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803 ◆IBNectmOpk :2007/04/04(水) 13:21:15 ID:N8dHuiUq
だけどね 君よ
僕はもういい加減
耳を澄まそうと思うんだ
君だと思った声は
コンポから流れるギターノイズであり
何かの機械の駆動音なんだよ
風や木々の揺らめきであり
他人の他愛ない笑い声であり
脳と耳の誤作動なんだよ
今すぐにでも薬で散らせる程度の
他愛ない事象に過ぎないんだよ

本当は何もないんだよ
そう何もないんだ
ただ寂しげで自信なさげな男が
思春期を抜けて一人取り残されただけだ
君は存在しないんだよ
君はただの
僕の

存在の不確かさの証明
804 ◆IBNectmOpk :2007/04/04(水) 22:33:40 ID:N8dHuiUq
女達が痩せた顔と身体に寄ってきて
そしてすぐに見抜いて去っていった
形が欲しいなら幾らでも合わせよう
醜い本心なんて本当は求めてないだろ
事象の数倍の自意識
アンバランスに何時までも身悶える

自分の流儀でやりたいお姫様は
多分僕を深く傷つけるだけだろう
だけど それでも行こう
君の失礼なやり方に付き合おう
心を磨り潰す手伝いをしてくれ

人間の形をした皮の中で
拉げて砕けて軟体動物になり
ゲル状の中身から
赤い目を光らせている
彼女の繋いだ手へ
黄色い透明の液体が流れ込んでいく
どうせなら君が僕になればいいな

通り掛ったマンションの駐車場で
寄ってきた傷だらけの野良猫を撫でた
「病気持ってるかもな、きたねぇ」
そう言いながら
猫が満足するまで撫でた
ポケットのお菓子を欲しがっていたが
家に帰りつくまで気付けなかった

お願いだ お姫様
心を磨り潰す手伝いをしてくれ
お願いだ
805 ◆IBNectmOpk :2007/04/04(水) 23:56:54 ID:N8dHuiUq
 恥を上塗る

なんか
かっこいいおれ
とかかくけど
ものすごいすべっている
ことにきづいたまよなか
われにかえってよみかえしたら
もはやぢすべりらんどすらいど
われにかえるのをえいえんにやめました
とりかえしつかねーだせーおれだせぇ
よむときはおんがくなどでじぶんをだましてください
たのむから
せきめんだけはすんな
わらってながせ
ばか
とにかくほんものは
りあるではめっちゃださい
のでまずい
でも
きをぬくとねっとではなるしすと
になるのでもっとまずいし
ちょーやばいです 
けふの
おれにっきたいかいは
きたならしいえごいずむをはっさんしつくしたので
さいごにぎゃくぎれではじをうわぬって
おわり

まる ○
       3点
806 ◆IBNectmOpk :2007/04/05(木) 20:14:04 ID:6g41Dvco
 時代の寵児

例えば
伝えなければ意味が無いとしても
伝えればどうしても傷を負うことがある
当初の予定とはだいぶ違ってしまって
多少暴力的で粗雑になっても
少々可笑しくなっていても
そこにまだ立っていられた
意味があるのか悩みながら

君は広がりきった時代の寵児
世界で一番
小さくて
細かくて
弱い部分から
いつも出発する

いつもその存在意義は
怠惰な虚無に押し切られかけて
土俵際で持ちこたえている
誰もいないのを見計らって
ロッカーを殴り閉める小心者
誰かに音が届くのを願って

君は緩みきった世界の王子
何度だって
視界で一番
優しくて
真っ当で
弱い部分から
出発し直そうぜ
807 ◆zABAZSBt06 :2007/04/06(金) 16:11:11 ID:AXXiOekp
ほら、ナイフを投げろよ
なぁに、上手く避けるさ

別に刺さっても問題ないのだけれどな

なぁ、いっそ刺してはくれまいか

ほら、その剣で貫けよ
なぁに、ちゃんと種も仕掛けも仕込んであるよ

別に好みを貫こうがも問題ないのだけれどな

なぁ、いっそ貫いてはくれないか


大きな玉の上で笑うのに飽きたんでな
808 ◆IBNectmOpk :2007/04/07(土) 22:33:27 ID:6hRk03IX
誰一人許せないと思っていた
この意固地さ
いや ただの醜さが
君を驚かせてしまった
ため息を一つ吐いた
許容しよう
それは後退ではないと思うから

許せよ
詳細に検討して
そして信ずるに足る理由を見つけて
許すよ

みんな暇じゃない
君だってそうだろう多分
合わせ鏡のような人を見て
怯えるのはもう止そう

そこでの僕の演技は
とうに腐りきってしまった
潮時なのかもしれない

ため息を一つ吐いた
感じたもの全てに戸惑って
何一つ残らず叩き壊すか
頭を下げて過ぎ去るのを待った

誰一人許せないと思っていた僕は
許されるに値する人間ではない
そんなことは知っていた
とうの昔に
もう知っているんだよ
809 ◆zABAZSBt06 :2007/04/08(日) 03:12:03 ID:yp6rozlE
雲の上から零れ落ちる水滴が
くたびれたコートに吸い込まれる
体温が雨に奪われていく
骨の軋む音が聞える

震える指でマッチを何本も擦る
ずっと放って置いたからしけってしまったマッチ
何本も何本も折ってからやっと一本に火が灯る
それを雨が食べてしまった

ただ何と無く空を仰いだ
重みで垂れ下がり
落ちてきそうな雲
じくじくと膿んでいる 

温度
存在
生命

何も感じない

雲が覆い尽くした
何もかも奪い去っていく
810 ◆zABAZSBt06 :2007/04/08(日) 03:38:59 ID:yp6rozlE
部屋が広すぎるから
僕は内と外がわからなくなった

窓の向こうから僕が覗いている
僕は僕を見返す
壁が崩れると
ただ白色の世界に独りだった

望めば何でも手に入った
同時に何も残らなかった
すぐ飽きてしまうんだ
だから壊してしまうんだ

遠くから笑い声が聞える
やつは僕だ
僕は誰だ

望めば誰にだってなれた
だから誰でもなくなった
乾く前に重ねていくから
ぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまった

皆が笑っている
返してくれ
それらは僕だ
本当に僕か

僕はなんだ
811 ◆IBNectmOpk :2007/04/09(月) 13:26:42 ID:9Nyh2VcC
カーテンを閉め切った部屋で
目覚めた
午前十時
階下には誰もいない

曇り空から隙間に
光が差し込む

僅かな音階を呟いては
宙に消していく
腕で目をぬぐった

こんな僕に
君が見せてくれる幻は
いつまでつづくのかなぁ

そんな素敵なこと似合わない
自分のことはもう知ってる
そしてまた今
少し変わろうともしてる

汚い布団から立ち上がり
目薬を差してから
よろけながら
今日も台所に向かう

いつまで続くか分からないけど
いつか途切れた時には
その好意の記憶を
未来まで持って行くよ
812 ◆zABAZSBt06 :2007/04/10(火) 00:39:04 ID:NoA9jRdV
斜めに傾いた世界から僕は外を眺める
薄い霧に包まれてぼやけた地平線
色褪せていく
街の中はギクシャクとした人々で溢れ
手足のピアノ線が天に伸びる

無声映画のように静かだ
それが僕には心地良い
皆が大袈裟なボディランゲージ
意味も判らずに笑顔を貼り付ける
見渡すと皆笑顔

皆わかっていないのだ
それで廻って行くなら結構な事だ

この喜劇の主人公は僕だ
同時に僕は一視聴者だ
運命や神や原作者に手足のピアノ線を引かれ
色褪せていく
顔に笑顔を貼り付ける
貼り付けられる
同じ事だ

そして僕は笑う
そして皆も笑う

皆わかっているのだ
それで廻って行くなら結構な事だ
813 ◆IBNectmOpk :2007/04/10(火) 13:58:29 ID:JGWUSgCv
防御反応を起こして
恥ずかしさから
素敵なことを捻じ曲げる
血豆がいくつも出来て血が滲むまで
壁を殴った

シャイなんだろう
そしてとても優しい君よ
何度もそれを繰り返して
とても小さくて狭いところに
押し込められてしまった

そこから動けなくなった

君のための場所はあるんだぜ 
昔から知ってるだろう
無ければ作ることは許されてる
歌ったって別にいいんだぜ
伝えたって別にいいんだぜ

なんかある時
全部バカらしくなって
悩むのにも飽きてしまって
適当に戦略立てて歩き出せばいい
道中で愚図愚図情けなく愚痴りまくればいい

生きにくさはいつか
でたらめな戦略構想がたたって
何発も言葉の弾丸に撃たれたあげく
暴走して何度か煙をあげたあげく
自然と消えていくだろう
それでいい いつかそうなるように願う
814 ◆zABAZSBt06 :2007/04/11(水) 00:27:01 ID:qudQLGtR
僕は両手を空っぽにすると薄く笑う
重すぎる荷物は霧散した
自由なんて気取る事は出来ないが
それでも今は息をするのが楽だ
後ろから狼が言う

勘違いするな
お前にはいらない存在なのだ

それでも僕は笑う
始めからわかりきっている事だから

僕はなよなよした産毛だ

強く擦れる所には生えない
濃く太くならない
弱々しい産毛だ

軋轢に磨り潰されず
誰も気に掛けない
だから僕は生きていける

僕は狼を見返した
彼はその強さのためハンターに殺された
ハンターは僕には気付かない
僕の存在は意味をなさない

血溜の中に光る一対の眼が僕を映す
そこにいる僕は笑っている

空っぽに笑っている
815 ◆IBNectmOpk :2007/04/11(水) 22:40:26 ID:25LWQbxY
そういう感覚だ
自己流快楽原則だ
脳内麻薬がでんだ
どっかのポップバンドに植えつけられたんだ
努力とかいうけど無理だ
自分の場所とかないんだ
いつも下向いちゃうんだ
そんで考えちゃうんだ
自分について

自分の部屋で
一通り悩めばいいだ
そんで飽きればいいだ
青空の下出かけて
一通り悩めばいいだ
そんで飽きればいいだ
人の中出かけて
一通り悩めばいいだ
そんで飽きればいいだ
あの時は青かったとか言えよおっさん
未来の俺よ

どんなに惨めな今でも
怠惰で真っ白な過去でも
全力でベストを尽くしてきた
その結果が現在

遺伝子の乗り物最高
当らなかったノストラダムス最高
基地外ワールド最高

もういいから幸せを述べさせろ
816 ◆zABAZSBt06 :2007/04/13(金) 23:06:00 ID:Re3FFd/H
360度見回しても見えるのは
足跡を付けられ過ぎてカチカチの雪道
空と道は白く
境界は無い

何も見えないのと同じだ

道にはもう足跡は付かない
それが良い事なのか悪い事なのかはわからない
道標になりそうなものも無い
だから足元の先人の落し物を頼りに行く
進んでいる実感も無い
実は同じ所をグルグルと廻っているだけかもしれない

馬鹿馬鹿しい

止まって寝そべればそれで良い気がする
しかし常に後ろから離れない分身が背中を突く
これでは本体がどちらなのかわからない
俺は分身をどこかに運ぶ器なのだろうか
いや、分身自体が本体なのかもしれない
何が違うのだろう
何も変わらない

やれやれ、と

溜息を一つと小さな傷を

道に残して歩き出す。
817 ◆IBNectmOpk :2007/04/15(日) 12:40:17 ID:QVmS5aX0
エンドロールをスロー再生にして
バッドエンドの続きを期待してる
続編のコマーシャルを待ってた

ピーッ 
予測ロスタイム五十年です
試合終了の判断は審判任せです

あぁ青春は
春風に吹かれて舞い上がって消えてしまった
そう思っていたら
桜の花びらと共に断片がハラハラと降ってきた
あなたが「綺麗」と呟いた
庭園の藤の蒼さに重なっていく
見つめる真ん丸な二重に
くすんだこの眼は相変わらず死んだままだけど
テーブルの対岸にある儚さを守るためなら
どんなことだってしたいと感じた
もう脇役でいい
噛ませ犬だって忠犬だって別にいい
苦い思い出になったってそれでいい

ピーッ 上手く倒れましたねぇ
ゴール前に選手が並びだしています
キッカーが鋭い眼でボールをセットし始めました
残りロスタイム四十九年です

エイリアンに壊滅させられた地球が爆発するのが
スロー再生で流れる銀幕の前を
二人の影がゆっくりと横切る
ロビーへと続くドアを押して
少しずつ光が漏れていく
818 ◆IBNectmOpk :2007/04/18(水) 14:07:16 ID:jsA02cxV
なんで思い出して涙が出るのだろう
少し薄暗いカラオケで
十九のようにかわいらしく歌う君が
スローモーションで再生されて
瞬く間にセピア色になっていった

君はまだ夢を見ている
長い間幻にこもっていた
僕は幻を見破ることしか出来ない
夢を夢だとしか言えない
君と何一つ違わない

元ヒエラルキー上位の君は
昔の僕になんて興味ないかい
地続きで一通り味わったから
なんだか少し卑屈になるんだ

暗くなった帰り道
寄せてきた肩の感触を
まだ忘れていないよ
汗ばんだその手を思い出せるよ
君の伸ばしたその手を
僕はしっかりと握れているのだろうか
握り続けていられるのだろうか

僕ら十九の続きを始めよう
まるで喜劇作家の書いた純愛小説みたいな
滑稽で素敵な恋をしよう

橋の向こうにかかった大きな虹を
車の中の二人が見つめていた昨日
819 ◆IBNectmOpk :2007/04/21(土) 13:52:45 ID:DMPNs/M7
 たった一つ

小さな亀裂がはしる
水はまだ漏れていない
どこかでの俺は誠実で強い
どこかでの俺は薄弱で脆い
どちらも濁りのない真実だ

綻びからばれなければいい
綻びを縫い続ければいい
あぁ
全部演じきってやろうじゃないか
全て手に入れてやろうじゃないか
本当に欲しいものばかりだ
今更迷うものか

我武者羅に出鱈目に進め
這いつくばって涙流して闘え
ストレスに吐きながら
弱音を吐きながら
生意気こきながら
言うだけならただだろう
言うだけなら虚だろう
恐れずに動け
やり遂げて
違う景色を見てやろう
矛盾したいくつかを
食い尽くして取り込んでやろう

有象無象の無理難題を
理路整然としたたった一つに
纏めあげてやる
820 ◆zABAZSBt06 :2007/04/22(日) 17:51:54 ID:tiqvC2ms
男は影を残して歩き去った
影は歩き方さえ知らず
ただそこに貼りついていた

日光は少しずつ嫌らしい悪意を込めて影を焼き去る
薄れゆく心身
もがき這いずり逃げ惑う

遠くで男が影を見ている
その瞳に込められていた同情は何に対してのものだろう

男は可視光に貫かれて死んだ
影は裏路地に寄生した
コールタールの空気に肺を焼かれ
濁りきった油みたいな影が何重にもまとわりついて
影は醜く肥大していく

影は深淵の中
焼かれ死んだ男を見つめる

男は光の獄の中
汚く濁った影を見つめる


目の中に同情を満たし
ただ見つめる
821 ◆zABAZSBt06 :2007/04/23(月) 01:49:43 ID:YjeULRVR
冤罪の無い世界
先祖が犯した罪だとか
産まれた事の罪だとか
原罪だとか予防とか
兎にも角にも
何もしていないのに刑が下された
先が宇宙に続く階段を昇らされ続ける
寒さと空気の薄さで意識は銀河を離れていく
首に掛ける縄は未だ見えない

肉体は階段を昇り続ける
罪はいつ消えるのだろう

飛び去った意識は戻るのだろうか
多分戻らない
意識だけがやがて許されて
意識は輪廻を重ねる

肉体は階段を昇り続ける
罪はいつ消えるのだろう

やがて太陽に近づくと
肉体は焼け始める
それでも許されない
罪は消えない
首に掛ける縄は未だ見えない
灰になり昇れなくなる
首に掛ける縄は未だ見えない
太陽風が階段を駆け抜ける
首に掛ける縄は未だ見えない
肉体は四散した
縄を掛ける首が無くなってしまった

罪はいつ消えるのだろう
罪はいつ消えるのだろう
罪はいつ消えるのだろう
822 ◆IBNectmOpk :2007/04/23(月) 16:11:17 ID:j/lNkLZF
 ライブハウス

天井に棲んでいであろう化物の類が
ノイズと共にその姿を僅かに可視化させたって
多分いつも通り僕は見逃すだろう

コンマで変わる体細胞の微細な変化が
身体を火照らせたり気持ち悪い表情をさせても
あなたは楽器さえ持っていれば
それほど悪くない記号として認識するだろう

これは余裕から出た皮肉
それとも切実さから出た祈り
どちらでもいいんだろう
どう受け取られても
音の響きさえ良ければいい
弾き方を間違えなければいい

あなたが痛みをどれだけ謳ったって
僕にはその深さは底知れない
僕が喜びをどれだけ詠ったって
あなたにはどこか痛々しくしか映らない

不器用すぎて表出した美しいオリジナリティを
人は詳細に分析して真似ようとするけれど
ドロボウだとあなたは言うけれど
中間点で作用している真実は誰も知らない

なぁ天井の化物よ
少しだけでいいから僕に宿ってくれないか
あげられるものはそんなにはないけれど
力を貸してくれよ
僕らの間にあるものを
掬い取って一緒に照らし出してくれよ
823 ◆IBNectmOpk :2007/04/27(金) 14:35:03 ID:SR8SlWFY
 水際

幻は弾けたのだろうか
よくわからない
ゲームに付き合う気はない
その気力すらあまり無い
僕ら年を取ったんだ
僕ら大人になりそこなった
機械みたいな繰り返しで
子供のころも忘れていく

欲しがる素振りを忘れたから
ここまでどうにかなんとかなった
だけど君に手を伸ばそう
出来うる限り叫んでみよう
君も細い手を伸ばしてよ
でないと濁流に飲みこまれて
また遠ざかって消えてしまう

幻だとしても
泡のようだとして
もう諦めたくない

僕ら年を取ったんだ
僕ら大人になりそこなった
だけど
いつだってなれるのを知ってる
いつだって戻れるのを知ってる
もし手を繋いで飛び込めば
恐くもないし
簡単だから

ぎりぎりの水際で待つ
君が来るのをじっと待つ
824 ◆zABAZSBt06 :2007/04/30(月) 03:40:10 ID:gfHgaqRz
オレンジの空に紺色が混ぜ込まれていく
僕は高台になっている土手を口笛を吹きながら歩く
右手には天井川がどっかり横たわっている
左手には古い街が川底よりも底に広がっている

川は遥か先で折れ曲がっていて
その先を高層化が進む街が覆い隠している
川の水は静かに止まっている様に見える
しかしクラゲみたいなビニールが前方からたゆたって来た事で
改めて流れている事を実感する

この川は昔はもっと曲がりくねっていた
人がそれを真っ直ぐに直した
街はそれによって発展した
人はそれによって増えた
しかし氾濫も増えた
それによる死者も増えた
人身御供は一文化となった
不況真っ只中のご時勢の為か
汚さを隠しすぎてしまった為か
昨今では募集人数が多くなってきているらしい

川底はもう辺りの闇を吸い込んで固体の様な黒さを放っている
そこに放置されている捧げられた者が遺した物が時折幽かな光を放つように反射する
川は穏やかにその光を吸い込み
穏やかに下流に流れ去る
街はぼんやりと一日を受け流す
明日も今日の様に茫洋とした物だと根拠無き確信を秘めて
彼らは川を忘れて生きている
川は彼らを見つめている

紺色の空に星が瞬く
僕は高台になっている土手を口笛を吹きながら歩く
右手には天井川がぽっかりと暗い穴を空けている
左手には古い街が灯火を弱弱しく灯し続けている
825 ◆IBNectmOpk :2007/05/01(火) 16:03:11 ID:QIdHbG5f
 ノイズ

最初はただの気恥ずかしさだった
時が経つにつれて徐々に腐っていき
大きな捩れになっていった
つい先刻まで誰かが心の泉に手を突っ込んで
ネジをすこし回してやればいいだけだった

もう遅い

頭のおかしい素敵なハードコアバンドの映像を
頭のおかしい俺が深夜にもなろうとしている時に見た
才能にも容姿にも恵まれている人たちが
二千七年になってもまだ続けている
二千七年になって俺の眼に姿を現した
浪費だと大多数の誰かが言うだろう
必然だったと少数派の当人たちは言うだろう

捩れで立ち向かえ
運命に立ち向かえ
人の流れを変えろ人の流れに割り込め

捩れ自体がその人になり
捩れが業を決定付けた
選択肢は過去にはあった
過去の選択肢は凍結されて記憶の棚にキラキラ嫌味に光ったまま陳列されている
現在の選択肢は高そうな布に包まれて大事そうなフリをして渡される
目隠しをしよう目隠しをして適当にサイコロを振ろう
出た目は見ないで進み止まったマスのイベントをこなそう
繰り返しだサイは投げられた繰り返しだ

何もかも手遅れだ捩れた繰り返しのやり直しの捩れた繰り返しだ
捩れた焼きたてのパンを口に運ぶ

最初はただの気恥ずかしさだった
時が経つにつれて徐々に腐っていき
大きな捩れになっていった
つい先刻まで誰かが心の泉に手を突っ込んで
ネジをすこし回してやればいいだけだった
もう何もかも手遅れだ

ただの捩れた繰り返しの結果が表出した二千七年五月一日
ビデオに映った女の人は
淋しそうな満足そうな顔して叫ぶ

何もかももうすでに遅い
826 ◆IBNectmOpk :2007/05/01(火) 16:13:12 ID:QIdHbG5f
 待つ間

冗談みたいに冗長な君は
泣きついた皮肉を華麗にかわした

ずっと思っていたんだ
波紋はすぐに広がっていって
何もかも簡単に壊れてしまう
間違っていたのかな
騙されているのかな

君が知りたい
君のことをもっとよく知りたい

お姫様は幻の中を生きている
だけどそれは
誰もが羨む様な物語で彩られてる
幸せな沢山の嘘に守られている
僅かに横切る暗い影も
君は強さに変えるのだろうか

幻を纏うことさえ
人間の形さえ忘れてしまった
黄色く濁った液状生物は
救われることを夢想してしまうよ

冗談みたいに冗長な君よ
良ければ物語に加えてくれないか
君が言うような人では無いけれど
役柄を与えて欲しいんだ

王子で無くてかまわない
騎士でなくたっていいから
君が役名をつけて欲しいんだ
その名前を呼んで欲しいんだ
827 ◆IBNectmOpk :2007/05/04(金) 12:45:17 ID:R5q/IoUW
 ドラマクイーン

嘆いとけばハズレは無い
そうダサくもない
かっこわるくもない
僕らロマンチストなペシミスト

日常には何にも起こらなくて
過剰で余剰な自意識を
ただ嘆きへと転化している
くだらない足掻きを続けている

颯爽と歩く窓外の他人を
とても不安定なものだと
見ていたけれど
本当に崩れそうなのは
まともに動けず風化していく自ら

眺めている素敵な人たちは
小さな積み重ねを続けて
ここまで来たよ
二度目の奇跡を待ち続ける
僕には望みようが無いぜ

君はかわいいドラマクイーン
毎日をメロドラマにしようと
考えすぎて動きすぎて
ただ消耗していくよ
空想を現実に適用して
身を持ち崩していくよ

必要な言葉はシンプルで
あとはタイミング次第
過大な自意識を伝えようとする
僕にはできようがないぜ

あぁ 何も起こってないのさ
ただ待てばいいさ
君に会えないからって
計画通りいかないからって
胃を悪くするほど考えることはない
828 ◆IBNectmOpk :2007/05/04(金) 13:36:32 ID:R5q/IoUW
 ピート・タウンゼント

早すぎたパンクアティテュードは腐った
誰一人許さないといった果てに
捩れて生き続けて醜くなり
カート・コバーンに否定された
ピート・タウンゼント

日常なんて知っている
毎日どう暮らせばいいか分かっている
自分の分なんて中学で大体分かる
でも飽きたんだ
むかつくんだ
嫌いなんだ
勝手にやりたいんだ
都合の悪いことは知りたくないんだ
どうしようもない落伍者達
自意識が君を腐らせて
パンダみたいなメイクしても
ゾンビみたいに醜くなっても
汚くあがき続けている

カート・コバーンが
禿げもせず体系を完全に崩すことも無く
才能が枯れる前に時代に見放される前に
三十にもならないうちに死に伝説化し
それでも児童ポルノで捕まっても
クソジジイは相変わらずギターをぶっ壊し続けている
フーのアルバムなんて一枚目しか持ってない
デブって禿げて老けて耳が悪くなり枯れて
過去の栄光で金も名誉もあるあんたなんて好きでもなんでもない

だけどそれでいいんだろう
結果的に悪くないように思える

誰一人許せないと思っていた僕は
許されるに値する人間ではない
そんなことは知っていた
とうの昔に
もう知っているんだよ
829 ◆IBNectmOpk :2007/05/05(土) 22:13:35 ID:PR9BaJ/z
 リプライズ

体育座り
孤独
四畳半
宇宙
四次元
黒ブチ眼鏡
蛍光灯

田圃
レール
汽笛

嫌な思い出
無地のシャツ
裸足
裾直し
ジーンズ
ブラウン管
隈のある顔
街灯
網戸
羽虫
掛け時計
ドアの鍵
流れ星
未来
微かな高揚
晴れた夜空
大の字
深爪した指先
途切れない期待
拡散していく意識

階下からの呼び声
830 ◆IBNectmOpk :2007/05/07(月) 23:59:53 ID:VEkH3kS6
 落ちない夕日

どこか身の固い風体
その緊張した面持ちの
表面に貼りついた過去の栄光
無邪気な子供時代の輝き
中学生みたいな可愛いプライド

優しかった誰かが
空き地で遊んでいた友達が
そこに置き忘れていったようで
誰もが去ったあともずっと
落ちない夕日を眺め続けている

僕の最新型のやり方は
十年も前にみんなが見限ったパターン
君の大事な熊の人形は
夢の島で夜な夜な群れを成してる

公園の中には
外の人たちの知らない僕らが居て
夕焼けが貼りついたプラネタリウムの外
触れられなかったものがあるはずだ

いつだって
一人で大丈夫だという顔して
誰かの手を簡単に離して
愛想笑いで遠ざかっていった
自分の大事な砂城を
崩れないように水で固め続けた
だけど知らない誰かが
何度も簡単に踏み壊すんだ

本当は夢から覚めていたのに
壁画に飽きてしまっていたのに
気づかない振りをずっとしていた
必死で遊具で遊ぼうとしていた
あの空の錆びた長方形の切れ目から
取っ手の付いた夕日から
今日出て行くつもり

明日になったら
満天の星空を
昇る朝日を
雲一つない空に仰ぎながら

きっと外にいるよ
831 ◆zABAZSBt06 :2007/05/09(水) 02:25:29 ID:k5B2e8Cp
生まれ 育ち 朽ち
規則正しくたゆたう
無色の炎
天体を燃やして赤く染める
輝きは失せ
残留物が固まり
そこからまた生まれる
繰り返される
少しずつ劣化していく
無色に色が混じり
単色光がプリズムに別れる
そしてまた単一色に還る
レコードの溝が深まり
やがて音が飛ぶ
時間が同じ所を何度もすり潰す
剥ぎ取られていく
色が消え音が消え運動が消えやがて境界が消える
それさえも燃やされていく
ブスブスと盛大に煙を吐き出す
それもやがて焼き尽くされる
そこからまた生まれる
繰り返される
加速度的に劣化していく
混ざり過ぎて単一色に見える
それは燃えなかった
炎が消えた
色が無くなる
無くなる
832 ◆IBNectmOpk :2007/05/09(水) 18:59:59 ID:IA0TIHm/
 キモイアウトサイダー

キモイ
すれ違いざまに吐き捨てられた
キモイ
人はみな平等さ
キモイ
君の世界に僕は入れない
キモイ
僕を認めたら君が変わるから
狭い世界が壊れるから
キモイ
情報は瞬時に切り捨てられた
いや
絶対あと引いてるよな
納豆みたいに
ネバネバっと臭いつきでさ

僕はキモイアウトサイダー
君の世界の外で生きてる
言葉責めに火照ってる
真面目に傷つくの飽きたんだ

世界はいくつもの自分を映す
全てを包括することはできない
悪くない姿を信じるよ

僕はキモイアウトサイダー
ヌラヌラぐちょぐちょと見っとも無く
幾重にもなった通行人の
硬質の自我の上滑ってく

僕はキモイアウトサイダー
どっかで人の形になって
君の隣に居るかもしれない
そう悪くない容姿と中身で
833 ◆IBNectmOpk :2007/05/09(水) 22:41:00 ID:IA0TIHm/
 使命

夜道を進んでいく途中
似たような人に出会い
少しだけ一緒に歩いて
お互い別れも告げず
道を違えた

気づいて辺りを見回しても
延々と続く両脇の街灯が
一本のアスファルト道と
周囲の暗い森を照らし出す
そんな光景を
何度も繰り返す

偶然だったんだろうけれど
必然だったのかもしれない
引き合わせる何かが
あったのかもしれない
余りに嘆くもんだから
その何かが同情して
幻を見せてくれたのかもしれない

君に対する僕の使命は
呆気なく終わってしまった
必死な演技と
恥ずかしい勘違いと
幸せな言葉を幾つも残して

僅かな間ありがとう
弱く儚く気高い人
合わせ鏡のような貴女

別れも告げずに
行くよ
834 ◆zABAZSBt06 :2007/05/12(土) 23:46:08 ID:3aLNPLON
求めている物が知覚の外に在る物だから
探している振りしかできない
輪郭を錯覚して
無い物を見つけた気がした
止まっているのに周りが蠢いている
目が廻って膝を着く
掌で顔を覆うと世界は無くなって
分け隔てていた壁の一部になった
いつのまにか包み込まれていた
それは優しく殺していく
そして暖かく消化していく
でもそれは内側で風を吹かせた
それはただ痛い
そしてただ冷たい
終わりが曖昧だから耐えられない
救いは信じなければ訪れない

やがて切り刻まれる事に疲れて
何かを信じる事を始める
自分も何かを包み込む時が来る
それで優しく殺すだろう
そして暖かく吸収するだろう
内外を満たされ境界に立たされた時

求めた物は手の内に在るのだろか
835 ◆IBNectmOpk :2007/05/17(木) 03:29:05 ID:Jy31gMQe
 愛している

苔生した大きな身体を揺らしながら
黄色い小鳥を何匹もその広い肩に乗せて
木が茂り森になったコンクリートを
歩いている彼の目は優しい

人は跡形もなく絶滅した地表を
伝説上の生物達が歩く

海の底のアスファルトを
ひび割れたビルディングを潜りながら
曲がった角を堂々と突き出して
泳ぐ彼女へと陽光が照らす

戦争が起こり隕石が降った世界を
灰が包みそして空が現れ
氷が張りやがて融けていき
時間が癒して形を変えていく

シェルターからの祈りは届かなかった
全てを包括する神は現れない
エイリアンすら降りてこない
幾人もの先人が言った
最初に全て持っていて
そして殆ど無くしていく

それは幸せなことじゃないのか

やがて何万年か経ち
進化した猿の骨を博物館に貯めこみながら
地下建築物発掘のゾンビを飾りながら
同じ事を違う姿で嘆く
僕が居た
手に取った
割れた記憶媒体から読み取った
文字は「生まれ変わっても愛している」
とだけ読めた

ゴミ箱に投げようとして
止めて
ポケットに入れる
836 ◆zABAZSBt06 :2007/05/19(土) 03:55:59 ID:mZizqPaw
今欲しい物はイカロスの羽
蝋で作られた偽りの羽
それで飛んだ所で
行くべき所は見えない
ただの暇潰し
広がるようで狭められている
逃走経路は無い
闘争本能も無い
従順になれば
後は後ろから蹴られるのを待つだけ
紐もパラシュートも無い降下
一瞬を煌けなんて今時J-popだって歌わない
ただ無様に地に落ちて破裂する
その血塗られた地上絵は
遠くから見れば花に見えなくも無い

837 ◆IBNectmOpk :2007/05/21(月) 00:39:45 ID:9dEO/6Y8
 透き通る羽

鉄格子から漏れ出る光に
透き通る羽を眺めて
残りの人生過ごすのも
たぶんそう悪くない

それは不幸せだが
とても幸せな筈だ
幻想に塗れた頭を盾に
毎日を規則正しく
至極真っ当に過ごしている

何一つ起こらない
求めれば血を吐くが
求めなければ骨すら溶けていく

いつからここにいる
刑期は何年だ
念じれば壁は破れるか
思えば鍵が手元にあるか

親指と人差し指で摘んだ
その美しい羽が
他人には見えなくとも
それはお前の大事なものだ

吐きつくして溶けつくし
肉体すら何れなくしても
羽を眺め続けていた

鉄格子から漏れ出る光は
太陽がなくなっても永遠に
彼を照らし続けた
838 ◆IBNectmOpk :2007/05/26(土) 02:01:55 ID:fHOlQwq7
 コスモポリタン

鼓膜と網膜を覆っている
ノイズが気まぐれに消えた時
孤独だった
ベットから這い出て
晴れた夜空に月を仰いだとても寒い夜

つけっぱなしのテレビで砂嵐混じりに
親殺しの少年のニュースが流れていて
何一つ共感できなかった
大人になったのだろうか

オイルを垂らしながら
ジャングルを歩く彼が観止めたものは
咲き誇る熱帯花だった
メモリにその光景を保存して
最後の力で熱帯林の隙間から
高空に信号花火を放った

プツッ と全動力が落ちてから
長い時間が経つ
錆びついたショットガン
木の下に横たわった身体
動かない瞳は曇りのない
星空をずっと見据えていた
二つの衛生と太陽がそれを見守り続ける

草が生えて蔦に絡まれチタン合金の身体は
森に取り込まれていった
生まれた場所は遥か遠い
二度と彼は見つけられはしないだろう

ハッピーバースデイ
葬式はめんどい
金もかかる
ついでに
当てつけでやるには悲しすぎる

何度か救いを挿みながら転落を続けた後
必死に低い位置へと這い上がる
本当にくだらないものをいくつか
間抜けにも誇らしげに抱えて

ハッピーバースデイ
四分の一は失敗確定
破れかぶれでいいから
楽しめ

乱視でぼやけた夜空に
唯一の人工物であるこの部屋に
荒野と静かに打ち寄せる海の殺風景な景色に
飽きたら
寝てしまおう

ハッピーバースデー
トゥーユー
839名前はいらない:2007/05/27(日) 04:01:57 ID:mflVovlb
選ぶ事が難しすぎて
そのまま外に飛び出す事を選択した
問題は追いかけては来なかったけれど
制限時間には間に合わなくなった
タイムマシンからみすぼらしい老人が降りてきて
五月蝿く付き纏うから近くに落ちてた石で殴り殺す事を選択した

閉じる事は意外に簡単だ
再び開ける予定が無いからかもしれない

道端にタンポポが咲いていた
まばたきの間にワタボウシに変わった
それは風の中に拡散して消えた
一つ一つが可能性の塊
一つ一つが選択肢の塊

吐き気がして下向きつつ彼らの成功を祈る
しかしハッピーエンドに届く種は一つも無いだろう

一つの種が髪の毛にくっ付いた。
払うと綿が取れて種はアスファルトに落ちて砕けた
彼は選択を誤った
そのせいで死んだ
僕も選択を誤った
そのせいで殺した

それが結果だった


神はその結果をメモすると
また始めからやり直す為にリセットボタンを押した
840 ◆IBNectmOpk :2007/05/29(火) 00:53:52 ID:ZUGyazNz
 枝線

霧がかかっていて
不安定で
頭は濁っていて
何度も殴られたようで
茹だる様な湿気でベトベトで
コンポからグシャグシャのノイズが流れる

このパターンは間違っている
このやり方はきっと違う
パラレルワールドの枝線に迷い込む
きっと間違ったのだけれど
口元が緩むのが抑えきれない
原因が不幸せでも幸せでももうかまわない

泥濘にぶっ転んで這い出て
灰の中を走りきって
土砂降りの中を進んで
ぐしゃぐしゃになりながら
涙腺が枯れてしまうまで
みっともなく走り続けて
明後日の方向へ

暗い森へ
深い海へ
人中の孤独へ
思索の迷路へ
四面楚歌の退路へ
誰かの罠の中へ
枝分かれした廃線へ
岩だらけの崖の下へ
早く流れる嵐の河へ
コンパスの効かない場所へ
愛のない場所へ
愛のある場所へ
嘲笑い声の中へ
誰かの手の中へ
母の胎内へ
父のあの日の拳へ
あの子の身体のラインへ
誰かの肌の感触へ
汚れた瞳の中へ
濁りを潜り抜けた先へ
くだらなくてつまらなくて
どうしようもなくて酷すぎて
時に言いようもなく美しくて
他人の代わりで
自分一人のもので
最低で最高な

どうせ何一つ出来ない
きっと明日も酷いだろう
過ちは二度と取り返せない
そしてずっと忘れられない
この先に何が待っているのかは知らない
けれど口元が緩むのが抑えきれない
ようやくぶっ壊れたのかもしれない

行こう
841 ◆zABAZSBt06 :2007/05/29(火) 03:23:49 ID:aTmQPlWk
通り雨が明けた空
雲の切れ目から
光と水が天までの階段を作る
それは淡く脆く
何処までも続いている
それを昇っていく人が見える
僕はただ見送る
まばたきの間ほどの瞬間
彼はこちらを振り返った気がした
やがて光が強くなり
階段は拡散して消滅する
僕は気が付くと手を伸ばしていた
触れる物は何も無かった
まだ許されていない
突き刺さる強烈の光が世界を照らす
それは少し暴力的過ぎるから
僕は遮光カーテンを閉める
無彩色の人口光が照らす体は死体の様に白い
それは冷たい蜥蜴の腹を思い出させた
要らない記憶だけが染み付いて
吐き出す情報は喉の震えに意味を剥ぎ取られた
涙は流さない
それは許されていない
何も無い事がこんなにも苦しい
息も出来ないほど硬く体を抱きしめ
僕は小さく蹲る
時間は何度も繰り返され
その度に体が欠けていく様な気がした
音の無い無機質の部屋の中
無声映画の様な世界
母親は僕に向かい口を動かす
手を伸ばせば届く距離に父親がいる
今掴めば許されるかも知れない
けれども
蹲る事しか出来ない
カーテンの隙間から流れ込む光が
床に血の零れた様な模様を見せる
そっとカーテンを開けると
世界は今日流された血で濡れそぼっていた
842 ◆zABAZSBt06 :2007/05/30(水) 20:50:41 ID:aGjfYhMH
凍える子供を暖めて腐られてしまい
仕方ないからスタッフが美味しく頂いた
僕は片目だけで世界を見て
ぼやけた輪郭線上に神を見つけた
そして後ろから異教徒に刺される
それは昨日の話
今日は今から終わりへと一歩進み
囲いが壊れて皆外に放り出された
世界に人が居なくなると
鎖に繋がれたままの子犬は尽く抵抗後に死んだ
猿は器用に鍵を解除して野に放たれ
鎖を引き千切った野獣のお腹に入った
囲いは相変らず壊れたままだ
たまに馬鹿が落ちるけれどそれなりに平和だ
いつも何かが腐っていく
今は鎖に繋がったままの子犬達
次は食べ残された猿だった物だろう
その内野獣同士の争いが始まる
そして腐っていく
囲いが壊れて落ちていく
残るのは生産者と分解者だけになって
平衡は意味を成さなくなる
かつて落ちた人類が残した建造物に蔓が延びる
空っぽな箱はすぐに潰される
土地は隙間無く木で埋め尽くされた
微生物は圧死した
何もかもが腐らなくなった
残った養分は吸い尽くした
木々は互いを貪りあった
生産者が消費者に変わった
囲いまで喰われた
そして世界は滑る様に落ちていった
843 ◆IBNectmOpk :2007/05/31(木) 21:58:50 ID:/UEV3YC1
 腕を広げて

誰かが話した寓話は
風説となって流布されていった
戦場で流された血は写真となり賞を取り
美術館に飾られて黄ばんでいった
掘り出して削りだした実感は流行歌となり
忘れられて百五円で叩き売られた
愛の言葉は午後十一時に囁かれて
午前七時には無かったことになった
慎み深い願いはわからない
誰にも知られることは無いと
老齢のシンガーが甘い声で歌う
テレビでは楽屋落ちが繰り返されていて
それを見て笑えずにスイッチを切った
お約束や前提を常に知っていなければ
面白さが分からない

勢力の拮抗は崩れない
けれど次の大戦が起これば
簡単に滅んでしまうと
ニュースには気分で脅される
昨日笑っていたクラスメイトに
明日完全に無視されるかもしれない
何十年か勤めた会社を一つのミスで
何一つ持たずに蹴り出されるかもしれない
他人から弄られて玩ばれて
変えられることが恐くてたまらない
人は簡単には死ねない
だけど簡単に死ねてしまう
死んだ後は盛大に弔われてから
時間をかけて巧妙に隠されていく
まるで最初から無かったかのように

失望の繰り返し
報われないことばかり
ずっと不思議だった
なぜあの人たちは
地雷原の中を楽しそうに歩いている
未来には保証なんて無いし
過去だって失意に満ちている

だけど不恰好でも
ああして腕を広げて
少しずつバランスをとって歩けている
それはそんな悪くないんだ
下手くそでも危うくとも
自分の足で歩いているから
悪くは無いんだ

そんだけなんだろう
たぶん
844 ◆zABAZSBt06 :2007/05/31(木) 22:46:46 ID:jDEHEfin
わかんないまま放って置いたら
不安定な地層が出来た
多分突けば崩れるだろう
絶妙なバランス感覚ともいえる

綱渡りの綱は緩んでいると渡れない
けれど完璧な綱は存在しない
いつも何となく緩んでいる気がして
足元がふらふらと怯えている

多分スピードの問題だ
要は流れにさえ乗れれば大丈夫
縄跳びの縄を飛ぶのと同じだ
でもいつも脛に赤い痕を残す

せーので飛び降りる
ぎりぎりが大好き
足に結ばれたゴムはいつの間にか劣化して
人の体は案外跳ねない事を身をもって知る

上手く責任を取れない
遠くまで渡れない
早く走れない
適切に加減できない

それでも生きている
それで良いやと思う

とりあえず顔歪ませよう

それを笑っている顔と間違われる
それで良いやと思う
845 ◆zABAZSBt06 :2007/06/01(金) 22:26:00 ID:BFd2qla8
凡人が本気になると何かを壊すんだ
天才が本気になると何かが壊れるんだ
しかし本気じゃ無ければ何も壊せない
お茶を濁して終わるだけ

泉の底の泥が水に混じり
酷い臭いを撒き散らして
水鳥は泥に羽を汚され
魚は視界を遮られて

迷惑なんだ

走れと急かされ続けて
けれどどこか冷めていて
それを気取られて
走らされ続けて
現状に疲れて
簡単に諦めて
いつの間にか褪めていて

壊せない
壊れない

殴るのも殴られるのも嫌なんだ
争うのも争われるのも嫌なんだ

傍観している第三者に憧れて
斜め上から自分を見下ろし続けてきた
後頭部から突き出たベットリした髪の束が
威嚇目的だといつからか気付いていた
846 ◆zABAZSBt06 :2007/06/01(金) 22:28:04 ID:BFd2qla8
今日出来ない事を
明日頑張ってみる
明後日はそれより高度な事に手を出してみたりする
けれどどれも未完成
それはそれで味がある
芸術は寛容
多分誰かが勘違いしてくれる

目なんて要らない
目的地は流れ着いた所で良い
ヤシの実に憧れる
未開の地に根を生やして
空の広さを感じる
でもそれは夢
夢は見る物
スクリーン上の物語と同じ
映画のヒーローは格好良く去っていく
その後は知らない

逃げるのは得意なんだ
目を背けるのはいつもの事だ
足を止めるのには慣れている
いつだって曖昧に笑っている

残り時間をいつも気にしている
時間が切れるまでは
精々ボロが出ない事を祈ろう
847 ◆zABAZSBt06 :2007/06/02(土) 01:44:33 ID:r1g+fQle
宇宙の乱雑さは増加し続けて
減少する事は無いという
ならば雲は拡散し続けて
やがて空はぼんやりと煤けるのだろう

真の青はくすみ
宇宙との輪郭を際立たせた月はぼやけ
生命を刺し殺す様な太陽の光は届く前に乱反射する

それはとても寂しい事だ

僕は空を眺めてきた
皆も空を眺めてきた

憧れを込め
恐れを込め
喜びを込め
怒りを込め
悲しみを込め
絶望を込め
感傷を込め
懐かしみを込め

空は僕を眺め返す
空も皆を眺め返す

有史以来
人は
発生以来
生物は

この空を眺める事から生きる事を始めた

地球を林檎に例えると皮にも満たない大気
奇跡にも等しい成分
僕らには当たり前の衣
包まれている事すら忘れかける

地表を母性とするなら
大気は父性なのだろう

常に守られている
だから安心している事すら忘れるのだ
そして外宇宙にロマンを感じる

母親からは離れたくて
父親を越えたくて

けれど最後は戻るのだろう

848 ◆IBNectmOpk :2007/06/04(月) 21:33:34 ID:Qj3sGWdW
 ハローハロー

君も僕も全てを知っていて
自らを呪ってみたり祝ってみたりする
確かめる過程の摩擦を
火花を散らし吐きだしたりする
石油をかぶった誰かが燃えないか
バカな心配しながら
二回の部屋から木の上から
鷹の目から衛生ひまわりから満月から
神の目線から宇宙の真理から
ハローハロー元気ですか

見下ろされた現実は
とてもちっぽけで
限りなく不恰好なもので
とても完璧にはなりえ無くて
欠けていて崩れだしてさえいる
空っ風が胸穴に吹いている

必死な姿は不細工だ
自分なんて塵のようだ
んでもそんなもんもはや関係ねえ
扉が閉ってたらぶっ壊してでも
出て行けばいい
迷うことはない
戦略などレトリックなど無くとも
頭が悪くなっていっても
ストレス解消に成り下がっていても
閃きなどとっくに無くとも

開けた青空にスモッグが覆っていても
ダイヤの壁が立ちふさがっても

例え
ベクトル変わっても懲りてたまるか
机の下から床のフローリングから
アスファルトから隠された土中から
モグラの毛穴から海底断層から
マントルの中から
粒子の表面から墓穴の中から
ハローハロー元気ですか
849 ◆IBNectmOpk :2007/06/04(月) 21:39:45 ID:Qj3sGWdW
 グッドファイト

潮風や汗で
ベトベトになった髪の毛に
少し焼けて赤くなった手
草臥れた情けない顔

徹夜明けで出た朝の庭に
昨日降った雨の粒が反射している
晴れた海岸のベンチで
見上げた空は黄砂に濁っていた
あの子と歩いた帰り道は
曇り空に虹が射して消えた

暗い夜道を傘もささずに
雨に打たれて
外気に静かに切り刻まれていく
疲労感と焦燥が残り
財布の金は残らなくても
百円パーキングの清算しながら
もう全部放り出したいと思っても

言葉を尽くしたって
僅かしか分かり合えないよ
思ったって同じだけ返ってはこないよ
きっと支えにはなれない
隣にただ居るだけ
今ならいつだって思い出せるよ
忘れたっていつかは
思い出せるかもしれないよ

溜息のように浮かんだ
グッドファイトの横文字
猫背で丸まった背中に胃痛
汗ばんでベトベトになった身体
ゆっくりと正面を見据えて
静かに家の方向へ帰る

ただ抜け殻のような残骸が
二つ虚しく笑いあっている
草臥れて情けない顔で笑って
少し焼けて赤くなった手を振るよ

いつだって進むか止まるか
それを決めるのは
僕だった
850 ◆IBNectmOpk :2007/06/05(火) 17:01:59 ID:iVTp9p8i
 暴力的な無機質さの中

長いトンネルはずっと続いていく
灰色のアスファルトに
骨まで透けそうなほど強い
白色のライトが等間隔で続いている

君には見えるかい
この穴ぐらの先の真っ暗な夜空が
どこまで行っても
同じ景色の先が

何車線もある広い道路を
流線型の車が速度を出して
次々に追い抜いていく

昇っているのだろうか
それとも落ちていっているのだろうか
ただ暴力的な無機質さの中を
淡々と進んでいっている
カーナビは壊れていて
さっきから何も映さない
速度計の針は振り切れたままだ

ねぇ 君よ
隣でそんなに泣かないで
いつかは抜けるんだ
だけどそれは今じゃない

五分ごとに通り過ぎる
読み取れないほど弾跡だらけの標識
半オートのハンドルを形だけ握っている
少し汗ばんだ両手

ねぇ もう泣かないで
その古い地図は捨ててしまいなよ
窓の僅かな隙間から捨てられた紙屑
思い思いに流れていき
後方へと消えた

僅かな高揚感だけを頼りに
微かな期待だけに寄り添って
この長いトンネルを
いつか抜けるまで
851 ◆IBNectmOpk :2007/06/07(木) 18:51:20 ID:2LjV799D
 保留

まだ
消える
元気が無いから
もう少し
保留ね

まだ
酔える
資格が
無いから
あと少し
待ってて

本気になるまで
想像できるまで
叶わぬ日まで

それまで
待ってて
852 ◆IBNectmOpk
 祈って

戻るには
遠すぎる

祈って
あと一回
立ち上がろう

先のことは
分からない

物語は
いつまでも
辻褄が合わない

理ではなく
感によって
紡がれていく

大きく
息継ぎして
もう一回
潜っていこう

祈って
それから
立ち上がり
歩いていく