作者名を知らせずに 詩を批評してもらおう

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帰途

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか

あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは 僕とは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ

あなたのやさしい眼の中にある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう

あなたの涙に果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

言葉なんか覚えるんじゃなかった
日本語と少しの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙の中に立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる