【選者指定コンペ2】よろしく願いしまふm○m

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445口笛を吹きながら
人間の漬け物を見たことはあるかい
彼らは甕の中で育てられるんだ
頭だけ出して
体は甕の中に閉じ込めて
萎びながら熟成させられるんだ
それは手脚と胴の区別も不確かで
うねりの彫刻をほどこした小さな肉の塊だ
いびつに発達したひとつの足だけが
この肉の漬け物が人間なのだと囁いている

ベトナムのうだる日射しの下
ささくれた茣蓙に転がり
睫毛にとまった蝿をまばたきで追い払う青年は
路上を行き交う人々の足音と
頭元に投げられる小銭の音と
天上で打ち鳴らされる無限律のシンバルを
しとやかな羊の面持ちで聞いている

 父さん今日はもうかりましたか
 ぼくはお腹がぺこぺこです
 こうやって帰りみち父さんに抱かれてみる夕日がぼくはなにより好きですよ
 神さまに向かってすすんでいるような気がします
 しずかなしずかな時間です
 ぼくがどこから来てどこへ行くのかわかるような気がします
 なにもかもが過ぎていくようです
 父さんぼくは誰のものですか
 ねえ父さん、もっとぼくを抱きしめてください

千億の夜に人々は夢をみる
ひかれていく羊の黒い瞳とふるえる尻尾に憐れみの旋律があふれだす
しかし振りかえりながらも人々は
惜別の口笛を吹きながら雑踏へと消えていくのだ