「雑司ヶ谷」(1/2)
パリのひと喰いひとごろし
あの証言によれば
母親が欲しがった 美味なるものが
ぱっくり割れた石榴でも 解らぬ事も無い
つやめき ぬるく濡れた石粒が
木の段を登って 石榴の御守り如何です?
木漏れ日と言うには心もとない光が
黒い土に染み込んでいます
木の実にしちゃかたく 人にしちゃ柔らかい
両手 或は片手で割って
しっかりと喰う
ああ美味し。
泣いてもどうせ済まぬなら泣こうか
こんなぬくい水菓子。
あれは欅だったか知ら。
(2/2)
あれは欅だったか
並木を過ぎた公園の泥が 足を汚したっけ
くるくると風車 刺さって廻って
虚ろな目を 騙し眩まし
虚ろな目を騙していたのは
涙か知ら。
血 か知ら。
描かれた顔 忘れておくれ