言葉が循環する
ひとりでに穴を掘って
流れ去るようでも
人知れず帰ってくる
四季が巡るように
夏の太陽は高く遠いが
ああ海を越えた所の町で
その輝きは
年寄りの心臓を止める
或いは凍ったジャガイモ
しかし一般に季節は
人々の心を驚かさない
自然の象徴的な表れを
慈しむように眺めるだけだ
風上から花の雨
も止んでいた
はたして
わが心を脅かすのは?
気がつくと
もう教会が建っていた
袋小路の塀の上には
あの猫がまだ鎮座している
これは台風の目だ
浄土とヨモツクニを繋ぐ
煉獄の古びた門
土気色の虚無と同じ
ひび割れ方をした
瞳
画家の署名が
残っているかも
美術館の学芸員が
切なげに語ったことを
思い出す
逆さになった絵
滴り落ちるように抜け出る
黒く色付いた魂
裸体の女が
天井に張り付いている
こんな風に
雲がないのは
少しびっくりするな……
心地良い詩の巡り
は齧るとお菓子のにおいがする
黄金色の縁を歩き回って
大きな穴ぼこを見ていると
ページをめくるように
冷涼な風が吹き込んで来る
鐘楼の高みに
いるみたいに