君のセンスを5段階で評価するよ!カスタム4[指名制]
514 :
「螟蛉」:
あたしとは
あたしの中にある何かでは
ない
ざわつく言葉の表面を這いながら
螟蛉が
身体を震わせて
ひたすらに喰らう
穴だらけの葉を貫いて
雨粒が地を叩く
言葉が
足りない
抉られた葉を
揺らし続ける雨音が
肢を速めて
時を流す
胸脚と腹脚が
蠢きをとめて
螟蛉は食み続ける
ちがう
言葉にはない
固められた繭の中で
融けていく粘性の腐敗物
流動質の身体
思い出すものは彩
鮮やかな音
やわらかい芳醇な緑の匂い
世界のざらつき
あたしとは
あたしの中にある何かでは
ない
世界の欠片を取り込んだ繭から
合成された
皮膚を引き裂いて
翅が
立ち上がる
言葉は身体に融け混じり
体液になって
中を廻る
あたしとは
あたしの内と外にあるもの
翅が拡げられて
螟蛉の輪郭が崩れる
翅は舞い上がり
世界に触れる