自分のためだけに、詩を書いてください。
「今まで、ありがとう。僕はもう君のことを忘れてしまうけど
君への感謝の気持ちだけは、ずっとずっと、忘れない」
[ 海に溶ける ]
黒い塩水が頭上から降り注ぐ日の光を吸収している。細かな気泡
がまるで生命のある無数の生き物の群れのように、連なりながら水
面へと昇っていった。
私は沈んでいく準備をしている。その事実を、少し悲しい気持ちで
考えた。明るくて暖かい場所に居ることに、余りにも慣れてしまって
いた。戻れなくなるのが怖い。今更ながら、そう強く感じるのだった。
海底を向いている足元だけ、やけに水温が低いような気がした。
日の光が恋しい。水面を見上げる。あの温度が、煌きこそが、私を
世界のある一点に位置付けてくれる唯一のものだった。
きれいだな。私の心の中にある、まだ暖かい一部分が無邪気に
そんな感想を漏らした、一瞬。私はそれを裏切って、ガイドロープ
から手を離した。
仰向けに、ゆっくりと、私は落ちていく。海の底へ。
望んでいた自由と引き換えに、私の心は芯まで凍りついてしまっ
た。そんな気がした。
水温は、もう気のせいではなく、どんどん下がっている−−
わ!お久しぶり。元気だった?
驚いたよ。本当に久しぶりだね。
こっちは相変わらず。
元気だけど、中途半端な生き方をしている。
普通に越したことはない、と言えば、それはそうだけど。
あなたはきっと、色々変わったんだろうと予想しているよ。
敢えてそれを教えて欲しいとは言わないけど。
とにかく、また話せて嬉しいよ。
そしてできれば、今後ともよろしくね。
レスさんきゅ。
5年ぶりだね。私も驚いたよ。
いかしたスレタイだな。と思って覗いたら君だったから!
とりあえず生存確認出来て、ほっとしたわよw
私は少し、たくましくなったかもなあ?
相変わらずフラフラ生きてるけど・・・。
いきなり、懐かしの雑談にしちゃってごめんね。
ここで話もなんだし、良かったらメールしてきて。
アドレス変わってるから載せておくね。
ではでは。
[見つめる]
智慧を抱けば抱くほど欲望は無くなる。
言い換えると、正しくものを見れば見るほど世界は鮮やかさを失っていくということだ。
確かに、肉を食うために人を殴る必要が無くなるのは良いことかも知れないが
その為に肉の味まで忘れる必要があるのか。
完全に無欲な人間にとっての救いは死、その他にはありはしないのではないか。
だがそれすら望まない、というのならその人間を果たしてまだ人間と呼びうるのか。
機械。魂とは混沌に満ちた自分を見つめ続ける不思議そのもののことを言うんだ。
賢くなる。文字を読み、また何か知ったつもりになる。もちろん
学びうる知識に限界があるというのは形而上の話で実際にそこに辿り着くものは居ない。
けれど確実に少しずつ剥離していく自分の中の魂と機械を見つめるのがあなたには苦痛ではないのか。
賢くなる。また文字を読み、着実に安心できるようになる。だけど
その度に、視界から抜け落ちていく鮮やかな色彩は適当な代償と言えるのか。
機械。魂とは
混沌で満たされた自分自信の器を
見つめる
不思議そのもののことを言うんだ。
[機械]
仕事から帰る。部屋には誰も居ない。テレビを付けたままシャワーを浴びる。
コンビニで買った弁当を食べながらネットを巡回する。疲労を覚える。
ベッドに横たわる。悪夢を見る。眼が覚めると頭痛がする。鼻血が出ている。
不思議だ。一体何が足りないのだろう?
バス一本で仕事場に着く。パソコンのモニターを眺めながら世間話をする。
昼食はやはりコンビニで買う。レジの横に並んでいたサプリメントを手に取る。
仕事から帰る。誰も居ない。シャワーを浴びた後コンビニ弁当とサプリメントを
喉に流し込む。効果はすぐには感じられない。疲労を覚える。
ベッドに横たわり悪夢を見る。眼が覚めると頭痛がして鼻血が出る。
不思議だ。一体何が、足りないのだろう?
バス一本で仕事場に着くはずの道のりを遠回りして少し歩いてみる。
パソコンのモニターを眺め昼食はやはりコンビニで買う。疲労を覚える。
仕事から帰りシャワーを浴びる。コンビニ弁当とサプリメントを
喉に流し込んでからベッドに横たわる。
悪夢を見る。頭痛がして眼が覚め鼻血が出る。
不思議だ。一体何が足りないのだろうか?
バス一本で仕事場に着き疲労を覚える。仕事から帰りコンビニ弁当と
サプリメントを流し込んで横たわる。悪夢を見る。頭痛がして眼が覚め、鼻血が出る。
バス一本で仕事場に着き仕事から帰りサプリメントを流し込んで横たわる。
悪夢を見る。頭痛がして眼が覚め、鼻血が出る。
悪夢を見る。頭痛がして眼が覚め。鼻血が出る。
悪夢を見る。頭痛がして眼が覚め。鼻血が出る。
不思議だ。僕には一体、一体何が足りないというのだろうか?
[心臓のみる夢]
星降る夜。僕は大きく口を開けて、地上に降り注ぐ金色の星のつぶてを待ち受けている。
赤い舌の上に広がった真っ暗な新しい夜を目指して、大きな流れ星がひとつ、元気良く落ちてきた。
星は柔らかくとがった五つの先端をごろごろとあちこちにぶつけながら、喉の奥を下っていく。
堅い鎖骨に衝突してひときわ大きくジャンプしたかと思うと、肺をぶち破ってぐっさりと心臓に突き刺さった。
まるでほろ苦いクッキーを乗せた特大のアイスクリームが溶けていくみたいに、心臓からは
どく、どくと血があふれて、みるみるうちに大きな川になった。とろとろと穏やかに流れていく
真っ赤な川の上に、数えきれないほどの小さな星屑がきらきら、ゆらゆらと漂っていた。
その川の上を木でできた小舟が行く。小舟の上では一人のアジアの人が、雨除けの傘の中に
深々と顔を隠したまま、長い木の棒で舵を取っている。不思議なことに、小船は他の乗客は
もちろん、荷物ひとつ運んでいないのだった。
「あなたは船頭さんでしょう。だから、例え小舟に乗る人が居なくても、乗せる荷物がなかったとしても、
そうして船を漕いでいかなければならないんだ」僕は大声で、川岸から小舟の上の人に尋ねた。
小舟の上の人は、僕の声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、一度だけ傘の下から優しそうな
口元を覗かせて、にっこりとこちらに向かってほほえんだ。
そして、赤い水の上に漂う、たくさんの輝く星屑たちと一緒に、どんどん、どんどん
止まることもなく、川の流れにどこまでも運ばれていくのだった。
痛いと思える今日があること。