富永 太郎

このエントリーをはてなブックマークに追加
1
キャバレー王の福富太郎氏とは 関係ありません

1924年 作者23歳(翌年 結核で早世)の時の作品

----------------------------------------------------------------------
橋の上の自畫像    富永太郎

 今宵私のパイプは橋の上で
 凶暴に煙を上昇させる


 今宵あれらの水びたしの荷足(にたり)は
 すべて昇天しなければならぬ、
 頬被りした船頭たちを載せて。

 電車らは花車(だし)の亡霊のやうに
 音もなく夜(よる)の中に擴散し遂げる

 (靴穿きで木橋(もくきやう)を蹈む淋しさ!)


 私は明滅する「仁丹」の廣告塔を憎む
 またすべての詞華集(アントロジー)とカルピスソーダ水とを嫌ふ。

 哀れな欲望過多症患者が
 人類撲滅の大志を抱いて、
 最後を遂げるに間近い夜(よる)だ。


 蛾よ、蛾よ、
 ガードの鐵柱にとまつて、震へて、
 夥しく産卵して死ぬべし、死ぬべし、

 咲き出でた交番の赤ランプは
 おまへの看護(みとり)には過ぎたるものだ。

---------------------------------------------------------------------

青年期特有の 自意識の噴出 等

  77年前も 現代の 青年達も

    あまり 変わっていないように 感じる
2名前はいらない:01/09/01 19:50 ID:gDZlH0Po
群衆の中にいないと みたいなのがなかったですか?
ボードレールみたいの.
3名前はいらない:01/09/01 23:08 ID:R68t0bpY
それは断片と言う詩です。中原中也、小林秀雄という強者を引き連れて街をさまよい歩いたらしい。
恥の歌とか秋の悲歎もいいな。
4:01/09/02 09:44 ID:.GTY3dvE
>>3 様>

>>2 様の 質問にお答え戴き ありがとうございます

「秋の悲歎」(散文詩)の 御紹介を ・・・・・・。

-------------------------------------------------------------------------
秋の悲歎(T)         富永太郎


私は透明な秋の薄暮の中に墜ちる。戦慄は去つた。道路のあらゆる直線が甦る。
あれらのこんもりとした貪婪な樹々さへも闇を招いてはゐない。


私はたゞ微かに煙を擧げる私のパイプによつてのみ生きる。あの、ほつそりとした
白陶土製のかの女の頸に、私は千の靜かな接吻をも惜しみはしない。


今はあの銅色(あかゞねいろ)の空を蓋ふ公孫樹の葉の、光澤のない非道な存在を
も赦さう。オールドローズのおかつぱさんは埃も立てずに土塀に沿つて行くのだが、
もうそんな後姿も要りはしない。


風よ、街上に光るあの白痰を掻き亂してくれるな。


私は炊煙の立ち騰る都會を夢みはしない――土瀝青(チヤン)色の疲れた空に炊煙
の立ち騰る都會などを。今年はみんな松茸を食つたかしら、私は知らない。多分柿
ぐらゐは食へたのだらうか、それも知らない。


黒猫と共に坐る殘虐が常に私の習ひであつた・・・・・・ (つづく)
5:01/09/02 09:44 ID:.GTY3dvE
秋の悲歎(U)         富永太郎

(つづき)

夕暮、私は立ち去つたかの女の殘像と友である。天の方に立ち騰るかの女の胸の襞
(ひだ)を、夢のやうに萎れたかの女の肩の襞を私は昔のやうにいとほしむ。


だが、かの女の髪の中に挿し入つた私の指は、昔私の心の支へであつた、あの全能
の暗黒の粘状體に觸れることがない。


私たちは煙になつてしまつたのだらうか?私はあまりに硬い、あまりに透明な秋の
空氣を憎まうか?


繁みの中に坐らう。枝々の鋭角の黒みから生れ出る、かの「虚無」の性相(フイジ
オグノミー)をさへ點檢しないで濟む怖ろしい怠惰が、今私には許されてある。

今は降り行くべき時だ――金屬や蜘蛛の巣や瞳孔の榮える、あらゆる悲慘の市(い
ち)にまで。


私には舵は要らない。街燈に薄光るあの枯芝生の堅い斜面に身を委せよう。


それといつも變らぬ角度を保つ、錫箔のやうな池の水面を愛しよう・・・・・・私は私自
身を救助しよう。

--------------------------------------------------------------------------

ボードレールの 影響が濃い

 透徹した 秋の空気感の表現下

  せめぎ合う 強気と 弱気の

     葛藤 ・・・・・。
6:01/09/02 09:59 ID:.GTY3dvE
>>4>>5 を 一括で 読まれるには

  ”レスを全部読む” を 願います ・・・・。
7名前はいらない:01/09/02 11:57 ID:3YYdnT9w
2ですが,ボードレールみたいな印象が強かった
のですが富永太郎のこれは影響はあるだろうけれど
本人の特性のある傑作ですね.
>>3 >>6 ありがとうございました.
8 :01/09/03 13:39 ID:vRpJNl.I
9名前はいらない:01/09/05 06:41 ID:u2Z4vRHs
染みた。 age
10 ◆gKYE6H8A :01/11/04 18:33
11名前はいらない:01/11/04 18:55
昨日、タイムカプセルを掘り起こしたんですが、その中に入れておいたテープに変な声がまじってたんです。
まあそれだけならなんか電波の音をひろっちゃったとかいろいろかんがえることができるのですが、どうもその
不気味な声の中の一部に僕のひいじいさんにあたる人の名前(昔の名字も含めて)が入ってるような気がするんです。
MDに入れて何度も聞き返しましたが、聞けば聞くほどよくわかるようになっていきます。気持ちが悪いです。
こういうのってなんなんでしょう?なるべく呪いとかそういうのじゃなくて科学的に解明したいです。
後に、テープの音を聞きながら詳しく内容を書きたいと思います。
12名前はいらない:01/11/05 16:05
13名前はいらない:01/12/08 22:35
本物の詩作品上げ
14名前はいらない:02/02/16 10:24 ID:???
お宝的スレ発掘age!
15名前はいらない
www.asahi-net.or.jp/~dn8k-tkm/tominagataro.html
せっかくなのでネット上で富永太郎の詩が読めるところ。
コピペして。