だけどね 君よ
僕はもういい加減
耳を澄まそうと思うんだ
君だと思った声は
コンポから流れるギターノイズであり
何かの機械の駆動音なんだよ
風や木々の揺らめきであり
他人の他愛ない笑い声であり
脳と耳の誤作動なんだよ
今すぐにでも薬で散らせる程度の
他愛ない事象に過ぎないんだよ
本当は何もないんだよ
そう何もないんだ
ただ寂しげで自信なさげな男が
思春期を抜けて一人取り残されただけだ
君は存在しないんだよ
君はただの
僕の
存在の不確かさの証明
女達が痩せた顔と身体に寄ってきて
そしてすぐに見抜いて去っていった
形が欲しいなら幾らでも合わせよう
醜い本心なんて本当は求めてないだろ
事象の数倍の自意識
アンバランスに何時までも身悶える
自分の流儀でやりたいお姫様は
多分僕を深く傷つけるだけだろう
だけど それでも行こう
君の失礼なやり方に付き合おう
心を磨り潰す手伝いをしてくれ
人間の形をした皮の中で
拉げて砕けて軟体動物になり
ゲル状の中身から
赤い目を光らせている
彼女の繋いだ手へ
黄色い透明の液体が流れ込んでいく
どうせなら君が僕になればいいな
通り掛ったマンションの駐車場で
寄ってきた傷だらけの野良猫を撫でた
「病気持ってるかもな、きたねぇ」
そう言いながら
猫が満足するまで撫でた
ポケットのお菓子を欲しがっていたが
家に帰りつくまで気付けなかった
お願いだ お姫様
心を磨り潰す手伝いをしてくれ
お願いだ
恥を上塗る
なんか
かっこいいおれ
とかかくけど
ものすごいすべっている
ことにきづいたまよなか
われにかえってよみかえしたら
もはやぢすべりらんどすらいど
われにかえるのをえいえんにやめました
とりかえしつかねーだせーおれだせぇ
よむときはおんがくなどでじぶんをだましてください
たのむから
せきめんだけはすんな
わらってながせ
ばか
とにかくほんものは
りあるではめっちゃださい
のでまずい
でも
きをぬくとねっとではなるしすと
になるのでもっとまずいし
ちょーやばいです
けふの
おれにっきたいかいは
きたならしいえごいずむをはっさんしつくしたので
さいごにぎゃくぎれではじをうわぬって
おわり
まる ○
3点
時代の寵児
例えば
伝えなければ意味が無いとしても
伝えればどうしても傷を負うことがある
当初の予定とはだいぶ違ってしまって
多少暴力的で粗雑になっても
少々可笑しくなっていても
そこにまだ立っていられた
意味があるのか悩みながら
君は広がりきった時代の寵児
世界で一番
小さくて
細かくて
弱い部分から
いつも出発する
いつもその存在意義は
怠惰な虚無に押し切られかけて
土俵際で持ちこたえている
誰もいないのを見計らって
ロッカーを殴り閉める小心者
誰かに音が届くのを願って
君は緩みきった世界の王子
何度だって
視界で一番
優しくて
真っ当で
弱い部分から
出発し直そうぜ
ほら、ナイフを投げろよ
なぁに、上手く避けるさ
別に刺さっても問題ないのだけれどな
なぁ、いっそ刺してはくれまいか
ほら、その剣で貫けよ
なぁに、ちゃんと種も仕掛けも仕込んであるよ
別に好みを貫こうがも問題ないのだけれどな
なぁ、いっそ貫いてはくれないか
大きな玉の上で笑うのに飽きたんでな
誰一人許せないと思っていた
この意固地さ
いや ただの醜さが
君を驚かせてしまった
ため息を一つ吐いた
許容しよう
それは後退ではないと思うから
許せよ
詳細に検討して
そして信ずるに足る理由を見つけて
許すよ
みんな暇じゃない
君だってそうだろう多分
合わせ鏡のような人を見て
怯えるのはもう止そう
そこでの僕の演技は
とうに腐りきってしまった
潮時なのかもしれない
ため息を一つ吐いた
感じたもの全てに戸惑って
何一つ残らず叩き壊すか
頭を下げて過ぎ去るのを待った
誰一人許せないと思っていた僕は
許されるに値する人間ではない
そんなことは知っていた
とうの昔に
もう知っているんだよ
雲の上から零れ落ちる水滴が
くたびれたコートに吸い込まれる
体温が雨に奪われていく
骨の軋む音が聞える
震える指でマッチを何本も擦る
ずっと放って置いたからしけってしまったマッチ
何本も何本も折ってからやっと一本に火が灯る
それを雨が食べてしまった
ただ何と無く空を仰いだ
重みで垂れ下がり
落ちてきそうな雲
じくじくと膿んでいる
温度
存在
生命
何も感じない
雲が覆い尽くした
何もかも奪い去っていく
部屋が広すぎるから
僕は内と外がわからなくなった
窓の向こうから僕が覗いている
僕は僕を見返す
壁が崩れると
ただ白色の世界に独りだった
望めば何でも手に入った
同時に何も残らなかった
すぐ飽きてしまうんだ
だから壊してしまうんだ
遠くから笑い声が聞える
やつは僕だ
僕は誰だ
望めば誰にだってなれた
だから誰でもなくなった
乾く前に重ねていくから
ぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまった
皆が笑っている
返してくれ
それらは僕だ
本当に僕か
僕はなんだ
カーテンを閉め切った部屋で
目覚めた
午前十時
階下には誰もいない
曇り空から隙間に
光が差し込む
僅かな音階を呟いては
宙に消していく
腕で目をぬぐった
こんな僕に
君が見せてくれる幻は
いつまでつづくのかなぁ
そんな素敵なこと似合わない
自分のことはもう知ってる
そしてまた今
少し変わろうともしてる
汚い布団から立ち上がり
目薬を差してから
よろけながら
今日も台所に向かう
いつまで続くか分からないけど
いつか途切れた時には
その好意の記憶を
未来まで持って行くよ
斜めに傾いた世界から僕は外を眺める
薄い霧に包まれてぼやけた地平線
色褪せていく
街の中はギクシャクとした人々で溢れ
手足のピアノ線が天に伸びる
無声映画のように静かだ
それが僕には心地良い
皆が大袈裟なボディランゲージ
意味も判らずに笑顔を貼り付ける
見渡すと皆笑顔
皆わかっていないのだ
それで廻って行くなら結構な事だ
この喜劇の主人公は僕だ
同時に僕は一視聴者だ
運命や神や原作者に手足のピアノ線を引かれ
色褪せていく
顔に笑顔を貼り付ける
貼り付けられる
同じ事だ
そして僕は笑う
そして皆も笑う
皆わかっているのだ
それで廻って行くなら結構な事だ
防御反応を起こして
恥ずかしさから
素敵なことを捻じ曲げる
血豆がいくつも出来て血が滲むまで
壁を殴った
シャイなんだろう
そしてとても優しい君よ
何度もそれを繰り返して
とても小さくて狭いところに
押し込められてしまった
そこから動けなくなった
君のための場所はあるんだぜ
昔から知ってるだろう
無ければ作ることは許されてる
歌ったって別にいいんだぜ
伝えたって別にいいんだぜ
なんかある時
全部バカらしくなって
悩むのにも飽きてしまって
適当に戦略立てて歩き出せばいい
道中で愚図愚図情けなく愚痴りまくればいい
生きにくさはいつか
でたらめな戦略構想がたたって
何発も言葉の弾丸に撃たれたあげく
暴走して何度か煙をあげたあげく
自然と消えていくだろう
それでいい いつかそうなるように願う
僕は両手を空っぽにすると薄く笑う
重すぎる荷物は霧散した
自由なんて気取る事は出来ないが
それでも今は息をするのが楽だ
後ろから狼が言う
勘違いするな
お前にはいらない存在なのだ
それでも僕は笑う
始めからわかりきっている事だから
僕はなよなよした産毛だ
強く擦れる所には生えない
濃く太くならない
弱々しい産毛だ
軋轢に磨り潰されず
誰も気に掛けない
だから僕は生きていける
僕は狼を見返した
彼はその強さのためハンターに殺された
ハンターは僕には気付かない
僕の存在は意味をなさない
血溜の中に光る一対の眼が僕を映す
そこにいる僕は笑っている
空っぽに笑っている
そういう感覚だ
自己流快楽原則だ
脳内麻薬がでんだ
どっかのポップバンドに植えつけられたんだ
努力とかいうけど無理だ
自分の場所とかないんだ
いつも下向いちゃうんだ
そんで考えちゃうんだ
自分について
自分の部屋で
一通り悩めばいいだ
そんで飽きればいいだ
青空の下出かけて
一通り悩めばいいだ
そんで飽きればいいだ
人の中出かけて
一通り悩めばいいだ
そんで飽きればいいだ
あの時は青かったとか言えよおっさん
未来の俺よ
どんなに惨めな今でも
怠惰で真っ白な過去でも
全力でベストを尽くしてきた
その結果が現在
遺伝子の乗り物最高
当らなかったノストラダムス最高
基地外ワールド最高
もういいから幸せを述べさせろ
360度見回しても見えるのは
足跡を付けられ過ぎてカチカチの雪道
空と道は白く
境界は無い
何も見えないのと同じだ
道にはもう足跡は付かない
それが良い事なのか悪い事なのかはわからない
道標になりそうなものも無い
だから足元の先人の落し物を頼りに行く
進んでいる実感も無い
実は同じ所をグルグルと廻っているだけかもしれない
馬鹿馬鹿しい
止まって寝そべればそれで良い気がする
しかし常に後ろから離れない分身が背中を突く
これでは本体がどちらなのかわからない
俺は分身をどこかに運ぶ器なのだろうか
いや、分身自体が本体なのかもしれない
何が違うのだろう
何も変わらない
やれやれ、と
溜息を一つと小さな傷を
道に残して歩き出す。
エンドロールをスロー再生にして
バッドエンドの続きを期待してる
続編のコマーシャルを待ってた
ピーッ
予測ロスタイム五十年です
試合終了の判断は審判任せです
あぁ青春は
春風に吹かれて舞い上がって消えてしまった
そう思っていたら
桜の花びらと共に断片がハラハラと降ってきた
あなたが「綺麗」と呟いた
庭園の藤の蒼さに重なっていく
見つめる真ん丸な二重に
くすんだこの眼は相変わらず死んだままだけど
テーブルの対岸にある儚さを守るためなら
どんなことだってしたいと感じた
もう脇役でいい
噛ませ犬だって忠犬だって別にいい
苦い思い出になったってそれでいい
ピーッ 上手く倒れましたねぇ
ゴール前に選手が並びだしています
キッカーが鋭い眼でボールをセットし始めました
残りロスタイム四十九年です
エイリアンに壊滅させられた地球が爆発するのが
スロー再生で流れる銀幕の前を
二人の影がゆっくりと横切る
ロビーへと続くドアを押して
少しずつ光が漏れていく
なんで思い出して涙が出るのだろう
少し薄暗いカラオケで
十九のようにかわいらしく歌う君が
スローモーションで再生されて
瞬く間にセピア色になっていった
君はまだ夢を見ている
長い間幻にこもっていた
僕は幻を見破ることしか出来ない
夢を夢だとしか言えない
君と何一つ違わない
元ヒエラルキー上位の君は
昔の僕になんて興味ないかい
地続きで一通り味わったから
なんだか少し卑屈になるんだ
暗くなった帰り道
寄せてきた肩の感触を
まだ忘れていないよ
汗ばんだその手を思い出せるよ
君の伸ばしたその手を
僕はしっかりと握れているのだろうか
握り続けていられるのだろうか
僕ら十九の続きを始めよう
まるで喜劇作家の書いた純愛小説みたいな
滑稽で素敵な恋をしよう
橋の向こうにかかった大きな虹を
車の中の二人が見つめていた昨日
たった一つ
小さな亀裂がはしる
水はまだ漏れていない
どこかでの俺は誠実で強い
どこかでの俺は薄弱で脆い
どちらも濁りのない真実だ
綻びからばれなければいい
綻びを縫い続ければいい
あぁ
全部演じきってやろうじゃないか
全て手に入れてやろうじゃないか
本当に欲しいものばかりだ
今更迷うものか
我武者羅に出鱈目に進め
這いつくばって涙流して闘え
ストレスに吐きながら
弱音を吐きながら
生意気こきながら
言うだけならただだろう
言うだけなら虚だろう
恐れずに動け
やり遂げて
違う景色を見てやろう
矛盾したいくつかを
食い尽くして取り込んでやろう
有象無象の無理難題を
理路整然としたたった一つに
纏めあげてやる
男は影を残して歩き去った
影は歩き方さえ知らず
ただそこに貼りついていた
日光は少しずつ嫌らしい悪意を込めて影を焼き去る
薄れゆく心身
もがき這いずり逃げ惑う
遠くで男が影を見ている
その瞳に込められていた同情は何に対してのものだろう
男は可視光に貫かれて死んだ
影は裏路地に寄生した
コールタールの空気に肺を焼かれ
濁りきった油みたいな影が何重にもまとわりついて
影は醜く肥大していく
影は深淵の中
焼かれ死んだ男を見つめる
男は光の獄の中
汚く濁った影を見つめる
目の中に同情を満たし
ただ見つめる
冤罪の無い世界
先祖が犯した罪だとか
産まれた事の罪だとか
原罪だとか予防とか
兎にも角にも
何もしていないのに刑が下された
先が宇宙に続く階段を昇らされ続ける
寒さと空気の薄さで意識は銀河を離れていく
首に掛ける縄は未だ見えない
肉体は階段を昇り続ける
罪はいつ消えるのだろう
飛び去った意識は戻るのだろうか
多分戻らない
意識だけがやがて許されて
意識は輪廻を重ねる
肉体は階段を昇り続ける
罪はいつ消えるのだろう
やがて太陽に近づくと
肉体は焼け始める
それでも許されない
罪は消えない
首に掛ける縄は未だ見えない
灰になり昇れなくなる
首に掛ける縄は未だ見えない
太陽風が階段を駆け抜ける
首に掛ける縄は未だ見えない
肉体は四散した
縄を掛ける首が無くなってしまった
罪はいつ消えるのだろう
罪はいつ消えるのだろう
罪はいつ消えるのだろう
ライブハウス
天井に棲んでいであろう化物の類が
ノイズと共にその姿を僅かに可視化させたって
多分いつも通り僕は見逃すだろう
コンマで変わる体細胞の微細な変化が
身体を火照らせたり気持ち悪い表情をさせても
あなたは楽器さえ持っていれば
それほど悪くない記号として認識するだろう
これは余裕から出た皮肉
それとも切実さから出た祈り
どちらでもいいんだろう
どう受け取られても
音の響きさえ良ければいい
弾き方を間違えなければいい
あなたが痛みをどれだけ謳ったって
僕にはその深さは底知れない
僕が喜びをどれだけ詠ったって
あなたにはどこか痛々しくしか映らない
不器用すぎて表出した美しいオリジナリティを
人は詳細に分析して真似ようとするけれど
ドロボウだとあなたは言うけれど
中間点で作用している真実は誰も知らない
なぁ天井の化物よ
少しだけでいいから僕に宿ってくれないか
あげられるものはそんなにはないけれど
力を貸してくれよ
僕らの間にあるものを
掬い取って一緒に照らし出してくれよ
水際
幻は弾けたのだろうか
よくわからない
ゲームに付き合う気はない
その気力すらあまり無い
僕ら年を取ったんだ
僕ら大人になりそこなった
機械みたいな繰り返しで
子供のころも忘れていく
欲しがる素振りを忘れたから
ここまでどうにかなんとかなった
だけど君に手を伸ばそう
出来うる限り叫んでみよう
君も細い手を伸ばしてよ
でないと濁流に飲みこまれて
また遠ざかって消えてしまう
幻だとしても
泡のようだとして
もう諦めたくない
僕ら年を取ったんだ
僕ら大人になりそこなった
だけど
いつだってなれるのを知ってる
いつだって戻れるのを知ってる
もし手を繋いで飛び込めば
恐くもないし
簡単だから
ぎりぎりの水際で待つ
君が来るのをじっと待つ
オレンジの空に紺色が混ぜ込まれていく
僕は高台になっている土手を口笛を吹きながら歩く
右手には天井川がどっかり横たわっている
左手には古い街が川底よりも底に広がっている
川は遥か先で折れ曲がっていて
その先を高層化が進む街が覆い隠している
川の水は静かに止まっている様に見える
しかしクラゲみたいなビニールが前方からたゆたって来た事で
改めて流れている事を実感する
この川は昔はもっと曲がりくねっていた
人がそれを真っ直ぐに直した
街はそれによって発展した
人はそれによって増えた
しかし氾濫も増えた
それによる死者も増えた
人身御供は一文化となった
不況真っ只中のご時勢の為か
汚さを隠しすぎてしまった為か
昨今では募集人数が多くなってきているらしい
川底はもう辺りの闇を吸い込んで固体の様な黒さを放っている
そこに放置されている捧げられた者が遺した物が時折幽かな光を放つように反射する
川は穏やかにその光を吸い込み
穏やかに下流に流れ去る
街はぼんやりと一日を受け流す
明日も今日の様に茫洋とした物だと根拠無き確信を秘めて
彼らは川を忘れて生きている
川は彼らを見つめている
紺色の空に星が瞬く
僕は高台になっている土手を口笛を吹きながら歩く
右手には天井川がぽっかりと暗い穴を空けている
左手には古い街が灯火を弱弱しく灯し続けている
ノイズ
最初はただの気恥ずかしさだった
時が経つにつれて徐々に腐っていき
大きな捩れになっていった
つい先刻まで誰かが心の泉に手を突っ込んで
ネジをすこし回してやればいいだけだった
もう遅い
頭のおかしい素敵なハードコアバンドの映像を
頭のおかしい俺が深夜にもなろうとしている時に見た
才能にも容姿にも恵まれている人たちが
二千七年になってもまだ続けている
二千七年になって俺の眼に姿を現した
浪費だと大多数の誰かが言うだろう
必然だったと少数派の当人たちは言うだろう
捩れで立ち向かえ
運命に立ち向かえ
人の流れを変えろ人の流れに割り込め
捩れ自体がその人になり
捩れが業を決定付けた
選択肢は過去にはあった
過去の選択肢は凍結されて記憶の棚にキラキラ嫌味に光ったまま陳列されている
現在の選択肢は高そうな布に包まれて大事そうなフリをして渡される
目隠しをしよう目隠しをして適当にサイコロを振ろう
出た目は見ないで進み止まったマスのイベントをこなそう
繰り返しだサイは投げられた繰り返しだ
何もかも手遅れだ捩れた繰り返しのやり直しの捩れた繰り返しだ
捩れた焼きたてのパンを口に運ぶ
最初はただの気恥ずかしさだった
時が経つにつれて徐々に腐っていき
大きな捩れになっていった
つい先刻まで誰かが心の泉に手を突っ込んで
ネジをすこし回してやればいいだけだった
もう何もかも手遅れだ
ただの捩れた繰り返しの結果が表出した二千七年五月一日
ビデオに映った女の人は
淋しそうな満足そうな顔して叫ぶ
何もかももうすでに遅い
待つ間
冗談みたいに冗長な君は
泣きついた皮肉を華麗にかわした
ずっと思っていたんだ
波紋はすぐに広がっていって
何もかも簡単に壊れてしまう
間違っていたのかな
騙されているのかな
君が知りたい
君のことをもっとよく知りたい
お姫様は幻の中を生きている
だけどそれは
誰もが羨む様な物語で彩られてる
幸せな沢山の嘘に守られている
僅かに横切る暗い影も
君は強さに変えるのだろうか
幻を纏うことさえ
人間の形さえ忘れてしまった
黄色く濁った液状生物は
救われることを夢想してしまうよ
冗談みたいに冗長な君よ
良ければ物語に加えてくれないか
君が言うような人では無いけれど
役柄を与えて欲しいんだ
王子で無くてかまわない
騎士でなくたっていいから
君が役名をつけて欲しいんだ
その名前を呼んで欲しいんだ
ドラマクイーン
嘆いとけばハズレは無い
そうダサくもない
かっこわるくもない
僕らロマンチストなペシミスト
日常には何にも起こらなくて
過剰で余剰な自意識を
ただ嘆きへと転化している
くだらない足掻きを続けている
颯爽と歩く窓外の他人を
とても不安定なものだと
見ていたけれど
本当に崩れそうなのは
まともに動けず風化していく自ら
眺めている素敵な人たちは
小さな積み重ねを続けて
ここまで来たよ
二度目の奇跡を待ち続ける
僕には望みようが無いぜ
君はかわいいドラマクイーン
毎日をメロドラマにしようと
考えすぎて動きすぎて
ただ消耗していくよ
空想を現実に適用して
身を持ち崩していくよ
必要な言葉はシンプルで
あとはタイミング次第
過大な自意識を伝えようとする
僕にはできようがないぜ
あぁ 何も起こってないのさ
ただ待てばいいさ
君に会えないからって
計画通りいかないからって
胃を悪くするほど考えることはない
ピート・タウンゼント
早すぎたパンクアティテュードは腐った
誰一人許さないといった果てに
捩れて生き続けて醜くなり
カート・コバーンに否定された
ピート・タウンゼント
日常なんて知っている
毎日どう暮らせばいいか分かっている
自分の分なんて中学で大体分かる
でも飽きたんだ
むかつくんだ
嫌いなんだ
勝手にやりたいんだ
都合の悪いことは知りたくないんだ
どうしようもない落伍者達
自意識が君を腐らせて
パンダみたいなメイクしても
ゾンビみたいに醜くなっても
汚くあがき続けている
カート・コバーンが
禿げもせず体系を完全に崩すことも無く
才能が枯れる前に時代に見放される前に
三十にもならないうちに死に伝説化し
それでも児童ポルノで捕まっても
クソジジイは相変わらずギターをぶっ壊し続けている
フーのアルバムなんて一枚目しか持ってない
デブって禿げて老けて耳が悪くなり枯れて
過去の栄光で金も名誉もあるあんたなんて好きでもなんでもない
だけどそれでいいんだろう
結果的に悪くないように思える
誰一人許せないと思っていた僕は
許されるに値する人間ではない
そんなことは知っていた
とうの昔に
もう知っているんだよ
リプライズ
体育座り
孤独
四畳半
宇宙
四次元
黒ブチ眼鏡
蛍光灯
窓
田圃
レール
汽笛
畳
嫌な思い出
無地のシャツ
裸足
裾直し
ジーンズ
ブラウン管
隈のある顔
街灯
網戸
羽虫
掛け時計
ドアの鍵
流れ星
未来
微かな高揚
晴れた夜空
大の字
深爪した指先
途切れない期待
拡散していく意識
階下からの呼び声
落ちない夕日
どこか身の固い風体
その緊張した面持ちの
表面に貼りついた過去の栄光
無邪気な子供時代の輝き
中学生みたいな可愛いプライド
優しかった誰かが
空き地で遊んでいた友達が
そこに置き忘れていったようで
誰もが去ったあともずっと
落ちない夕日を眺め続けている
僕の最新型のやり方は
十年も前にみんなが見限ったパターン
君の大事な熊の人形は
夢の島で夜な夜な群れを成してる
公園の中には
外の人たちの知らない僕らが居て
夕焼けが貼りついたプラネタリウムの外
触れられなかったものがあるはずだ
いつだって
一人で大丈夫だという顔して
誰かの手を簡単に離して
愛想笑いで遠ざかっていった
自分の大事な砂城を
崩れないように水で固め続けた
だけど知らない誰かが
何度も簡単に踏み壊すんだ
本当は夢から覚めていたのに
壁画に飽きてしまっていたのに
気づかない振りをずっとしていた
必死で遊具で遊ぼうとしていた
あの空の錆びた長方形の切れ目から
取っ手の付いた夕日から
今日出て行くつもり
明日になったら
満天の星空を
昇る朝日を
雲一つない空に仰ぎながら
きっと外にいるよ
生まれ 育ち 朽ち
規則正しくたゆたう
無色の炎
天体を燃やして赤く染める
輝きは失せ
残留物が固まり
そこからまた生まれる
繰り返される
少しずつ劣化していく
無色に色が混じり
単色光がプリズムに別れる
そしてまた単一色に還る
レコードの溝が深まり
やがて音が飛ぶ
時間が同じ所を何度もすり潰す
剥ぎ取られていく
色が消え音が消え運動が消えやがて境界が消える
それさえも燃やされていく
ブスブスと盛大に煙を吐き出す
それもやがて焼き尽くされる
そこからまた生まれる
繰り返される
加速度的に劣化していく
混ざり過ぎて単一色に見える
それは燃えなかった
炎が消えた
色が無くなる
無くなる
キモイアウトサイダー
キモイ
すれ違いざまに吐き捨てられた
キモイ
人はみな平等さ
キモイ
君の世界に僕は入れない
キモイ
僕を認めたら君が変わるから
狭い世界が壊れるから
キモイ
情報は瞬時に切り捨てられた
いや
絶対あと引いてるよな
納豆みたいに
ネバネバっと臭いつきでさ
僕はキモイアウトサイダー
君の世界の外で生きてる
言葉責めに火照ってる
真面目に傷つくの飽きたんだ
世界はいくつもの自分を映す
全てを包括することはできない
悪くない姿を信じるよ
僕はキモイアウトサイダー
ヌラヌラぐちょぐちょと見っとも無く
幾重にもなった通行人の
硬質の自我の上滑ってく
僕はキモイアウトサイダー
どっかで人の形になって
君の隣に居るかもしれない
そう悪くない容姿と中身で
使命
夜道を進んでいく途中
似たような人に出会い
少しだけ一緒に歩いて
お互い別れも告げず
道を違えた
気づいて辺りを見回しても
延々と続く両脇の街灯が
一本のアスファルト道と
周囲の暗い森を照らし出す
そんな光景を
何度も繰り返す
偶然だったんだろうけれど
必然だったのかもしれない
引き合わせる何かが
あったのかもしれない
余りに嘆くもんだから
その何かが同情して
幻を見せてくれたのかもしれない
君に対する僕の使命は
呆気なく終わってしまった
必死な演技と
恥ずかしい勘違いと
幸せな言葉を幾つも残して
僅かな間ありがとう
弱く儚く気高い人
合わせ鏡のような貴女
別れも告げずに
行くよ
求めている物が知覚の外に在る物だから
探している振りしかできない
輪郭を錯覚して
無い物を見つけた気がした
止まっているのに周りが蠢いている
目が廻って膝を着く
掌で顔を覆うと世界は無くなって
分け隔てていた壁の一部になった
いつのまにか包み込まれていた
それは優しく殺していく
そして暖かく消化していく
でもそれは内側で風を吹かせた
それはただ痛い
そしてただ冷たい
終わりが曖昧だから耐えられない
救いは信じなければ訪れない
やがて切り刻まれる事に疲れて
何かを信じる事を始める
自分も何かを包み込む時が来る
それで優しく殺すだろう
そして暖かく吸収するだろう
内外を満たされ境界に立たされた時
求めた物は手の内に在るのだろか
愛している
苔生した大きな身体を揺らしながら
黄色い小鳥を何匹もその広い肩に乗せて
木が茂り森になったコンクリートを
歩いている彼の目は優しい
人は跡形もなく絶滅した地表を
伝説上の生物達が歩く
海の底のアスファルトを
ひび割れたビルディングを潜りながら
曲がった角を堂々と突き出して
泳ぐ彼女へと陽光が照らす
戦争が起こり隕石が降った世界を
灰が包みそして空が現れ
氷が張りやがて融けていき
時間が癒して形を変えていく
シェルターからの祈りは届かなかった
全てを包括する神は現れない
エイリアンすら降りてこない
幾人もの先人が言った
最初に全て持っていて
そして殆ど無くしていく
それは幸せなことじゃないのか
やがて何万年か経ち
進化した猿の骨を博物館に貯めこみながら
地下建築物発掘のゾンビを飾りながら
同じ事を違う姿で嘆く
僕が居た
手に取った
割れた記憶媒体から読み取った
文字は「生まれ変わっても愛している」
とだけ読めた
ゴミ箱に投げようとして
止めて
ポケットに入れる
今欲しい物はイカロスの羽
蝋で作られた偽りの羽
それで飛んだ所で
行くべき所は見えない
ただの暇潰し
広がるようで狭められている
逃走経路は無い
闘争本能も無い
従順になれば
後は後ろから蹴られるのを待つだけ
紐もパラシュートも無い降下
一瞬を煌けなんて今時J-popだって歌わない
ただ無様に地に落ちて破裂する
その血塗られた地上絵は
遠くから見れば花に見えなくも無い
透き通る羽
鉄格子から漏れ出る光に
透き通る羽を眺めて
残りの人生過ごすのも
たぶんそう悪くない
それは不幸せだが
とても幸せな筈だ
幻想に塗れた頭を盾に
毎日を規則正しく
至極真っ当に過ごしている
何一つ起こらない
求めれば血を吐くが
求めなければ骨すら溶けていく
いつからここにいる
刑期は何年だ
念じれば壁は破れるか
思えば鍵が手元にあるか
親指と人差し指で摘んだ
その美しい羽が
他人には見えなくとも
それはお前の大事なものだ
吐きつくして溶けつくし
肉体すら何れなくしても
羽を眺め続けていた
鉄格子から漏れ出る光は
太陽がなくなっても永遠に
彼を照らし続けた
コスモポリタン
鼓膜と網膜を覆っている
ノイズが気まぐれに消えた時
孤独だった
ベットから這い出て
晴れた夜空に月を仰いだとても寒い夜
つけっぱなしのテレビで砂嵐混じりに
親殺しの少年のニュースが流れていて
何一つ共感できなかった
大人になったのだろうか
オイルを垂らしながら
ジャングルを歩く彼が観止めたものは
咲き誇る熱帯花だった
メモリにその光景を保存して
最後の力で熱帯林の隙間から
高空に信号花火を放った
プツッ と全動力が落ちてから
長い時間が経つ
錆びついたショットガン
木の下に横たわった身体
動かない瞳は曇りのない
星空をずっと見据えていた
二つの衛生と太陽がそれを見守り続ける
草が生えて蔦に絡まれチタン合金の身体は
森に取り込まれていった
生まれた場所は遥か遠い
二度と彼は見つけられはしないだろう
ハッピーバースデイ
葬式はめんどい
金もかかる
ついでに
当てつけでやるには悲しすぎる
何度か救いを挿みながら転落を続けた後
必死に低い位置へと這い上がる
本当にくだらないものをいくつか
間抜けにも誇らしげに抱えて
ハッピーバースデイ
四分の一は失敗確定
破れかぶれでいいから
楽しめ
乱視でぼやけた夜空に
唯一の人工物であるこの部屋に
荒野と静かに打ち寄せる海の殺風景な景色に
飽きたら
寝てしまおう
ハッピーバースデー
トゥーユー
選ぶ事が難しすぎて
そのまま外に飛び出す事を選択した
問題は追いかけては来なかったけれど
制限時間には間に合わなくなった
タイムマシンからみすぼらしい老人が降りてきて
五月蝿く付き纏うから近くに落ちてた石で殴り殺す事を選択した
閉じる事は意外に簡単だ
再び開ける予定が無いからかもしれない
道端にタンポポが咲いていた
まばたきの間にワタボウシに変わった
それは風の中に拡散して消えた
一つ一つが可能性の塊
一つ一つが選択肢の塊
吐き気がして下向きつつ彼らの成功を祈る
しかしハッピーエンドに届く種は一つも無いだろう
一つの種が髪の毛にくっ付いた。
払うと綿が取れて種はアスファルトに落ちて砕けた
彼は選択を誤った
そのせいで死んだ
僕も選択を誤った
そのせいで殺した
それが結果だった
神はその結果をメモすると
また始めからやり直す為にリセットボタンを押した
枝線
霧がかかっていて
不安定で
頭は濁っていて
何度も殴られたようで
茹だる様な湿気でベトベトで
コンポからグシャグシャのノイズが流れる
このパターンは間違っている
このやり方はきっと違う
パラレルワールドの枝線に迷い込む
きっと間違ったのだけれど
口元が緩むのが抑えきれない
原因が不幸せでも幸せでももうかまわない
泥濘にぶっ転んで這い出て
灰の中を走りきって
土砂降りの中を進んで
ぐしゃぐしゃになりながら
涙腺が枯れてしまうまで
みっともなく走り続けて
明後日の方向へ
暗い森へ
深い海へ
人中の孤独へ
思索の迷路へ
四面楚歌の退路へ
誰かの罠の中へ
枝分かれした廃線へ
岩だらけの崖の下へ
早く流れる嵐の河へ
コンパスの効かない場所へ
愛のない場所へ
愛のある場所へ
嘲笑い声の中へ
誰かの手の中へ
母の胎内へ
父のあの日の拳へ
あの子の身体のラインへ
誰かの肌の感触へ
汚れた瞳の中へ
濁りを潜り抜けた先へ
くだらなくてつまらなくて
どうしようもなくて酷すぎて
時に言いようもなく美しくて
他人の代わりで
自分一人のもので
最低で最高な
どうせ何一つ出来ない
きっと明日も酷いだろう
過ちは二度と取り返せない
そしてずっと忘れられない
この先に何が待っているのかは知らない
けれど口元が緩むのが抑えきれない
ようやくぶっ壊れたのかもしれない
行こう
通り雨が明けた空
雲の切れ目から
光と水が天までの階段を作る
それは淡く脆く
何処までも続いている
それを昇っていく人が見える
僕はただ見送る
まばたきの間ほどの瞬間
彼はこちらを振り返った気がした
やがて光が強くなり
階段は拡散して消滅する
僕は気が付くと手を伸ばしていた
触れる物は何も無かった
まだ許されていない
突き刺さる強烈の光が世界を照らす
それは少し暴力的過ぎるから
僕は遮光カーテンを閉める
無彩色の人口光が照らす体は死体の様に白い
それは冷たい蜥蜴の腹を思い出させた
要らない記憶だけが染み付いて
吐き出す情報は喉の震えに意味を剥ぎ取られた
涙は流さない
それは許されていない
何も無い事がこんなにも苦しい
息も出来ないほど硬く体を抱きしめ
僕は小さく蹲る
時間は何度も繰り返され
その度に体が欠けていく様な気がした
音の無い無機質の部屋の中
無声映画の様な世界
母親は僕に向かい口を動かす
手を伸ばせば届く距離に父親がいる
今掴めば許されるかも知れない
けれども
蹲る事しか出来ない
カーテンの隙間から流れ込む光が
床に血の零れた様な模様を見せる
そっとカーテンを開けると
世界は今日流された血で濡れそぼっていた
凍える子供を暖めて腐られてしまい
仕方ないからスタッフが美味しく頂いた
僕は片目だけで世界を見て
ぼやけた輪郭線上に神を見つけた
そして後ろから異教徒に刺される
それは昨日の話
今日は今から終わりへと一歩進み
囲いが壊れて皆外に放り出された
世界に人が居なくなると
鎖に繋がれたままの子犬は尽く抵抗後に死んだ
猿は器用に鍵を解除して野に放たれ
鎖を引き千切った野獣のお腹に入った
囲いは相変らず壊れたままだ
たまに馬鹿が落ちるけれどそれなりに平和だ
いつも何かが腐っていく
今は鎖に繋がったままの子犬達
次は食べ残された猿だった物だろう
その内野獣同士の争いが始まる
そして腐っていく
囲いが壊れて落ちていく
残るのは生産者と分解者だけになって
平衡は意味を成さなくなる
かつて落ちた人類が残した建造物に蔓が延びる
空っぽな箱はすぐに潰される
土地は隙間無く木で埋め尽くされた
微生物は圧死した
何もかもが腐らなくなった
残った養分は吸い尽くした
木々は互いを貪りあった
生産者が消費者に変わった
囲いまで喰われた
そして世界は滑る様に落ちていった
腕を広げて
誰かが話した寓話は
風説となって流布されていった
戦場で流された血は写真となり賞を取り
美術館に飾られて黄ばんでいった
掘り出して削りだした実感は流行歌となり
忘れられて百五円で叩き売られた
愛の言葉は午後十一時に囁かれて
午前七時には無かったことになった
慎み深い願いはわからない
誰にも知られることは無いと
老齢のシンガーが甘い声で歌う
テレビでは楽屋落ちが繰り返されていて
それを見て笑えずにスイッチを切った
お約束や前提を常に知っていなければ
面白さが分からない
勢力の拮抗は崩れない
けれど次の大戦が起これば
簡単に滅んでしまうと
ニュースには気分で脅される
昨日笑っていたクラスメイトに
明日完全に無視されるかもしれない
何十年か勤めた会社を一つのミスで
何一つ持たずに蹴り出されるかもしれない
他人から弄られて玩ばれて
変えられることが恐くてたまらない
人は簡単には死ねない
だけど簡単に死ねてしまう
死んだ後は盛大に弔われてから
時間をかけて巧妙に隠されていく
まるで最初から無かったかのように
失望の繰り返し
報われないことばかり
ずっと不思議だった
なぜあの人たちは
地雷原の中を楽しそうに歩いている
未来には保証なんて無いし
過去だって失意に満ちている
だけど不恰好でも
ああして腕を広げて
少しずつバランスをとって歩けている
それはそんな悪くないんだ
下手くそでも危うくとも
自分の足で歩いているから
悪くは無いんだ
そんだけなんだろう
たぶん
わかんないまま放って置いたら
不安定な地層が出来た
多分突けば崩れるだろう
絶妙なバランス感覚ともいえる
綱渡りの綱は緩んでいると渡れない
けれど完璧な綱は存在しない
いつも何となく緩んでいる気がして
足元がふらふらと怯えている
多分スピードの問題だ
要は流れにさえ乗れれば大丈夫
縄跳びの縄を飛ぶのと同じだ
でもいつも脛に赤い痕を残す
せーので飛び降りる
ぎりぎりが大好き
足に結ばれたゴムはいつの間にか劣化して
人の体は案外跳ねない事を身をもって知る
上手く責任を取れない
遠くまで渡れない
早く走れない
適切に加減できない
それでも生きている
それで良いやと思う
とりあえず顔歪ませよう
それを笑っている顔と間違われる
それで良いやと思う
凡人が本気になると何かを壊すんだ
天才が本気になると何かが壊れるんだ
しかし本気じゃ無ければ何も壊せない
お茶を濁して終わるだけ
泉の底の泥が水に混じり
酷い臭いを撒き散らして
水鳥は泥に羽を汚され
魚は視界を遮られて
迷惑なんだ
走れと急かされ続けて
けれどどこか冷めていて
それを気取られて
走らされ続けて
現状に疲れて
簡単に諦めて
いつの間にか褪めていて
壊せない
壊れない
殴るのも殴られるのも嫌なんだ
争うのも争われるのも嫌なんだ
傍観している第三者に憧れて
斜め上から自分を見下ろし続けてきた
後頭部から突き出たベットリした髪の束が
威嚇目的だといつからか気付いていた
今日出来ない事を
明日頑張ってみる
明後日はそれより高度な事に手を出してみたりする
けれどどれも未完成
それはそれで味がある
芸術は寛容
多分誰かが勘違いしてくれる
目なんて要らない
目的地は流れ着いた所で良い
ヤシの実に憧れる
未開の地に根を生やして
空の広さを感じる
でもそれは夢
夢は見る物
スクリーン上の物語と同じ
映画のヒーローは格好良く去っていく
その後は知らない
逃げるのは得意なんだ
目を背けるのはいつもの事だ
足を止めるのには慣れている
いつだって曖昧に笑っている
残り時間をいつも気にしている
時間が切れるまでは
精々ボロが出ない事を祈ろう
宇宙の乱雑さは増加し続けて
減少する事は無いという
ならば雲は拡散し続けて
やがて空はぼんやりと煤けるのだろう
真の青はくすみ
宇宙との輪郭を際立たせた月はぼやけ
生命を刺し殺す様な太陽の光は届く前に乱反射する
それはとても寂しい事だ
僕は空を眺めてきた
皆も空を眺めてきた
憧れを込め
恐れを込め
喜びを込め
怒りを込め
悲しみを込め
絶望を込め
感傷を込め
懐かしみを込め
空は僕を眺め返す
空も皆を眺め返す
有史以来
人は
発生以来
生物は
この空を眺める事から生きる事を始めた
地球を林檎に例えると皮にも満たない大気
奇跡にも等しい成分
僕らには当たり前の衣
包まれている事すら忘れかける
地表を母性とするなら
大気は父性なのだろう
常に守られている
だから安心している事すら忘れるのだ
そして外宇宙にロマンを感じる
母親からは離れたくて
父親を越えたくて
けれど最後は戻るのだろう
ハローハロー
君も僕も全てを知っていて
自らを呪ってみたり祝ってみたりする
確かめる過程の摩擦を
火花を散らし吐きだしたりする
石油をかぶった誰かが燃えないか
バカな心配しながら
二回の部屋から木の上から
鷹の目から衛生ひまわりから満月から
神の目線から宇宙の真理から
ハローハロー元気ですか
見下ろされた現実は
とてもちっぽけで
限りなく不恰好なもので
とても完璧にはなりえ無くて
欠けていて崩れだしてさえいる
空っ風が胸穴に吹いている
必死な姿は不細工だ
自分なんて塵のようだ
んでもそんなもんもはや関係ねえ
扉が閉ってたらぶっ壊してでも
出て行けばいい
迷うことはない
戦略などレトリックなど無くとも
頭が悪くなっていっても
ストレス解消に成り下がっていても
閃きなどとっくに無くとも
開けた青空にスモッグが覆っていても
ダイヤの壁が立ちふさがっても
例え
ベクトル変わっても懲りてたまるか
机の下から床のフローリングから
アスファルトから隠された土中から
モグラの毛穴から海底断層から
マントルの中から
粒子の表面から墓穴の中から
ハローハロー元気ですか
グッドファイト
潮風や汗で
ベトベトになった髪の毛に
少し焼けて赤くなった手
草臥れた情けない顔
徹夜明けで出た朝の庭に
昨日降った雨の粒が反射している
晴れた海岸のベンチで
見上げた空は黄砂に濁っていた
あの子と歩いた帰り道は
曇り空に虹が射して消えた
暗い夜道を傘もささずに
雨に打たれて
外気に静かに切り刻まれていく
疲労感と焦燥が残り
財布の金は残らなくても
百円パーキングの清算しながら
もう全部放り出したいと思っても
言葉を尽くしたって
僅かしか分かり合えないよ
思ったって同じだけ返ってはこないよ
きっと支えにはなれない
隣にただ居るだけ
今ならいつだって思い出せるよ
忘れたっていつかは
思い出せるかもしれないよ
溜息のように浮かんだ
グッドファイトの横文字
猫背で丸まった背中に胃痛
汗ばんでベトベトになった身体
ゆっくりと正面を見据えて
静かに家の方向へ帰る
ただ抜け殻のような残骸が
二つ虚しく笑いあっている
草臥れて情けない顔で笑って
少し焼けて赤くなった手を振るよ
いつだって進むか止まるか
それを決めるのは
僕だった
暴力的な無機質さの中
長いトンネルはずっと続いていく
灰色のアスファルトに
骨まで透けそうなほど強い
白色のライトが等間隔で続いている
君には見えるかい
この穴ぐらの先の真っ暗な夜空が
どこまで行っても
同じ景色の先が
何車線もある広い道路を
流線型の車が速度を出して
次々に追い抜いていく
昇っているのだろうか
それとも落ちていっているのだろうか
ただ暴力的な無機質さの中を
淡々と進んでいっている
カーナビは壊れていて
さっきから何も映さない
速度計の針は振り切れたままだ
ねぇ 君よ
隣でそんなに泣かないで
いつかは抜けるんだ
だけどそれは今じゃない
五分ごとに通り過ぎる
読み取れないほど弾跡だらけの標識
半オートのハンドルを形だけ握っている
少し汗ばんだ両手
ねぇ もう泣かないで
その古い地図は捨ててしまいなよ
窓の僅かな隙間から捨てられた紙屑
思い思いに流れていき
後方へと消えた
僅かな高揚感だけを頼りに
微かな期待だけに寄り添って
この長いトンネルを
いつか抜けるまで
保留
まだ
消える
元気が無いから
もう少し
保留ね
まだ
酔える
資格が
無いから
あと少し
待ってて
本気になるまで
想像できるまで
叶わぬ日まで
それまで
待ってて
祈って
戻るには
遠すぎる
祈って
あと一回
立ち上がろう
先のことは
分からない
物語は
いつまでも
辻褄が合わない
理ではなく
感によって
紡がれていく
大きく
息継ぎして
もう一回
潜っていこう
祈って
それから
立ち上がり
歩いていく