同日 11:30 地方裁判所第一法廷
カミノギ「・・・・・・・・」
サイバンチョ「・・・・・・・・・あ、・・・・ええっと、証人。名前と職業を・・・・」
(裁判長、圧倒されちゃってるよ・・・・)
カミノギ「・・・・名前・・・・職業・・・・。
・・・・そんなものはうつろいゆく世界の、まぼろしに過ぎないのさ・・・・」
サイバンチョ「・・・・ふぅ。・・・・あなたのセリフを聞いたとたん。私の気持ちもうつろいました。
・・・・やっぱり聞かなきゃ良かったって。」
カミノギ「・・・・それでもあんたは聞かずにはいられない。・・・・分かるぜその気持ち。」
(ならちゃんと答えてやれよ!)
サイバンチョ「・・・・先ほどあなたは、凶器の杖に刀が仕込まれていることを知っていたと発言しました。
そのことについて、詳しく証言してください。」
ナルホド「千尋さん。・・・・この尋問はぼくにさせてください。」
チヒロ「なるほどくん。・・・・彼のこと、信じてくれるの」
ナルホド「もちろんです。」
チヒロ「・・・・ありがとう」
カミノギ「・・・・事件の前日のことだ。俺と綾里 舞子、あやめの3人は奥の院に集まった。
綾里キミ子の卑劣な計画を阻止するため、そこで最終的な打ち合わせをした。
その時、舞子が万が一の時はこれを使うようにと、自分の杖に仕込まれた刀を見せたんだ。」
ナルホド「待ってください。・・・・その時あなたはそれを手にとって見たんですか?」
カミノギ「・・・・いや」
ナルホド「・・・・ということは、あの仕込み杖のこまかな細工を直接見たわけではないのですね?」
メイ「それがどうしたというの?問題は、あの杖が凶器だと、彼は知っていたということなのよ。」
ナルホド「それは違いますね。
検察の主張通り、被告が被害者を刺した時に殺意があったとするならば、
杖の細工をはずして刀を抜いたのは彼・・・・ということになるはずです。
あの杖は細工を知らないと、そう簡単にははずせないようになっています。」
サイバンチョ「まぁ・・・・それはそうでしょうね。」
ナルホド「実はぼくも細工を知らずにあの杖を偶然抜いたことがあるのですが・・・
男2人が相当な力でしばらく引っぱっり合って、やっとはずれたぐらいです。」
サイバンチョ「ふうむ、なるほど。・・・・いかがですか神乃木さん。・・・・あなたは杖の細工を知っていたのですか?」
カミノギ「・・・・いや。・・・・その話は初耳だった。」
チヒロ「・・・・私も知らなかったわ。・・・・そんなことがあったの、なるほどくん。」
ナルホド「・・・・え、ええ。ちょっと訳があって秘密にしてたもので・・・・」
メイ「・・・・ふっ。
バカのバカバカしい秘密に聞く価値などないわ。
・・・・刀を抜いたのが彼ではないとすると・・・・誰なの?
まさか美柳ちなみが凶器を取り出した後、それを使わずに捨てたと主張するつもり?」
(・・・・ここは勝負どころだ)
ナルホド「杖から刀を抜いたもの、それは・・・・『偶然』です。」
メイ「・・・・・・・・ふっ、語るに落ちたわね。
たった今あなたは、あの杖は簡単にははずれないと主張したはずよ!」
ナルホド「・・・・そう、簡単にははずれません。・・・・杖を引っぱっただけではね。」
メイ「・・・・!」
ナルホド「・・・・ここで、美柳ちなみの証言を思い出してください。
彼女はあの杖で、綾里 真宵を思い切り殴った後、それを地面に投げ捨てました。
・・・その時です。
殴ったときの横からの衝撃で、杖の細工が偶然ゆるみ、地面に投げ落とされた衝撃で、
・・・・はずれてしまったのです。」
メイ「な・・・なんですってぇぇ!」
ナルホド「・・・・被告があの杖を手にしたとき、既に刀身は露出した状態でした。それは不幸な偶然だったのです。」
メイ「ちょ・・・・ちょっと待ちなさいよ!!・・・・彼がその状態の杖を手にしたとすると、
・・・・状況はまったく変わらないわ。
それで被害者を襲ったのなら、当然殺意はあったと考えるべきでしょう?」
ナルホド「・・・・まったく違いますね。
当時、現場はほとんど真っ暗でした。全ては黒い影のように見えたはずです。
杖と刀を見分けるのは困難でした。それを確認する余裕もなかった。」
メイ「・・・・お待ちなさい。成歩堂 龍一!
・・・・被告人自身が、先の法廷で『美柳ちなみ』に対する殺意を認めているのよ!
これをどう説明するつもり?」
ナルホド「・・・・確かに。その点は、ぼくもさっきまで引っかかってたんですよね。
・・・・何故あのとき、神乃木さんがあんなことを言ったのか・・・・」
ナルホド「神乃木さん。・・・・綾里 舞子。つまり千尋さんと真宵ちゃんのお母さんを刺して死なせてしまったことを
あなたは誰よりも驚き、苦しんだはずです。
・・・・こんなことになったのは、心のどこかに、美柳ちなみに対する殺意があったからではないのか?
・・・・自責の念から、あなたは、そう考えるようになったのではないでしょうか?
それが・・・・あの時の証言になった。・・・・違いますか?」
カミノギ「・・・・」
ナルホド「・・・・でもね。あの証言を、千尋さんも真宵ちゃんも・・・信じなかったんですよ。」
カミノギ「・・・・!」
ナルホド「それは、・・・・どういう状況だったにしろ、あなたが自分から人を傷つけるようなことはしないって、心の底から信じてるからです。」
カミノギ「・・・・クッ」
ナルホド「・・・・さあ、この先は、あなた自身の口から答えてください。・・・・あの時、本当は何が起こったのかを」
メイ「異議あり!!
・・・・裁判長。こ、これは誘導尋問よ!検察側は認めないわ!」
カミノギ「・・・・おじょうちゃんは黙ってな。・・・・ここはあんたの出番じゃないぜ。」
メイ「うっ・・・・!」
カミノギ「・・・・確かに・・・・俺はあの時・・・・
足元に転がっていた杖を握り、あわよくば気絶させるつもりで、・・・・ちなみの背中を突いた。
あんたの言う通り、あたりは闇だった。
だからこそ・・・・万が一これが刀なら、相手を殺してしまうってことは、頭の片隅にあった。・・・・そういうことだ。」
ナルホド「し・・・・しかし、それが刀だと予見することは、困難だったはずです。
先ほど狩魔検事も言っていたように、美柳ちなみが凶器を取り出してから、それを使わずに捨てたとは誰も思いません。」
サイバンチョ「ふうううむ・・・・それは、そうですね。」
ナルホド「・・・・神乃木さん。あなたが自分を責める気持ちはわかりますが、ぼくも弁護士としてこれだけは主張したいと思います。
・・・・あなたは、あの時、美柳ちなみを気絶させることで、犯罪を防ごうとした。
つまり、あの瞬間においてあなたが取れる、最良の行為をしようとしただけなのです!」
サイバンチョ「ふううううううううううううううううううううむ。
・・・・どうやら我々は、ついに真相にたどり着いたようです。
被告人は、綾里 真宵の命を救うために、彼女を殺そうとしていた美柳ちなみを・・・・杖で突いて気絶させようとした。
ところが杖に仕込まれた刀身が露出していたため、美柳ちなみを霊媒していた綾里 舞子を刺殺してしまった。
しかし、・・・・仕込み杖の刀が抜けたのは偶然の所産で、予見困難だった・・・・。」
ナルホド「その通りです。」
サイバンチョ「被告人。・・・・あなたは既にこの事件に関して、死体遺棄と捜査妨害の罪で起訴されています。
・・・・これで全ての罪が消えるわけではありません。しかし。
綾里 舞子に対する殺人罪については、正当防衛を認め、無罪とします。」
メイ「ぐ・・・・こ、こんなバカな。・・・・認めないわ。こ、こんな」
サイバンチョ「これにて閉廷!」
同日 12:30 被告人控室
ナルホド「あの・・・・おめでとうございます。」
カミノギ「ああ、ありがとうよ。・・・・あんたにも世話になったな。」
ナルホド「ええっと、そういわれると何と言葉を返していいやら・・・・」
チヒロ「ふふ・・・・なるほどくんのおかげよ。ありがとう。」
カミノギ「・・・・ちょっと・・・・いいか?」
ナルホド「・・・・え?」
カミノギ「2人きりで話がしたい。・・・・ちょっとはずしてくれ」
ナルホド「・・・・・・・・」
チヒロ「なるほどくん。・・・・お願い。」
ナルホド「・・・・・・わかりました」
同日 地方裁判所渡り廊下
イトノコ「よっ!・・・・そんなところで何してるッスか?
勝利ッスよ!!もっと景気のいい顔するッス!!!!!」
ナルホド「あ、イトノコさん・・・・
いや、千尋さんと2人で話したいって、神乃木さんから追い出されまして・・・・」
イトノコ「・・・・あの2人って結局・・・・あれッスよね?」
ナルホド「・・・・そうですね。昔付き合ってたらしいですよ。」
メイ「なんですって?本当なの?成歩堂 龍一!」
ナルホド「え・・・・?!・・・・そ、そうみたいだけど?」
メイ「ということは、過去に何かの原因で別れて・・・・
それから憎みあうようになった。・・・・ということかしら?」
ナルホド「・・・・・・・・・・・・ふっ。
あの2人の関係が分からないなんて、子供だね。狩魔 冥。」
メイ「な・・・・なんですってぇ!」
(ビシッビシッ)
ナルホド「いてっ!いてててて!!」
(ビシッ)
イトノコ「キャン!!」
メイ「ヒゲ!!・・・・黙ってないで反論しなさい!」
イトノコ「ええええー?自分がッスか?・・・・ええと・・・・」
イトノコ「・・・・てことは、あれッスね。今ごろ2人は昔を思い出しながらアツアツに・・・・」
メイ「誰が下品な話をしろといった!!」(ビシッビシッ)
イトノコ「ううう・・・・結局ぶたれるッス」
ナルホド「いや・・・・そ、それはないんじゃないかな?だって千尋さんの中身は真宵ちゃん・・・・」
イトノコ「・・・・・・なんスとぉ!!!それは犯罪ッス!!タイホするッス!!」
(・・・・ガチャ)
マヨイ「・・・・あれ?・・・・みんなで集まって、何してるの?」
ナルホド「あ、真宵ちゃん!
・・・・ど、どうして泣いてるの?・・・・神乃木さんは?」
マヨイ「・・・・・・・・・・・・・神乃木さん、行っちゃった・・・・」
ナルホド「・・・・?」
マヨイ「・・・・もう、ここに戻ってくることはないって・・・・」
ナルホド「!!!!」
メイ「それは・・・・もしかしたら・・・・」
ナルホド「神乃木さん・・・・し・・・・死ぬつもりなんじゃ・・・・」
マヨイ「?!・・・・ちがうよ!神乃木さんはそんな人じゃないよ!!
だいいち、そんなのお姉ちゃんが許さないよ!!」
ナルホド「・・・・・・・・」
マヨイ「言ってくれたもん・・・・遠くにいても私のこと見守ってるって・・・・
それから・・・・いつかまた会えるって・・・・」
その後、・・・・神乃木さんの行方は、検事局でも分からないという・・・・
でもぼくたちは、今でも待っている。
いつの日か彼が、コーヒー片手に帰ってきてくれるのを・・・・
〜FIN〜
>>400から分岐
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\\ノ く / / ~~ ',| √| ノ_,,,ー〜i
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へ く~7_へ く_,, ┌二、~
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ノ/ | |_ノ ) J |∠ノ \ ノ
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サイバンチョ「だ、誰ですか、いまのは……」
ミツルギ「私だ、裁判長」
ナルホド「み、御剣!!」
メイ「何をしに来たの、御剣玲侍!」
ミツルギ「フッ・・・・このままではムジュンを残したまま無罪判決が出そうだったんでな。」
(な、なんだって・・・・!)
メイ「ここは私の法廷よ!あなたの勝手になどさせないわ!!」
サイバンチョ「・・・・いやいや!法廷を勝手に私物化されては・・・・(ビシッ!)ギャ!」
ミツルギ「だが、私が見たところすでに有効な反撃の手段を失っているようだが?」
メイ「クッ・・・・!!」
ナルホド「そんなことより!御剣、なんなんだそのムジュンって・・・・!?」
ミツルギ「被告人。先ほど君はこう言ったな。
『足元に転がっていた杖を握り、あわよくば気絶させるつもりで、・・・・ちなみの背中を突いた。』」
カミノギ「・・・・確かに・・・・間違いないぜ。」
ミツルギ「杖で気絶させるのなら背中を突くのではなく、頭部めがけて振り降ろすのが自然ではないか?」
ナルホド「・・・・!!」
チヒロ「・・・・!!」
サイバンチョ「ふうううむ・・・・それは、そうですね。」
ミツルギ「しかもこの杖は見ての通り、一方が大きく重くなっている。
気を失わせるために殴るなら、杖の柄の方を持つのが自然だ。」
サイバンチョ「ふうううむ・・・・被告人はなぜ、そうしなかったんでしょう?」
ミツルギ「フッ・・・・理由は一つしかない。
被告人は杖が鞘から飛び出し、刀がむきだしになっていることに気がついていたからだ!!」
サイバンチョ「な・・・・なんですとぉぉぉぉ!!!!」
(ザワザワザワザワ)
サイバンチョ「静粛に!静粛に!!
・・・・い、いかがですか?弁護人・・・・」
hosyu
408 :
名無しさん、君に決めた!:04/08/08 18:13 ID:hLlnLk7o
age
暇な人もいるもんだね
真宵って生倉が星影法律事務所にいたのは覚えてたのに、
神乃木のことは覚えてなかったのか?
神乃木と千尋が一緒に所属してたのはおそらく1年半。
真宵が彼と会う機会がなくても不思議じゃない。
>384-406
冥が本作に比べあっさりまいっている気がする。でも、通して読んだが面白かった。グッジョブ!
ほ
ほ
なんとしても保守
保守
418 :
名無しさん、君に決めた!:04/10/09 13:34:12 ID:ZuzgyL2O
titiage
sage
あれは何度目かの調査に、一緒に出かけた帰りだった。
調査のようなデートのような微妙な状態。
(・・・私にはデートのような気がするんだけど、
神乃木さんにとってはただの調査なんだろうな・・・)
チヒロ「・・・私も免許とろうかな・・・」
カミノギ「千尋がか?・・・やめたといた方がいいんじゃねぇか?」
チヒロ「あら、どうして?」
カミノギ「おまえ驚異的な機械音痴だからなぁ。」
チヒロ「失礼ね!パソコンと車は違うでしょう!」
カミノギ「クッ、・・・とりあえずおまえが免許取っても、俺は隣に乗るのは遠慮しとくぜ。」
チヒロ「・・・・・・あら、私だって!この間みたいなことやられたら事故起こしちゃうもの。」
カミノギ「?」
チヒロ「星影先生のものまねです!私本当に笑いすぎて死ぬかと思ったんですよ。
次の日、星影先生に会ったら吹き出しそうになるし・・・」
カミノギ「・・・そうか。そいつはうかつだったな。」
チヒロ「・・・?」
カミノギ「そんなに気に入ってたんなら、新しいネタを仕入れとけばよかったぜ。」
チヒロ「・・・・・・・・・;」
彼の名前は神乃木壮龍。私と同じ弁護士事務所の先輩だ。
休日になるとこうして一緒に出かけたりするので、職場では恋人同士と思われている。
でも実は2人は、ある事件と、そこに関わった人物を徹底的に調べなおしていたのだ。
・・・だから、2人の間には、・・・何もない。
そもそも彼は、私の事を女だと思ってないみたいだし・・・
カミノギ「どうだ?そろそろ何か見えてきたか?」
チヒロ「・・・・・え?・・・あ、何が?」
カミノギ「何が・・・じゃねぇだろ?俺たちは仲良くハイキングしてるわけじゃねぇんだぞ」
チヒロ「わ、わかってます!・・・ちょっと考え事をしてただけです。」
カミノギ「考え事?・・・事件のことか?」
チヒロ「・・・・・・」
カミノギ「じゃあ、ひょっとすると・・・俺のことか?」
・・・なのに、時々こうやって私のことをからかってくるので困ってしまう。
チヒロ「・・・それもありますね、確かに。
時々不思議になるんです。神乃木さんがどうしてここまでしてくれるのかが」
カミノギ「・・・・・・」
チヒロ「星影先生に聞きました。そもそもあの法廷に付き添ってくれたのも、神乃木さんが言い出したことだって」
カミノギ「・・・クッ、それで?」
チヒロ「・・・おかしいじゃないですか。
だってあの頃の先輩、寝る暇もないくらい忙しかったのに・・・」
カミノギ「・・・それで?・・・じゃああんたはどうしてだと思う?」
チヒロ「それは・・・・・・やっぱりあれですよね?」
カミノギ「・・・・・・」
チヒロ「あの時の・・・模擬裁判・・・」
星影法律事務所では「模擬裁判」がしばしば行われていた。
過去に取り扱った事件を題材に、弁護士役、検事役が、本番さながらの「裁判」をする。
その際、裁判長席、検事席、傍聴席からビデオを撮ってもらい、
自らの立ち居振舞いを徹底的にチェックする。
そうやって法廷でのテクニックを磨くのだ。
練習とはいえ、見るほうもやるほうも真剣そのものだ。
特に新人には格好の訓練の場となる。
私が生まれて初めて「弁護士」をやった時、「検事」役をしてくれたのが神乃木さんだった。
チヒロ「あの・・・綾里千尋です。よろしくお願いします。」
カミノギ「・・・・・・・おいおい、大丈夫かよ、おじょうちゃん。顔が真っ青だぜ」
チヒロ「は、はい。・・・が、がんばります!!」
カミノギ「・・・いつでもいいぜ。かかってきな」
その時のことは・・・あまり詳しく語りたくない。
とにかく反省点だらけで、・・・彼にも迷惑を掛けたと思う。
チヒロ「・・・あの時の私を見て・・・心配になったとか。」
カミノギ「クッ・・・まぁいいセンいってるが、正確に言うとちょっと違うな。
・・・俺は確かめたかったのさ、あの時の予感が本物だったかどうかを。」
チヒロ「・・・?」
カミノギ「あの時のあんたはどこから見てもただのコネコちゃんだったが、
時々はっとするようないい目をして、こっちにかみついて来たよな。
こいつはひょっとすると、虎の子だったのかも知れねぇ。
・・・そいつをこの目で確かめたかったのさ。」
・・・そう、あの時・・・。
神乃木さんがあんまり私のこと小バカにするので、
私、かなり頭に来て・・・叫んだのだ。
チヒロ「異議あり!
・・・検事さん。まずその暴言をやめてもらえますか?
・・・ここは神聖な法廷です!」
ナミノギ「・・・!」
一瞬で法廷の雰囲気が変わり、しばらくは緊迫したやりとりが続いた・・・。
チヒロ「・・・それで私の法廷を・・・」
カミノギ「そうだ。そして・・・・・・
裁判の結末は俺にとっても思いがけないものだった。
・・・あの時、あの女に出された『宿題』は、俺のものでもあるのさ。」
チヒロ「・・・はい。」
カミノギ「俺は必ずあいつらを追いつめる。・・・あの女をもう一度法廷に引っ張り出して、今度こそ真実を明らかにする。
・・・それがあんたの依頼人への・・・せめてものつぐないだぜ。」
チヒロ「・・・」
それは・・・分かっている。
私だって同じ気持ちだ。
・・・分かっているけど・・・
彼の話を聞きながらだんだん切なくなっていく自分がいる。
カミノギ「・・・今日の千尋はちょっとおかしいな。
・・・何か心に引っかかってることでもあるんじゃないか?
・・・俺でよけりゃ、話してみな。・・・聞いてやるぜ」
チヒロ「・・・これは・・・私の問題ですから・・・。」
(神乃木さんに話せるわけないでしょ。こんなこと。)
カミノギ「そうか・・・・・・
あんたもつらい立場だよな・・・」
(・・・全然違う方向に納得されてしまった。)
カミノギ「だが男は、つらい時でも顔を上げて、前を見据えるもんだ。」
(・・・だんだん腹が立ってきた!)
チヒロ「あの、神乃木さん。私、女なんですけど。これでも。」
カミノギ「・・・知ってるぜ。」
チヒロ「だって私のことを男、男って・・・」
カミノギ「・・・・・・・
誰かさんが泣いて頼むから、そういうことにしてただけだが・・・
覚えてないのか?」
チヒロ「・・・・・・」
(・・・・あっ・・・・)
カミノギ「クッ・・・いい目だ。本気になってかかってきな。おじょうちゃん。」
チヒロ「・・・それから!!
今後、私のことは『男』と思って頂いて結構ですから!」
チヒロ「・・・そうだった・・・私が・・・」
カミノギ「・・・まぁあんたを女だと思ってると、つい余計なことを考えちまうからな。
俺自身の戒めの意味もあったかも知れないがな。」
チヒロ「・・・余計なことって・・・何ですか?」
カミノギ「・・・・・・」
あたりはすっかり暗くなっていた。
テールライトのまぶしい光が何度も通り過ぎていく・・・
神乃木さんはさっさと話題を切り替えて、さっきの質問には答えてくれない。
私はたまらなくなって、もう一度尋ねた。
チヒロ「・・・神乃木さん。・・・答えてくださいさっきのこと。
余計なことって何ですか?」
私の思いつめたような表情に、彼は何かを感じとったらしい。
車を路肩に寄せて止めた。
カミノギ「そんなこと聞いて、・・・どうするつもりだ?
・・・余計なことってのは文字通り余計なことさ。
・・・野暮なことはいいっこなしだぜ。」
チヒロ「でも私・・・」
カミノギ「千尋・・・」
チヒロ「・・・」
カミノギ「男はいつも、自らの行動にルールを定め、生きている。
・・・仕事場に色恋沙汰はいらねぇ、それが俺のルールだ。」
チヒロ「・・・!」
カミノギ「千尋。おまえは俺が思った通り『本物』だった。
だから俺が一人前に育てるつもりだ。だが・・・もし・・・」
チヒロ「・・・?」
カミノギ「・・・もし、弁護士としてでなく、ただの男と女として出会っていたら・・・
俺はおまえに惚れちまっていただろうな。
だがそれは、今の俺たちには・・・邪魔なだけだ。」
チヒロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
カミノギ「・・・つまらねぇ話聞かせちまったな。忘れてくれ。」
チヒロ「・・・神乃木さん。
・・・・・・コーヒーに塩を入れたことは?」
カミノギ「・・・あん?」
チヒロ「どうなるか分からないけど、うまく行くのかも知れない・・・」
カミノギ「・・・・・・」
チヒロ「それなら、やってみたほうがいいって・・・思わないんですか?」
カミノギ「・・・・・・!」
神乃木さんはあっけにとられたように、しばらく無言だったが、
やがて愉快そうに笑い出した。
カミノギ「・・・一本取られちまったな。優秀な後輩を持つと苦労するぜ。」
そう言うと、私の肩を抱いて自分に引き寄せた。
カミノギ「・・・俺のコーヒーはいつもブラックだ。混じり気のない澄んだ黒・・・
千尋は塩じゃねぇ・・・ジノリのカップさ。
あんまり綺麗なんで飾って眺めとくだけにしちまった・・・。
だがカップはいつだって・・・熱いコーヒーが自分を満たすのを待っているのかもな。」
彼は私のほおを優しく持ち上げて、私を見つめた。
カミノギ「・・・千尋。」
チヒロ「・・・・・・」
カミノギ「・・・おまえが好きだ・・・千尋。」
チヒロ「・・・私も・・・」
・・・そうして、私たちは本当の恋人同士になった。
・・・私たちに与えられていた時間は、
実はとても・・・短かったのだけれど・・・
それでもあの時、彼の胸に飛び込んだことを、私は決して後悔することはない。
一緒に過ごした日々は素晴らしいものだったと、胸をはって言えるからだ・・・
−FIN−
(エロを期待した方すみませんw)
台詞の前に名前付けるの禁止
台本やリプレイじゃないんだから
>>428 ゲーム画面の表現に忠実なだけじゃない?
430 :
名無しさん、君に決めた!:04/11/15 21:29:32 ID:Fyb5Dxy2
面白いからあげ
エロキボンヌ
432 :
名無しさん、君に決めた!:04/12/10 07:27:12 ID:wH0sYDDG
age
小説マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
435 :
【末吉】 :05/01/01 22:17:04 ID:???
2005
1
tes
438 :
名無しさん、君に決めた!:05/01/31 20:47:26 ID:x6Xl5hBJ
ほしゅ
エンディングの集合絵だとさあ、神乃木さん「アッチ側の人」みたいな扱いだよね…
444 :
名無しさん、君に決めた!:2005/04/21(木) 00:33:19 ID:hiDzNOsn
445 :
名無しさん、君に決めた!: