★Poem Factory★

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428あばらや
 「私はピアノ」  

ピアノは虚空に放り上げられた
眼下に青い地球 頭上には太陽が燃えている
完全真空 絶対零度 軋む音さえ拒絶される
寒々とした空間

ある一点に達すると 
重力の触手が彼女の脚に絡みつき 引きずり 下ろした

ゆっくりと巨大化していく青い円盤を視ながら彼女は自問する
─なにが おこっ たの 私 は 音楽 室に いて
─ひとりご とをつぶ やいただけ
─私 に弾けな いものは 音楽では な いそれ は 雑音だ と

音楽だ 
音楽がその呟きを聴き
放り上げたのだ

そして 今 ピアノの形態を 電子鳩に 変化させた

瞬間
太陽風のシンフォニーが爆発し
彼女は歓喜の中に砕け散った

その一部はオーロラとなり 
北の空で 
美しいメロディーを奏でた