「恋人と被告人と山頂の踊り子と惑星の教皇」
寝不足の恋人にさよならが降りしきる戴冠式の惑星
空を覆う雲間から邪まの太陽が大地を覗き込む
スポットライトは山頂の踊り子を指し示し損ねて
カーテン越し朝のひかり恋人は手を取り合いゆっくり起き上がる
ごらん、執拗なフレーズが重低音立体サラウンドで世界に鳴り渡り
地上の三割の人間がショックでブギウギ酩酊するよ
山頂の踊り子はけなげにくるくると舞い踊る
その頃身に覚えのない罪で告発された被告人は唾を飛ばし抗弁を展開するが
パンにバターを塗る恋人の優雅なグリッサンドの手つきに何で敵うものか
ごらん、濃厚で甘美な言い回しが世界の踝まで溢れ出し
地上の三割の女が絶頂に潮を噴射して飛んでいくよ
(いろいろ考えなくて良いもの、支配されるのも悪くないわ)
山頂の踊り子はガンバレ舞い踊る
ああ恋人たちはさざ波のように気だるく単調な午後のセックス
陽のひかりは草の葉の裏々にまで行き届く綿密なサーヴィス
被告人は角の椅子で真っ白に燃え尽きているの?
さながら世界に醜く穿たれた黒い傷痕など知らぬかのように
残照に包まれたテラスで恋人同士の熱い抱擁が交わされる瞬時
山頂の踊り子はガンバレ舞い踊り続ける一方
惑星の教皇は取って返す車上の人であり
世界は星と夜のラウンドが始まるのだった