く。
嫌な予感、そしてアシュレイもまた甦る記憶があった。
 それは、ジェシカの部屋で偶然見つけた本。とても綺麗な男の人達が愛し合
うB5サイズの薄手の本。それを見つけて読み耽り、そしてジェシカに見つか
り叱られた。そのあと何故かしつこく感想を聞かれた。
 そのときのことを、あの本の内容を明確に思い出し、アシュレイは赤面する。
そして、不快に感じる。今ここにある空気は、その時にそれに酷似しているの
だ。
「見つかって、あとですごく叱られた……でもそのときはよくわかなかったけ
ど、その絵は、すごく、すごく……」
「ディ、ディー?」
「おへそ……」
 ディーの視線に別の色が混じる。それはアシュレイにとってなんだかとって
も不安を煽るものだった。
 急速に甦る記憶。記憶の中の、絵のおへそ。そして目の前にある、アシュレ
イのへそ。生のへそ。それはまだ無垢な少年にはあまりにも強烈な刺激だった。
 その感覚はディーの頭の中を駆けめぐり、融合し、膨らみ、そして、そして、
そして……。

 弾けた。

「!?」
 パン、という、やたらと軽薄な音が響いた。
 二人の驚きが重なる。
 目を見開くアシュレイの前、ディーはのけぞり地に落ちていった。鼻の辺り
から青白い何かをひきながら、ゆるやかに、どうしようもなく倒れゆく。
 鼻から漏れるそれは、心霊関係の知識があるならエクトプラズムと思う知れ
ない。しかし、
(……もしディーが生きていたら、きっとこれは赤いんだろうなあ……)
 ぼんやりとアシュレイは素直な感想を抱いた。
 つまり、それは。ディーの鼻から伸びるそれは。……鼻血にしか見えなかっ
た。
 そのままディーは倒れてしまう。地に倒れたディーは、わずかに身を動かす
こともなく、そしてその瞳も閉じたままだ。
 沈黙が。どうしようもない沈黙が、降りる。風が吹き、辺りの草木を揺らす。
それすらもこの静寂を助長するようにしか思えない。まるで世界から「今のは
なかったことにされている」ような、そんな静寂だった。
「ディー……?」
 やりきれない空気の中、勇気を出してアシュレイは問いかける。しかし。

 へんじがない。ただのしかばねのようだ。

(……いえ、ゴーストよね……)
 アシュレイは混乱したまま、自分の思考によくわからない突っ込みを入れる。
「どうしよう……?」
 ただでさえひとりぼっちで不安な状態なのだ。それに加えてゴーストの死亡
(?)。ありえない。あまりにありえない事態に、途方に暮れてアシュレイは
天を仰ぐ。
「おへそ……」
 空を見上げたのも一瞬。その声に視線を戻せば、そこには上半身を起こした
ディーの姿があった。
「おへそ……」
 もう一言、ディーは呟く。その視線は再びアシュレイのおへそに向いている。
 突然、猛烈に恥ずかしくなりアシュレイは自らのおなかを押さえた。
 いままで別に気にならなかった。この格好のまま男の子とバスケをするのも
平気だった。しかし、今は違った。
 異性に自分の肌を見られる。
 アシュレイはそのことを今、恥ずかしいと感じてしまっているのだ。もとも
とすぐに赤くなってしまうアシュレイの顔は、今は耳まで朱に染まっていた。
 アシュレイ、性の目覚めであった。
 しかしそれもわずかな間のことだった。
「おへそ出してると、雷様に取られちゃうよ」
 いつものように。真っ直ぐでひたむきな瞳で。ディーはそう言った。
 アシュレイは呆気にとられ、しかし次の瞬間、
「あはははははっ!」
 笑いだした。
 隠すために添えていたおなかの手は、いまはおなかを抱えて笑うという役割
に代わった。
「アシュレイ、どうしたの?」
「だ、だってディー……あなたさっきまであなた……」
「さっき……?」
 ディーは首を傾げ腕を組み思い出そうと考える。しかし、
「なにかあったの?」
 要領を得ない言葉しかでなかった。
 どうやら今の刺激が強すぎて、ディーの記憶はとんでしまったらしい。事情
がさっぱりわからないといった感じで不思議がるディーの様子に、アシュレイ
はまた笑いが止まらなくなる。
 そんなアシュレイにディーは不満げに見て、でも口元はわずかに緩んでいた。
それは、苦笑と呼ぶべき表情だった。
 ひとしきりアシュレイは笑い、ディーの不満げな目にようやく笑うのを収め
る。
「ごめんなさい……」
「ねえ、なにがあったの……?」
「なんでもないこと」
 言って、アシュレイは歩き出す。スキップのような、軽い足取り。ディーは
首を傾げつつ、それでも遅れまいと後に続く。
 陽光は明るく道を照らし、風は優しく木々を揺らす。
 楽しく、穏やかな時間。きっといつかで思い出し、そして微笑むことが出来
る記憶になるだろう、時間。
 二人は知らない。この先に待ち受ける過酷な宿命を。忘れたままにしておい
た方が幸せかも知れない、しかし向き合わねばならない記憶。それを、二人は
まだ、知らない。
 しかし、今は楽しく。二人はエドワードの屋敷へと向かう。

11739 ◆R62vajPc3M :05/02/26 21:47:42 ID:WzTaiX1b
アナザーコード、良かったです
DSならではの謎解きに、秀逸なBGM。絵も綺麗でした
そしてそして、なによりアシュレイ
ボリュームがちとアレでしたが、個人的には満足でした
それで書いてるのがこれというのがアレですがorz
118名無しさん、君に決めた!:05/02/27 16:52:50 ID:???
GJ!GJ!

>へんじがない。ただのしかばねのようだ。
ワロス
119名無しさん、君に決めた!:05/02/27 17:40:50 ID:???
最高!!
120名無しさん、君に決めた!:05/03/06 02:11:59 ID:???
保守
121名無しさん、君に決めた!:05/03/20 15:31:37 ID:???
フィアたん萌え
122名無しさん、君に決めた!
エイプリールフールage