○●今週のテーマ○●

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328とおりあめ
「梅雨」

雨がうすぎぬのように
優しく世界を抱擁すると

湿度は姿を持ち
すべての音をその手に掬いとって

からだを失くした山の幽霊が
遠く向こうで所在なげに佇む

山を隠そうとする電線たちは
雲に呑まれた空をうまくはかれずに

力無くたゆんだその下を
黄色の花を元気に咲かせて子供たちが走ってゆく

この豊かな遠近法の上に 雨は白いパステルで
静かにクロスハッチをかけ続ける