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【流れ】
私は欠落した悪の一部です
光は届かず反射する一片の鉄屑です
血が滴り、錆付くまでの刹那に
嘔吐を繰り返す鋼鉄の胃腸に
蛆虫が沸き立つ日々に
川土手の腐乱死体に共鳴するかに
生き続ける欠落した悪の一部です
赤い陽が昇り、有頂天になって下り道の
晩年に青い夕焼けを眼球に刻みつけ
誘われるように入水しました
アンダーワールドには
肌のふやけた老若男女と死んだ笑顔に
歓待され
両手足は呪縛された目撃者のように
痺れに震え、死の快楽は妄想でした
竜宮城に打ち上げられる花火は海面の
遥か上空を照らし
陰惨な雨とは無縁の輝く空を生んでいます
光も届かぬ深い海の底では兎が餅を突き
地団駄を踏みながら滑っています
満月の光は私の脊髄を刺し通し
血と潮の流れのままに
私は欠落の一部を胸に突き刺したまま
身もだえ
立ち竦んでいます
【次は】【飛ぶ】でお願いします