103 :
「夜とレモン」:
前頭葉の破損した黄緑色の花
その雫に映る機械都市 無音で作動する化学工場
時計仕掛けの月明かりと点滅する電燈に
反射し黒光りしているコンクリートの河
立ち並ぶ病的に白い蛍光の列 点々と表れる黄緑色の花
青い月
薄汚れたアパート
消えていきそうな三日月
銭湯の門から人の影
俯いて電信柱の霧に佇む
隣の家の窓から差す
部屋の黄色い光
青い月
その夜のレモン
彗星が落ちて夜になった 住宅街の街明かり
静かな帰り道 電燈の下に佇む 長い男の影
伸びたり 縮んだり
時計仕掛けの三日月 前頭葉の破損した 黄緑色の花
白線の内側を歩く 人間
雨が降っている ぽつぽつと 窓際のレモン
地下鉄の振動 雨が降っている 彗星が落ちて夜になった
その夜のレモン