とこよのほこらあり
ひとつのえのき あり
しかのつののえだ おいたり
時と場所の流れを分けあうことなく
骨とくずれた 人間たちの かつては
たしかにあった頭上で なん度でも
ねじ 巻かれ モリの植生 継がれ
じぶんを養分と吸いあげながら
眠りと覚醒を際限なく繰り返す
ものたちの あいだ ゆるゆると固まり
かたちをとった とってしまった
二本歩行が 移動する
それはあたしだ
なまえを付けて 捕獲しかけて
もうすこし 一歩手前で
半透明の なにか 巨大な
手指のあいだ みすみす ほらほら
逃がしてしまう
たましいの飛び去った女
モリをぬけ 灼熱 アスファルトの
吐き捨てられたガムを踏んでも
わからず
むかいのモリに
しろいすあしで身をなげる
根もとに臥す 彼女のうえを
途にまよう男たちが
すばやく 重ね うせる
むこうの木のしたでは
ちちとははとが なにか
している
獲物をさばいて いるのか
粉にひいて いるのか
あるいは ヒ でも
起こしているのだろうか
さっきから
行きつく先はわからない
臥したまま 視線のつかむ
かれらの影は とにかく
全裸で
男と女のうえに
ひとつのえのき あり
しかのつののえだ おいたり
やあね
お願い
はやくして