肺の中に少しづつ小石が積み上げられていく
息をする度にジャリジャリと音がして
不快感に空咳を繰り返す
石に冷たさに体がいつも震える
石は増えていく
声は交わしているのにに
その中に確かに混じっているのに
肺の中に小石が
言葉をジャリジャリと
肺の中ですり潰していく
満足に息も吸えないから
やがて声は言葉になる前に抜けていく
顔だけが不恰好に歪む
何も伝わらない
気が付くと何も聞こえなくなっていた
周りを見渡すと
皆青白い顔を歪めていた
虫のように蠢く彼らの口元は
笑っているように見えた
そこからは空気の漏れる音しか聞こえない
しかし何処からとも無く石の擦れる音が聞こえる
それは僕の中からでもあり
僕以外の中からでもあった
それ以外は何も無かった
無い事が当たり前だった頃
僕らは指の間から宇宙端を見る事が出来た
増えていくノイズが
網膜に土気色のアクリル絵具を塗り付けていく
あの時見た真空の外の光無く響く無が
今も心の穴から入り込んでくる
そして交じっている時に見た空は
矢張り土気色をしていた
右耳から地球の端の崩れる音が放たれ
左耳に戻っていく
それは波長を変えて口から出て行く時に歪んで
光となって目の前を土気色に汚した
笑い声が聞こえない教室
皆目だけを零れ落ちそうな位に瞼を開き
黒板消しに付いたチョークの粉から世界を眺めた
黄色と白と青と赤とオレンジが入り混じり
やはり土気色をしていた
もう眼球を抉り取るべきだと
世界は一つになった
僕らはまた宇宙端を眺めた
そこには何も無かった