【即評価】 ㈲ Poem Factory Ⅱ【工場】

79あばらや ◆61ynRipd12
「叫び」
電車が橋に差し掛かり 月の下 叫ぶ男が現れる

土手に仁王立つ乾いた血と泥に塗れた痩せ細ったボロ切れ 
焦点の合わない眼ひきつった笑い右手に握った鉄パイプをこちらに突き出し
届くはずのない金切り声を発している
いつものようにその姿はすぐに流れていき
単調なリズムだけが電車の中に戻った

駅前で母の好きな漬け物を買ってバスに乗り込む
窓に映る疲れきった顔には叫ぶ男の残像
眼を伏せる

真夜中 母の呻き声に目が覚め枕元にしゃがみ込む
嬉しそうに漬け物を食べていた顔には苦悶の表情
じっとその寝顔を見つめていると台所で水が跳ねたので俺は蛇口を締めて布団に戻った

次の日
土手の上の叫ぶ男の横にはすすり泣く女が