92 :
19 ◆gwnULb/9mw :2006/10/19(木) 17:10:43 ID:J7CqCbC/
・実験!?
解剖台のフェレットは
いきていた
博士の目玉は
血で染まる
切り裂きメスの舌先が
ちろりちろりと臓腑を嘗める
こりゃこりゃ
「手のひら」
わたしの手のひらの
むこう
指先に
指紋
とくんと小さく血の流れ
手のひらのくぼみに
あたたかさ
自分いがいの
そんざい
94 :
おしめ替え太郎 ◆/5SxO/M3XU :2006/10/19(木) 22:11:22 ID:LP7wzAor
『熱』
微熱や平熱が騒ぎ出した
あの時見ていたのは馬ではなく母でしたし
帰り道ではバッタが賽の目状に切り刻まれていて
勇敢な雄とボス顔の猿がひっぱたき合っていました
カラメルの中で踊る君よ
焦げちゃうのかい?と訊いたよ
いつか草履とお箸を持って
飛行機を粉々にしよう
粉砕した夏
かけがえのない
僕のおもひで
95 :
89:2006/10/20(金) 22:15:15 ID:RaPEEAqm
「 ヒビ 」
沈む太陽 昇る月
今日が終わり 凶が始まる
恐が来る 狂も来る
脅が来た 叫も来た
怯がゆく 供とゆく
饗が終わり 今日が始まる
沈む月 昇る太陽
( マ )
よみ )
今日 凶 恐 狂 脅 叫 怯 供 饗 (きょう)
96 :
95:2006/11/16(木) 21:34:43 ID:bTiulAEZ
「 シン 」
言 い
えない たい思
想い と 言い
触 い
れたい ない想
思い は 触れ
オ る
モイは はふれ
ふれる オモリ
振 む
れる重 いを刻
りが 想
震 い
える想 れる思
い 狂
触
れたオ
モ い
止
ま
れ
( シン )
溺死式で
嘘で いつか 憎い国 担いでそう
苦しく つらいまま 怠惰 抱いたまま いらつく 知る 句
過酷な語り 懲りたか 泣く子か
嘘を床に 九日は 写真家に感謝し 墓の此処に 言を添う
岸を 等しく 死と火を 敷き
活かせない例 返すも 世も末か 異例な世界
98 :
Test:2007/02/14(水) 22:13:20 ID:ssa9M3KQ
「 シン ジル 」
期待、外れて、道、外れ、
恥いた、想いが、重荷になった。
思い出、灯した、友といて、
止まらぬ、涙が、雨となる。
ああ、面倒だ、アーメンだ、
誰の、オモイだ、デーモンだ。
だから、髪は、濡れ、切れた、
宝、抱えて、濡れ衣だ。
だらけた、世界に、お別れさ、
さめたら、世界は、お終いさ。
さよなら、三年、年貢時、
さがせぬ、道とは、何何だ。
何年、経っても、駄目だった、
たった、一つの、夢だった。
だめだと、解った、それだけだ、
それでも、生きて、恥をかく。
かくして、かくれて、みち、はずれ。
いきとも、いけども、みちは、ずれ。
アーメン だ、デーモン だ。
誰なんだ、 俺 は 。
( 名無し )
雨フル 雨フル ヒルサガリ
歩ク 僕ト 僕ノ 影
跳ネル 春ト 春ノ 僕
雨フル 雨フル 揺レル 草
雨フル 雨フル 踊ル 花
100 :
名前はいらない:2007/03/29(木) 13:02:14 ID:9WO4XzTB
age
101 :
98:2007/05/16(水) 21:51:48 ID:6iYYDSBa
「 傷 心 」
僕らは いつか 気付くんだ
どこか 心が 疼くんだ
僕らは なにを 気付くんだ
どこか 心は 疎むんだ
僕らは 誰か 気付くんだ
どこか 心に 埋めんだ
僕は 誰かと 疼くんだ
心に 刺と 気付くんだ
僕は なにか 疎むんだ
心に 毒と 気付くんだ
僕は いつか 埋まんだ
心に 止めと 気付くんだ
( 心 証 )
疼(うず) 疎(うと) 埋(うず) 止(とど)
太陽が その弧を
描き終えようとしている
隣り合わせに ブランコ
漕ぐふたり
もしも
もしも?
たとえば
たとえば?
言葉と文字で、なにもかもを
表し、伝え合うことができるなら、
ぼくたちには、それ以外
何も、することは、 なくなる、、 んだろう?
…
……
………。
それぞれに
つけた勢いで
通り雨の残していった
水溜り
跳び越え
まだ ぬかるんでいる着地点上の
バランス そして、
震える空気
耳の後ろ 首筋を
撫でて 季節の感覚
振り返る
君と
君の向こう側へ落ちてゆく
だんだんに細い
弧の光
揺れたまま ブランコ
ふたつ そして、
ぼくが、
その目が その耳が
当たり前に
見えること 聴こえることに どんなにか
感謝するのを 忘れていたこと。
交わされた言葉
交わされた沈黙
そして、私
或る日
立ち止まった 公園で
103 :
101:2007/08/12(日) 21:37:22 ID:X3zpreKC
「 羨 望 」
この地に、生まれ。
かの地を、望む。
この血は、誉れ。
この血に、呑まれ。
かの血を、屠れ。
かの地に、臨む。
個は、散々。
個は、惨々。
この世に、生まれ。
あの世で、解る。
この星を、誉れ。
この星に、望む。
( 或人 )
105 :
田中宏輔:2007/12/30(日) 12:12:42 ID:KYwxuAWN
●捜さないでください●現実は失敗だらけで●芸術も失敗だらけ●ちゃんと生
きていく自身がありません●ハー●コリャコリャ●突然●自由なんだよって言
われたってねえ●恋人没収●だども●おらには●現実がいっぱいあるさ●芸術
だっていっぱいあるわさ●街じゅういたるところから●猿のおもちゃたちが●
姿を現わす●パシャン●パシャン●パシャン●パシャン●シンバルを打ち鳴ら
しながら●猿のおもちゃたちが●ぼくのほうに向かってやってくる●パシャン
●パシャン●パシャン●パシャン●脱穀の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)
の令嬢夫人たちが●足をあげて●足をさげて●オイチニ●オイチニ●黄色いス
カートをひるがえし●オイチニ●オイチニ●パシャン●パシャン●パシャン●
パシャン●脱穀の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の令嬢夫人たちの黄色い
スカートがまくれあがり●マリリン・モンローのスカートもまくれあがり●世
界じゅうの婦女子たちのスカートもまくれあがる●パシャン●パシャン●パシ
ャン●パシャン●自転車は倒れ●バイクも倒れ●立て看板も倒れ●歩行者たち
も倒れ●工事現場の建設作業員たちも倒れ●ぼくも道の上にへたり込む●パシ
ャン●パシャン●パシャン●パシャン●吹けよ●風●呼べよ●嵐●沸騰する二
酸化炭素(カーボン・ダイオクサイド)●真っ直ぐな肩よ●来い!
106 :
田中宏輔:2007/12/30(日) 12:18:10 ID:KYwxuAWN
上のものは、●詩と名づけている詩の作品のひとつの
タイトルです。本文はA5版の同人雑誌「dionysos」に
20数ページにわたって書いています。
全文は「言語実験工房」というサイトに掲載されています。
107 :
田中宏輔:2007/12/30(日) 12:21:25 ID:KYwxuAWN
108 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 12:21:25 ID:BAvG9kLg
図書館の掟
濡れた手で触れてはいけない
かわいた唇で愛撫するのはよい
かわいた唇で接吻するのはよい
しかし
けっして歯を立ててはいけない
噛んではいけない
乾いた指が奥所をまさぐり
これをいたぶるのはよしとする
死者たちは繊細なので
死者たちの悪口を言ってはいけない
死者たちはつねに耳をそばだてている
死者と生者とのあいだの接触は
一度にひとりずつが決まりである
死者のコピーは司書にあらかじめ申し出ておくこと
死者がたずねられて困ることはたずねてはいけない
死者の安らぎはこれを最優先に遵守する
生者と生者との逢引はこれを禁ずる
死者は生者よりも嫉妬深く傷つきやすいため
隣人が死者の場合
隣人のひざの上に腰掛けないこと
図書館のなかで
生者が死者に変容するとき
死亡確認は司書にまかせること
死者は階級別に並べられている
第一階級は偉大な学者や芸術家たちからなる
第二階級は大貴族からなる
第三階級はその他の特権階級の者たち
大商人や高級官吏たち
第四階級は中流階級の者たち
第五階級は下層階級の者たち
109 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 12:23:10 ID:BAvG9kLg
太陽は入れないこと
二度とふたたび死者が受粉できなくなるため
溺れたものを目にした者は
ただちにその場を立ち去ること
死者の身体を乾かしてから
書架に並べ終わるまで
死者の貸し出しは二週間
二週間を過ぎると復活する
復活は死者の記憶を減ずる
貸し出しカードは
死者そのものであるため
取り扱いに注意すること
死者の身体の一部および全体を損なった場合
借り出した本人を死者として供する
常識的な範囲で死者をいたぶることは許されている
常識的な範囲でいたぶられることは
死者たちの幸福の一部である
リクエストは常時受け付けている
あなたの求める死者の名前を
リクエストカードに記入すれば
その死者が死んだばかりで埋葬がまだの場合
三日以内に納入されることになる
ただしリクエストされた名前が生者のものである場合
当図書館に納入されるまで
およそ一ヶ月から半年の期間を要するので
お急ぎの場合は
リクエストされた利用者の手で搬入していただくこととする
書架の死者たちの手首にはナンバーが打たれている
手首のナンバーを取り替えることはこれを禁ずる
この規約を破るものは貸し出しカードの一枚に加えることとする
110 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 12:24:33 ID:BAvG9kLg
ガチャリという手錠の音が部屋のなかに響いた
死者を坐らせるときには気をつけなければならなかったのだが
ついぼんやりとしてしまっていた
死者は19世紀末の北アイルランド出身の若くて美しい女性で
うすくひらいた紫色の唇が言葉にできないくらいに艶めかしかったのだ
ぼくは彼女の両の手を自分の両の手で包み
彼女の唇に自分の唇を触れさせた
興奮して噛んだりしないように注意して
ぼくはぼくの上下の唇の先で
彼女の下唇をはさんだ
冷たい唇がゆっくりひらいていった
ぼくは彼女の唇に耳をくっつけて
彼女の声をきいた
死者の声はどうしてこんなに魅力的なのだろうか
声をひそめて語る彼女の言葉を聞いていると
まるで愛撫されているかのようだった
彼女の息がぼくの耳をくすぐる
過去が死者によって語られる
どうして死者の語る過去は
生者の語る現在よりも生き生きとしているのだろうか
彼女は彼女の死の間際に何が起こったのか教えてくれた
どうして理不尽な死が彼女を襲ったのか
静かにゆっくりと語ってくれた
死者の息は冷たい
冷たい息がぼくの耳にかかる
目を閉じて彼女の声を聞いていた
視線を感じて目を開けると
手前の書架と書架の間から
美しい女性の死者の視線を感じた
一度に一人ずつ
というのが図書館の掟だった
ぼくはアイルランド人の貴族の娘を立ち上がらせると
彼女を元の書架に連れいき
手錠をはめて
さきほど目にした女性の死者のところに足を運んだ
彼女の姿はなかった
この図書館にはたくさんの書架があり
見間違うこともあるのだけれど
さきほど目にした女性がいた本棚のところには
びっしりと死者たちが立ち並んでいた
20世紀後半の東南アジア人の死者たちだった
第一階級の死者たちの棚だった
それらの老若男女の死者たちのなかには彼女はいなかった
額の番号を見ても抜けている番号はなかった
見間違いだったのだろうか
その死者は東南アジア系の肌の浅黒い
ちょっぴり丸顔の若い女性だった
後ろにひとのいる気配がしたので振り返った
彼女だった
111 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 12:25:31 ID:BAvG9kLg
彼女は死者ではなかったのだ
ぼくの目がみた彼女の瞳は死者のそれではなく
生者のそれだったのだ
ぼくは視力がそれほどよくなかったので見間違えたのだった
ぼくは彼女に一目ぼれした
彼女もそうだった
ふたりは互いに一目ぼれしたのだった
図書館では生者同士の会話が禁じられている
死者たちに嫉妬心を呼び起こすからだというのだが
わずかにひらいたカーテンの隙間から
月の光が射し込んでいた
死者たちの魂を引き剥がす太陽光線をさけるために
その用心のために図書館は夜にしか開いていないのだ
ぼくたちは周りの人間たちや死者たちには
わからないように目で合図して図書館から出て行こうとした
するとこの部屋を監視している図書館員にでも気づかれたのだろうか
ぼくたちの後ろから
ハンドガンを携帯した二人の図書警備員が追いかけてきた
ぼくたちはいくつもの書架と書架の間を抜けて走った
迷路のような部屋のなかを彼らの追跡を振り切るために
112 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 12:37:12 ID:BAvG9kLg
だれも借りていないはずなのに
いるはずの場所にはだれもいなかった
しかし垂れ下がった鎖が
そこに彼女がいたことを告げていた
そこには20世紀半ばころに亡くなった
アメリカの女流画家がいるはずだった
図書館には頻繁に足を運んでいるのだが
いつもだれかが彼女を借り出していた
きょう来てみて
だれも借り出してはいないことを知って
よろこんでこの書架の前に来たのに
彼女の姿はなかった
写真で見た彼女は美しかった
60代に入ったばかりのころの彼女の写真だった
きょうこそは彼女の話が聞くことができると思ったのに
司書に訊いても彼女の死体がどこにあるのかわからなかった
だれかが無断で連れ出したのだろうか
無断で死者を連れ出したりすると
どんな罰則が科せられるのか
知らない者はいないはずだけど
ぼくはまだ見ぬ彼女に会いたくて
なんとか探し出せないものかと
書架と書架の間を長い時間さ迷った
113 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 14:13:02 ID:BAvG9kLg
死者の身体から
婦人警官が身を離した
生者との接吻で死者は目覚めるのだ
図書館警察管区の一室である
刑事は容疑者の女の前に死者を坐らせた
「死者は嘘をつけないとおっしゃるのね」
「そのとおりです」
刑事は死者の後ろに立って死者の肩に片手をのせて答えた
「死者はそのときに信じたことを事実としてしゃべるだけなのですよ」
「それまたしかりです」
「では彼が述べたことは彼が事実だと思ったことを述べただけじゃないですか」
「おっしゃるとおりです」
「彼が信じたがっていたことと嘘とはどう違うの」
「あなたは死者に感情がないとお思いですか」
刑事の横にいた女が口を開いた
「この女は何者なの」
「死者のひとりです」
容疑者の女は目を瞠った
「自分のほうから口を開いてしゃべる死者なんているの」
「きわめてめずらしいことでしょうね」
刑事は容疑者の女の目をじっと見つめた
「死者に感情なんてあるはずがないわ」
「あるのですよ」
「それと死者が嘘をつくつかないといったこととどういう関係があるの」
「死者にもプライドがあり故意に嘘をつくことができないのです」
「どうどうめぐりだわ」
114 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 14:14:03 ID:BAvG9kLg
刑事が口を挟んだ
「わたしたちはあなたが直接彼を殺したとは考えていません」
「当然だわ」
容疑者の女は死者の首を見た
死者の首は異様にねじまがっていた
首を吊った痕がなまなましかった
「しかし故意に他者を自殺に追い込むことは刑罰の対象になるのですよ」
「証拠はあるの」
「死者の証言しかありません」
「起訴は無理ね」
「あなたは法律が変わったことをご存じないようですな」
容疑者の女の表情が一変した
「知らないわ」
「死者の証言は容疑者の自白に勝るというものです」
「そんな・・・」
「わたしたちのような死者が出現して
より詳しく死者について知られるようになったからよ」
死んだ女が静かに言った
そばにいた婦人警官が容疑者の前に坐っている死者の耳元にささやいた
死者の口から細い消え入りそうな声が漏れる
死者の言葉に容疑者の女は蒼白になり気を失った
115 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 14:19:31 ID:BAvG9kLg
老女の死体はバレーを踊る
月の光のもとで
老女の死体はバレーを踊る
月の光のもとで
無声映画時代の映画のように
ぎこちない動きだけれど
老女の死体はバレーを踊る
老人の死者たちは
近い過去よりも
遠い過去について
好んで思い出す
老女は幼い頃に習った
バレーを踊っていた
月の光が
老女の白い肌に反射する
老女の影が地面を動く
老女の足が地面をこする
だれにも見つからない場所で
老女の死体はバレーを踊る
老女は画家になるよりも
ほんとうはバレリーナになりたかったのだ
人間はほんとうになりたいものにはならないものなのだ
老女の死体はバレーを踊る
月の光のもとで
老女の死体はバレーを踊る
月の光のもとで
無声映画時代の映画のように
ぎこちない動きだけれど
老女の死体はバレーを踊る
だれにも見つからない場所で
ひとりの司書が連れ出していたのだ
116 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 14:52:04 ID:BAvG9kLg
「それでどちらのウィルスなのですか」
「記憶転写型です」
記憶転写型のウィルスに感染した死者は
その記憶がある一人の死者としだいに似てきて
最終的にはまったく同じ記憶を持つことになるのだった
「記憶欠損型よりも感染力が強くて
性質が悪いものでしたね」
司書の表情が一段と暗くなった
「もう十年以上も前の話ですが
東端の都市の中央図書館が
記憶転写型のウィルスにやられて
瞬く間に滅びました」
「そうでしたね
わたしたちの文明は
死者を中心に発展したもので
その死者がわれわれを教え導いてきたのですからね
死者たちが語る言葉に混乱や間違いがあれば
わたしたちの都市も
わたしたち自体も生き残ることができませんからね」
「それでどれぐらいの死者たちがウィルスに感染していましたか」
「10名です」
図書館警察の刑事がその死者たちの写真を
テーブルの上に並べていった
「そうですか
それはよかった
まだ初期段階でしたね
ウィルス保菌者の生者を特定するのは難しくないでしょう
さっそく記録に当たりましょう」
117 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 14:53:29 ID:BAvG9kLg
司書はテーブルの上に並べられた写真から目を上げて言った
「それはすでに手配済みです
しかし特定された人物が存在しないのですよ」
刑事は司書にファイルを手渡した
「記録に間違いがあったとでもおっしゃるのですか」
ファイルを持った司書の手に力が入った
「いえいえそうではありません
記録は存在するのですが
その記録にあった人物は生きてはいないのです
5年ばかり前に死んでいました
遺体は火葬されていました」
司書は目を瞠った
「それでは
死者の言葉を耳にした生者はいったいだれなんでしょう」
刑事は声を落として言った
「死者解放運動の者たちの仕業か
他の都市の謀略か
そのどちらかでしょう」
司書は表情を失った
「被害が小さいうちに見つかってよかった」
刑事が立ち上がって部屋から出て行った
司書は両の手で頭を抱えてテーブルの上を見つめた
テーブルの上には刑事の置いていったファイルがあった
司書にはファイルをすぐに開ける勇気がなかった
118 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 14:54:32 ID:BAvG9kLg
「おぼえているかしらあなたも
わたしたちがまだ学生で若かったころ
この図書館でお互いに一目で恋に堕ちて
図書館警備の者たちに追われて
逃げ回った日のことを」
「おぼえているとも
きみといっしょに
この迷宮のような図書館のなかを
二人して書架と書架のあいだを走り抜け
警備の者たちを振りほどこうとして
逃げ回った日のことを」
「そのあとわたしたちがどうなったか
おぼえてらっしゃるかしら」
「おぼえているとも
ぼくの父が政庁の高級役人だったので
二人ともお咎めなしだったじゃないか
どんな罰が下されるか
二人してあんなにビクビクしていたのに」
「それからわたしたちは
二度とふたたび
二人いっしょに
図書館に訪れることはなかったわね」
「そうだった
訪れる必要があるときは
かならず別々の日にしていたね」
「子どもたちのことはおぼえてらっしゃるかしら」
「ぼくたち二人の子どものことだね
どうしてそんな聞き方をするんだい
デイヴィッドとキャサリンがどうかしたのかい」
119 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 14:57:39 ID:BAvG9kLg
「いえ」
「デイヴィッドはぼくに
キャサリンはきみに似ていたけれど
二人を並べるとやっぱり双子で
瓜二つそっくり同じ顔をしていたね」
「わたしたちの子どもたち
ただふたりきりの兄妹だった
でも車の事故で二人とも死んでしまったわ
わたしもそのときに死にかけたのだけれど」
女の目から涙が落ちた
女はしばらくのあいだむせび泣いていた
死者の視線は女の目に注がれたままだった
「ごめんなさい
あなたに聞かせても
あなたはあなたが死んでからの出来事は
何一つ覚えていられないのに」
死者は新しい知識を長時間記憶できないのだった
女は立ち上がって部屋を出た
部屋の外には死者を目覚めさせ
眠らせることのできる死者の女がいた
この死者は自分の方からしゃべることができ
またウィルスに感染しないのだった
その死者の女は生者の女と入れ替わりに部屋に入った
生者の女は隣の部屋に入った
「たしかにわたしの夫の記憶が転写されています
赤の他人が夫の記憶を持っているなんて耐えられないわ」
係官はうなずきながら
記憶転写ウィルスがどれだけ正確に記憶を転写させているか
チェック項目にしるしをつけていった
120 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 15:36:50 ID:BAvG9kLg
オリジナルの死者を含めて
ウィルスに感染した10人の死者が火葬にふされた
つぎつぎと灰と煙と骨にされていく死者たち
眠りのさなかに燃え上がる10人の死者たち
死者たちは痛みを感じない苦痛を感じない
同じ記憶をもった10人の死者たち
つぎつぎと灰と煙と骨になっていく
同じ記憶を持った10人の死者たち
121 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 15:39:19 ID:BAvG9kLg
夫の記憶を
ほんとうの夫の記憶を
白紙状態の死者にコピーするというのだけれど
赤の他人が夫の記憶を持っていることには違いはない
もう二度と夫のもとには訪れないわ
いえそれはもう夫ではないのだから
そんな言い方もおかしいわ
夫ではないんですもの
いえいえ違うわ
記憶は夫のものよ
わたしにはあのひとの記憶が必要だわ
わたしにはあのひとの言葉が必要だわ
二人のあいだの思い出を語り合うことが
わたしの慰め
わたしの唯一の慰めですもの
あのひとの顔ではないけれど
あのひとの記憶を持った男のところに
夫の思い出を語る赤の他人のところに
きっとわたしはやってくるでしょう
すぐにとは言わないまでも
遠くない日
いつの日にか
ふたたび
また
122 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 15:42:08 ID:BAvG9kLg
「かけたまえ」
男は図書館長の視線から目を離さずに腰掛けた
「カタログは、そのなかかね」
男は持ってきた鞄を図書館長の目の前に置いて開けた
二つ折りのカタログを手に持って
男は唇の端を上げて、図書館長に思わし気な視線を投げかけた
「そのカタログにある死者が、どうして、わたしの興味を強く惹くと考えたのかね」
「電話でもお話ししたと思いますが、それはあなた自身が詩人だからです
しかも、この詩人の死者の研究家だからですよ」
「わたしの研究分野は、きみが思っているほど狭いものではないのだよ
それはいったい、だれなんだね。その死者の詩人は」
「あなたは、かねがね、死者による詩の朗読会を催したいと
いろいろなところで発表なさっていますね
この死者の詩人は、生前に、あなたのおっしゃったようなことを
していたのですよ」
図書館長は深く腰掛けていた椅子から身を乗り出すようにして
上体を前に傾けた
「いったい、それは、だれだね」
図書館長の頭のなかに何人かの詩人の顔が浮かんだ
男はエゴン・シーレの絵を見上げた
「あなたの後ろにあるシーレの絵を
この詩人も生前は大好きだったようですね」
図書館長にはすでにその死者がだれであるのか察しがついていたが
男の態度に怒りを覚えて眉間に皺を寄せた
「もったいぶらないで、はやく教えたまえ
いまきみを図書警備の者に言って出て行かせることも出来るのだぞ
あるいは、きみを直接、図書館警察の身に引き渡すこともできるのだ
死者はオークションに出品しなければならない
その法律を破った者に、どんな罪が科せられるか知っているだろう」
「いや、あなたは、そんなことはしませんよ
ぜったいにできませんよ
このカタログをごらんになればね」
男は図書館長の前にカタログをもって拡げた
図書館長はため息をついた
123 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 15:46:08 ID:BAvG9kLg
「これは、わたしが研究している日本の21世紀の詩人じゃないか
生前に、引用のみからなるポリフォニックな詩を書いていた詩人で
そうだ
わたしもこの詩人のように考えたことがあったぞ
すぐれた詩人たちによる
すぐれた作家たちによる朗読大合唱なのだ
大共同制作なのだ
シェイクスピアが生きていたら
いや死んでいてもいいのだ
死者として図書館にいてくれたら
さまざまなすぐれた詩人や作家が死者として図書館にいてくれたら
彼ら・彼女らに、どれだけの美しい詩を聞かせてもらえるか
また組曲のようにして
合唱のようにして
彼ら・彼女らの朗読コンサートができるのに
ああ、シェイクスピアが
エリオットが
マラルメが
ポオが
図書館のできたときに死者であったならばよかったのに」
図書館長は興奮して一気にしゃべった
男はカタログを閉じた
図書館長は目をすえて、男の目を見た。
「さて、どうなさいますか」
男は、いかにも小ずるそうな表情をして図書館長の顔を見た
図書館長は机の引き出しから小切手帳を取り出した
124 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 16:25:01 ID:BAvG9kLg
男は図書館長から小切手を受け取った
死者たちによる合唱だって
死者たちの共同制作だって
たとえすぐれた詩人であろうと
すぐれた作家であろうと
ただ死者たちが持つ記憶を
あの愚かな図書館長がコラージュするだけではないか
それが過去の詩人たちによる
過去の作家たちによる
合唱とか共同制作とかと呼べるようなものになるのか
あの愚かな図書館長のこころのなかでは
そうなのだろう
すぐれた詩人や
すぐれた小説家たちが円陣になって
大傑作を創作している
そんな妄想を
あの愚かな図書館長は
あの頭のなかに描いているのだろう
そしておれの財布のなかには
あの愚かな図書館長の妄想によって
大金が転がり込んできたのだ
歩合はそう悪くない
おれの儲けもけっして小さくはない
なにしろおれの命がかかっているのだからな
125 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 17:12:45 ID:BAvG9kLg
図書館長は椅子の背にもたれて
男が去っていくときの表情を思い出していた
他人を小ばかにしたようなあの笑みを
無理解というものが
どれだけ芸術家にとって大切なものか
共感されること以上に
バカにされたり
無視されたりすることが
芸術にとって
どれだけ大切なことなのか
あの男は知らない
そう思って
図書館長はほくそ笑んだ
偶然が生み出す芸術のすばらしさを
いったいどれだけの芸術家がほんとうに知っているのだろうか
他のすぐれた詩人や作家たちが口にする
体験の記憶や作品のフレーズの豊かさを
そしてまた
芸術家ではないが
自己の体験をよく観察し
そこから人生について意義ある事柄を知り
それから語られるべきことを語ることのできる人々の言葉が
どれだけ豊かであるのかということを
そういった死者たちを
図書館がどれだけ抱えているのかを
そういった人々や詩人や作家たちによって
つぎつぎと繰り出される言葉たち
それらが編み出す一篇の巨大なタペストリーが
どれだけ美しいものになることか
それを知らないのだ
わたし以外の者たちは
126 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 17:15:41 ID:BAvG9kLg
図書館長は大きくため息をついて
よりいっそう目を細めて笑った
そのタペストリーは随所にきらめきを発することだろう
もちろん
ところどころにある沈み込みは仕方がないであろう
意味もなさず
映像喚起力もないところは随所にあるであろう
しかし
ディラン・トマスのすぐれた詩のように
きっとすごいフレーズが顔を覗かせてくれるだろう
図書館長は机の引き出しから二冊のファイルを取り出した
上のものには
これまでに図書館に収められた
すぐれた詩人や作家たちの写真がファイルされていた
下のものには
図書館長が選んでいた
さまざまな階級や職業の死者たちの写真が並んでいた
貼り付けられた写真の下には
図書館長の細かい字が
びっしりと書き込まれていた
127 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 17:17:06 ID:BAvG9kLg
図書館長は自分が翻訳した詩人のメモの訳文に目を通した
シェイクスピアの自我は彼の作品に残っている
その影響は後世の人間の自我の形成に寄与している
とりわけ詩人や作家や批評家に
たくさんの詩人たちのなかに
たくさんの作家たちのなかに
それぞれのシェイクスピアがいる
シェイクスピアの自我がさまざまな姿をもって
おびただしい数の人間のなかに収まっているのだ
その表現者の一部となった
たくさんのシェイクスピアがいるのだ
この詩人の自我もわたしの一部となっているということだ
わたしの思考傾向をつかさどる自我の一部となっているのだ
図書館長は
番号のついたメモの写しをファイルにしまった
128 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 17:54:02 ID:BAvG9kLg
図書館長は
詩人のメモのコピーを眺めていた
作者が作品と同じ深さをもっているとはけっして言えない
作者が作品と同じ高さをもっているとはけっして言えない
作者が作品と同じ広さをもっているとはけっして言えない
図書館長は
コピーのページをめくっていった
作品には未来がある
解釈はつねに変化するのだ
図書館長は
またべつのメモのコピーに手をとめた
読み手は作者を想像する
作者は読み手を創造する
これを逆にすると
ただ陳腐なだけだが
真実はどちらにあるのだろうか
どちらにもあるのだろうか
どちらにもないのだろうか
読み手は作者を創造する
作者は読み手を想像する
129 :
田中宏輔:2008/07/08(火) 17:55:42 ID:BAvG9kLg
もしかすると
こうかもしれない
読み手は作者を創造する
作者も読み手を創造する
しかし
つぎのような可能性は
考えるだけでもむなしくなるものだ
読み手は作者を想像する
作者も読み手を想像する
図書館長は
このメモのコピーの上で
左の肘をついて
手のひらにあごをのせた
手のひらに
今朝剃り忘れたひげがあたって
ジリリと小さな音を立てた
もう何度も目を通しているコピーであったが
図書館長の
右手の人差し指が
このメモの言葉の下を
ゆっくりとなぞっていった
130 :
田中宏輔:2008/07/09(水) 06:23:25 ID:Pn/4DM/D
図書館長の目が
詩人のメモの上を走る
現代人は
現代人であるがゆえに
個人としてのアイデンティティーが希薄だ
パソコンメール
携帯電話
携帯メール
人格の浸透が常に行なわれているのだ
子どもたちの人格の浸透度を考えると
現代こそ
一九八四年の世界であるということがわかる
と考えたこともあるが
いったい人間が
まったき個であったことなどあったのだろうか
どの時代に?
なかったろう
つねに
わたしとは、わたしたちなのだ
わたしとは、わたしたちなのだった
図書館長は、詩人のメモのコピーをファイルにしまうと
帰り支度をはじめた
131 :
田中宏輔:2008/07/09(水) 06:24:30 ID:Pn/4DM/D
図書館長は、連日
詩人の原稿に目を通していた
書かない人間のほうがよく知っている
並みの書き手はあまり知らず
優れた書き手はほとんど知らず
最良の書き手はまったく知らない
だから書くことができるのだ
書かない人間は愛することができる
愛することについて書く人間は
真に愛したこともなければ
真に愛されたこともないのだ
作家とは恥ずかしい輩だ
詩人とは恥ずかしい連中だ
知らないことを書いているのだから
図書館長の口からため息がもれた
132 :
田中宏輔:2008/07/09(水) 06:26:28 ID:Pn/4DM/D
目を開くことはできないが感じることはできる
死者たちは感じることができるのだ
手錠につながれた死者たちは感じていた
生者たちが書架と書架のあいだで
睦言をささやいているのを
恋人たちが互いを思いやり
いたわり合って言葉を紡ぎ出しているのを
死者たちは感じるのだ
嫉妬を
死者たちは
もはや特定の個人を愛するということができないので
それができる生者たちに嫉妬を覚えるのだ
生者たちの愛を目の当たりに感じること
それが唯一
死者たちのこころを乱すものなのだ
死者たちにこころがあったとしての話だが
というか
こころと呼んでいいものが死者にもあるとしての話なのだが
死者たちの心理学はまだ解析されはじめたばかりであったが
生きている者と同様に自らの意志で目を開くことのできる死者が出現して以来
それらの死者たちについての分析が急速に進展していることは事実であった
ただそれが
自らの意思では目を開くことのできない死者にも適応できるものなのかどうかは
異論が続出しているのが実態である
133 :
田中宏輔:2008/07/09(水) 06:27:50 ID:Pn/4DM/D
生者たちの睦言
そんなものでさえ
死者たちにとっては
致命的なものなのだ
それが
やがて死者たちが
自分の記憶を語ることができないようになる要因のひとつであった
生者と生者との逢引はこれを禁ずる
これは大事な図書館の掟のひとつであった
死者たちは動揺していた
恋人たちの睦言に
大いなる嫉妬の嵐が
死者たちの胸のなかを吹き荒れていた
図書館の天蓋の窓ガラスから落ちる月の光が冴え冴えと
目をつむって眠ったように死んでいる
死者たちの白い死衣にくるまれた身体を照らし出していた
134 :
田中宏輔:2008/07/09(水) 06:59:11 ID:Pn/4DM/D
両手が鎌になっている死者が
リングの中央で切りつけ合っている
それを10人ばかりの生者たちが見守っている
生者たちは自分の賭けているほうの死者の名前を
口々に叫んで応援している
一人の死者が相手の死者に肘を切りつけられて
片腕を落とした
切断された肘から
白濁した銀色の体液が滴り落ちる
片腕の死者がよろけたところで
相手の死者が両手の鎌を交差させて
死者の首を挟んで鋏のようにして切断した
首が落ちて
首のない身体がくず折れる
一瞬
静寂が訪れる
その沈黙のベールを破って
扉が開けられた
「動かないで
あなたたちを逮捕します」
最初に部屋になだれ込んだ刑事が言った
だれも動かなかった
「全員
死は免れないでしょう
もちろん
あなたたちには
死者になる権利は剥奪されるでしょう
死と同時に火葬に付されるでしょう」
警察官の手によって
死者のゲームを主催していた者や観客たちが
つぎつぎと手錠につながれていった
135 :
田中宏輔:2008/07/10(木) 13:45:37 ID:La1hULSQ
「それではつぎに弁護側の死者に証言させてください」
法廷には
弁護側の死者と
検察側の死者が出廷していた
死者は虚偽を口にすることはないので
裁判で証言者として認められることになったのである
証言台のところで
女性の死者に
生者の弁護士助手が近づいて
耳元にささやいた
女性の死者の口から
ぽつぽつと言葉がもれていく
マイクがその声をすべて拾っていった
136 :
名前はいらない:2008/07/10(木) 21:28:52 ID:JzKuLxVM
俺は今から都市伝説の話をする
そのあと性的な快感が得られるような
喉から流れ落ちる感覚がなぞるようにわかるような
見てみろ
配水管と手錠で繋がれた女がいるぞwww
この暗闇を見てください
それはとても眩しいものです
だけどあなたが見るのはそれが最後でしょう、あなたはついてる
あなたはそれより本当の暗闇を見ましたか?
あなたの暗闇を見せてください
あなたが見た最後の暗闇
だけど、それは私にとって自由であるかもしれない
今までに、私が居た所よりは自由です
あなたは何をするの?
立候補でもしましょうか
いつ始めますか
続けましょうよ
ショーを楽しみましょう
あなたが望むならそうしましょう
投票でもしますか
さあ、一人ずつ行きましょうか
あなたから行ってください
外に出たら、あなたは認めると思います
この暗闇を見ました
あなたが見たのはそれが最後でしょう
あなたが見た最後の暗闇
138 :
Test:2008/09/03(水) 22:10:19 ID:KF4OH8RK
「 シン ジタ 」
北の 外れで 道は消え
恥じない 思い出 朧になった
オンボロ お手紙 お手軽さ
探せぬ 手懸り 手間ばかり
なぁ 張り切れよ 縄張りだ
仲間の 励まし 綱張りだ
だけど ほっとけ 何枚だ
何枚あっても 紙きれだ
だらけた 生活 失格さ
さめても 世界は ほっとくさ
さよなら 残念 失念だ
失礼 失敗 失格だ
白けて 気付ば 何年だ
たった 一枚 紙切れだ
どんより 朧も 襲いだす
恐れて 己で 落っこちる
チルチル ミチル 何を見る
みな もの さきは かみ なのか
なんまいだ なんまい な ん だ
誰なんだ 俺は
( 名無し )
139 :
138:2008/11/06(木) 21:09:58 ID:v5helPjI
「 シ びと 」
詩か 死か しか ない
□な 資格 視角 ない
詩書く 詩描く 死覚 ない
しかくない
しかたない
し しか ない
( 在 )
140 :
139:2008/12/24(水) 18:46:23 ID:JDa3Kuoj
「 ウセモノ 」
探す ものは 何ですか
何を 探す のですか
僕は 何を 探す のですか
何を 探せば いいのですか
探せば 見つかる ものですか
咲かない 花は 探せない
飛ばない 鳥は 探せない
そよがぬ 風は 探せない
変わらぬ 月は 探せない
書けない 想いは 探せない
語らぬ 思いは 探せない
叫ばぬ 人は 探せない
探しものは 何ですか
探せば 見つかる ものですか
僕は 探す のですか
( 在 )
141 :
sage:
ああ、夜空にひしめくペガサスは二人で過ごす午後の紅茶の薔薇の色。
明るい未来に羽ばたく私の肝臓は金色のオルゴールの様に美しい音色を奏でながら、
キラキラと輝く待ち遠しいあの人の目玉に誘われ飛び立つの。
舞い落ちる白い羽は繊細な私の心と共に舞い上がり、
金で縁どられた美しい奴の鼻と一緒に秘密の湖で静かに踊る。
あの時君の優しい瞳に約束した有料メッセージの煌めきが私をそっと包み込み、
永遠という名のベランダで自由を奏でるハープの音色に絹ごし豆腐のファンタジー。
ああ、希望に満ちたチェリービーンズ逹の笑みも懐かしく、
君と彼との友愛の花畑に散った一輪のヨーヨピアンフラワーの思い出が世界を変える奇跡に微笑む。
止めどなく泣き叫ぶる白銀の天使逹の囁きはコバルトブルーの水面に浮かぶセリーヌのピザーラの如く、
虹の果てまで安らかにぶっ飛ぶわ。
耀くシャンデリアの様な未知の光に照らされた彼と私の前頭葉にどよめく地中海の精霊逹は、
どこまでも続く天空を駆け巡る栄光のプレミアフレッシュ。
ロマンチックに見上げる今日という日の特別な星空に躊躇なく降り注ぐ流れ星と全てを振りまくペガサスの痕跡に乾杯。