575 :
名前はいらない:
星たち
黒く冷たい 闇のガラスの上を
青白くすべって行く沈黙の旅人たち
夕日に炭火のようにおこって
西空を 赤く染めている山山たち
その山に
今は冬眠を待つばかりの熊たち
白い毛皮に着がえて
初雪の日の散歩を夢見ている
山のしゃれもの きつねたち
飛び立って行った ぼくらの子供時代に
古びた童話の表紙のかげから
熱い手をあげて
あいさつをおくってくれた
たぬきたち
いのししたち
やまどりたち
皆 いのってくれ
皆 いのってくれ
ひでりの年にお前たちが
百姓たちのために
いのってくれたように
洪水の空の
雨をふくんだ あつぼったい雲が
早う切れろと いのってくれたように
今
ぼくらといっしょに いのってくれ
波の間から 日がのぼるように
ぼくらの間から
平和が中天さしてのぼり
自由の光が
ぼくら 恋人同士の奥深い
恥部にまでひそみいり
そのために
ウソつきでガリガリの
大臣どもの体はとけ
頭上には
重たい金属の菊の弁も輝かず
臣もなく
親分もなく
コロンビヤの草原に住む人々のように
ぼくたちも
「この地上には ただぼくの馬
「この馬の上には ただぼく一人
「ぼくの頭の上には ソンブレロ一つ
「ソンブレロの上には
「ただ この果てしもない青空の青だけ
そう叫べる日が来るように
みんな
声をあわせて
いのってくれ
みんな
声をあわせて
いのってくれ
いのってくれ
注)読んでわかると思いますが、私の支持する、今では時代遅れとなった特定の思想にある程度関係する詩です
理解のある方、またその思想に共感しなくとも、思想を前提とした詩として評価ができる方の評価を希望いたします