★Poem Factory★

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 「披露宴にて」
セラミックの人形の無表情
カタカタと動く唇
僕だけに聞こえる 呪文
父が母を殴る時の 怒号
物言わぬ 母
部屋の隅っこで 人形を強く 抱きしめる
三つの悲鳴で僕は造られた
セルロイドの人形の手を引いて
トコトコと歩く夕暮れ
僕にだけ見せる 笑顔
迎えにくる母の
疲れたそぶり さえみせぬ
大地をしっかり 踏みつけた 足取り
二つの命を 背中に しょって

拍手にふと我に返った
雛壇に飾られた妹を見て 3歳の娘が声をあげた
「おにんぎょうさんみたーい」
「違うよ お人形さんは 捨てたんだ」
僕の呟きにキョトンとする 妻と娘

母が泣いている
義父も泣いてくれている
妹は僕と目が合うと お腹をさすって苦笑い
もう大丈夫
幸せになるんだよ
お姫さま
一つの大きな胎動が ホールに 木霊した