詩が書けない

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102寒気 ◆TPDxMezcT2
言葉が循環する
ひとりでに穴を掘って
流れ去るようでも
人知れず帰ってくる
四季が巡るように
夏の太陽は高く遠いが
ああ海を越えた所の町で
その輝きは
年寄りの心臓を止める
或いは凍ったジャガイモ
しかし一般に季節は
人々の心を驚かさない
自然の象徴的な表れを
慈しむように眺めるだけだ
風上から花の雨
も止んでいた
はたして
わが心を脅かすのは?
気がつくと
もう教会が建っていた
袋小路の塀の上には
あの猫がまだ鎮座している
これは台風の目だ
浄土とヨモツクニを繋ぐ
煉獄の古びた門
土気色の虚無と同じ
ひび割れ方をした

画家の署名が
残っているかも
美術館の学芸員が
切なげに語ったことを
思い出す
逆さになった絵
滴り落ちるように抜け出る
黒く色付いた魂
裸体の女が
天井に張り付いている
こんな風に
雲がないのは
少しびっくりするな……
心地良い詩の巡り
は齧るとお菓子のにおいがする
黄金色の縁を歩き回って
大きな穴ぼこを見ていると
ページをめくるように
冷涼な風が吹き込んで来る
鐘楼の高みに
いるみたいに