★Poem Factory★

このエントリーをはてなブックマークに追加
122ゼッケン ◆ZKKEnLZjOY
「流れ」

おれはすんでしまったことのいちぶです
しかたのないかけらです
全体のかたちを思い出せない いっこの
ああ、ちぢこまっていくようです

カチコチと針が動いていって かちり

大きな音を立てて岬の灯台が海底に沈んでいきます

腹から卵をあふれさせた蟹が泥流に飲み込まれました

静けさを取り戻した海の底は冷えたガラスのかたまりのようになり、
砕けた虹や割れた月のかけらがいちめんに散らばりました

発光する無音のカーニバルです

輝く モノクロームの日の出が昇り始め、化石の海嶺を照らし出します

樹齢六億五千万年の動物でも植物でもない海底の樹が鯨を丸呑みにする影は、
実際、ちっぽけなかけらのおれには大きすぎて
それはまったく、ネオンの下、夜の街を歩くことと同じだった
おれをおそれさせるものではありませんでした。ただ、

大きな口を丸く開いた魚の濡れた唇になやまされ
背骨まで透き通ったぐにゃぐにゃした胴体をちからまかせに両腕で押さえ込み
舌を入れる 悲鳴は おれの身体の中から聞こえる おれの背骨は力を失い、

そしてまた、ゆらゆらとにやけて横たわります。海底の砂はきらきらと光りながら

どこまでも流れてゆくようです