いやな夢を見ていた。
どんな夢だったかは憶えてない。
小さなころ見た怖い夢だったかもしれないし、
熱にうなされたときに見ためちゃくちゃな夢だったかもしれない。
いやな夢。怖い夢。うなされ、圧迫され、息苦しくて、目が、
覚めた。
いつもの部屋。
いつもの天井。
いつものように体が重く、
いつものように僕の服はぜんぶ脱がされ、
いつものように寝息が胸の上から聞こえる。
……重いよ、ベイリーフ。
そう、いつものことなのだ。
安心し切った表情で全体重を任せすぴすぴ寝ているベイリーフを起こさないように、
慎重に「ベイリーフぶとん」から抜け出る。
体を引き抜く途中で、ちょっと……朝の生理現象の結果が……ちょっと引っかかったりするけど。
この悪癖が、いや、せめて服を脱がすということがなければいい奴なんだけどな。
どうもベイリーフはこう考えているみたいなんだ。
「人間界では、"愛しあう"ふたりは裸で抱きあって夜を明かす」
それ自体は間違ってはいない(と、友達みんなが言う)んだけど、たぶんちょっと勘違い。
でもその勘違いで、毎夜ベイリーフは僕の布団をはぎ、パジャマも下着も器用に引き抜いて、
おもむろに「あいしあうふたりごっこ」で一方的に肌を寄せ合い、そしてそのまま寝ちゃう。
せめて添い寝にしてくれれば重さでうなされずに済むのに……
軽く身支度を整えて部屋に戻ると、ベイリーフも既に身づくろいを始めていた。
起こしちゃったのかもしれない。
あのねベイリーフ、一緒に寝てくれるのは嬉しいんだけど、せめて隣で寝てくれないかな。
上に乗っかられていると朝とかちょっと恥ずかしいんだよね。
そんな言葉が喉元まで出かかって、止まる。
こちらを見つめるベイリーフの、パートナーを信頼した、幸せいっぱいの、瞳。
「……おはよう。いい朝だね」 「べ〜い!」
ああ、今夜もうなされる。