389 :
tribute:
「あの凹みは何だ?」
ぼくは今日、懺悔という言葉を何度も口の中で繰り返していた
普段はシャワーしか浴びないぼくが、昨日の夜は浴槽に湯を溜めた
久しぶりに滑り込んだお湯の中は肌をくすぐられるような感じだった しかし、
すぐに落ち着かない気分に襲われる そっけない秋空にいつまでも見つめられているような気がした
くそっ、入浴剤だ! ぼくは入浴剤を忘れていた、ぼくは入浴剤を入れなければいけない!
濡れた裸のままで入浴剤の在り処を探すぼくはまるで雨の日に捨てられたみじめな子犬だ
手に取ったそれは小さくて真ん中が凹んでおり、「バブ」と書いてあった
ぼくはお湯に投げ入れた バブは泡を噴き出しはじめた そしてぼくは直観した
背中に泡を当てると思ったとおりにそれは
雨の音がした
昔の雨の音だった
彼女が憂鬱そうな目で窓の外を眺めていた
その頃のぼくらは日曜の雨の日はいつも
湯を溜めた浴槽にいっしょに身体を沈めていた
指先がぼくと彼女のすべてを知っていた
肌が触れ合える場所だけでぼくらはできていた
そのとき、彼女の指先がぼくの先端に触れた
ぼくは目を開けた 溶けて薄くなったバブが浮かび上がり、それがぼくに触れたのだ
ぼくは苦笑した 見ている間にも溶けていき、薄くなり、レモンスライスのようになった
雨の日 彼女 レモンスライス
中央のへこんでいた部分に穴の開いたバブにぼくは勃起したペニスを突っ込み、バブは跡形もなく砕けた、ぼくは射精した
精液が身体中にぺたぺたと貼りついて、それはけっきょくのところ、悲しみというやつだった
彼女は浴槽から上がると肌をごしごしとこすっていた
ぼくも肌をごしごしとこする