「過ぎし夏の夕景に」
陽は落ち、空が反転し黒々とした光が滲みはじめ、私という存在など気にもかけず、いやおそらく一切の存在に付加している意味理由を無視して、夕闇は地に降り立った。
ブランコの影が規則的に揺れている、そしてそれは帰宅を促すさよならの鐘のようで、帰るべき家のない私は、一人また一人と消えていく友人(あるいは他人だったかもしれない)を羨ましげに、また戦争に赴く希望と絶望に満ちた青年を見送るような心持で眺めていた。
私は空に穴が開き、そこから天使が這い出すのを待った。
夜が星を全身に纏うのを待っていた。
そこで私は夢を吸うのだ、肺の隅々まで澄み切った夢で満たすのだ。
しかし夢というのはある種の麻薬のようなもので、たしかLSDとかいう。
であるから、星を見つめすぎるのは危険なことで(私は個人的に誘惑星と呼んでいるが)
かくいう私は既に、星の誘惑にしれぇっと騙されて、
理性は一応、地表にしがみついてはいるが、私の根底を満たす源泉のようなものは、
宇宙の彼方に飛ばされて(それが幾つも集まったのが天の川だという説もある)、もう当分帰ってきそうにはない。
全てが私を含むのと同じように、私が全てを含んでいるのは紛れもない事実のようだ。