900 :
てと:2009/05/26(火) 10:35:54 ID:ndBlh2hx
「エコ」
無作為に選ばれた精子より
誕生いたしました
優れた所なぞありませんが
貴重な酸素を貪って
ここにおります
僕の死は間違いなくエコ
きっと地球も夢見てる
でも誰か止めて
901 :
てと:2009/05/26(火) 10:39:53 ID:ndBlh2hx
「労働者」
つかれたかおして
ためいきばかりついてるぼくが
いちばんはたらいてない
きみのえがおはだいたいいたい
ちくちくえぐって
きずつけない
902 :
てと:2009/05/27(水) 09:01:18 ID:qj+xxanv
「適材適所」
ひきこもって
みみをふさいで
だれにもなにもしないし
してあげない
ぜんぶじこせきにんでおねがいしますっていって
おきづかいはけっこうですのでっていって
ぜんりょくでにげる
きみにであわない
ぼくがかみさまだったなら
903 :
てと:2009/05/28(木) 09:07:08 ID:wFEff/8Q
「順応」
腹の中から順番に
消費期限を迎えた僕が
本日めでたく
一目瞭然の
腐敗した何か
へと進化いたしました
地球大歓迎
環境に最強にやっさしーい
無駄飯食ってたかいがありました
みたいな夢を見た
残念でした
904 :
てと:2009/05/29(金) 09:02:43 ID:ljn1mRSS
「青い朝」
まだ明るさは感じられないけれど辛うじて朝と分類されるだろう時刻から
多少昨夜の名残か湿度を纏った窓際に手を掛けて
愛を叫ぶ
雨の中開かれたままだった窓、枠から硝子や役に立っていなかった鍵と存在した空間全てが
堪えかねたように、
もろりと崩れた
まだ日は昇らない
905 :
てと:2009/05/29(金) 10:13:26 ID:ljn1mRSS
「しあわせ」
きみがおとしたひげが
ながくてくろくて
つやつやぴかぴかのひげが
ぼくのあしうらにちくんとささった
ぼくはひびしあわせになっていく
906 :
てと:2009/05/30(土) 09:44:00 ID:RWrqEic6
「混乱」
かつてうやむやにされたさまざまが
ちんとならびぎょうれつ
くつにぼんどをぬったちょうしょくだったので
ぼくは
ころがった
とーすとのにおい
907 :
てと:2009/05/30(土) 09:55:01 ID:RWrqEic6
「困惑」
先延ばしにしていた明日が
突如として現れた
朝食を取るべく訪れたキッチンでのことだ
僕は手にした新聞紙に感謝を述べ
何喰わぬ顔で椅子へと腰を下ろした
そして軽く放屁してやった
何のことはない
逃げていたのは怠惰でなく
恐れであるのだから
溶けたバターは嫌に塩辛かったが
何のことはないのだ
もう明日はいない
908 :
てと:2009/05/30(土) 10:41:29 ID:RWrqEic6
「宝」
ドリームジャンボは必ず買います
こずかいでなんとかなる、バラ十枚
そいつを握り締めて
親父の墓場と神社に行きます
掃除して手を合わせ
どうかこれからもあいつと犬が健康で幸せでいてくれますように
って渾身の力で祈って、墓場には花奮発、神社で賽銭奮発、気分爽快意気揚々
で、帰り道、ドリームジャンボのことを祈り忘れたと気付いて
なんだ、僕幸せなんじゃん
って再確認したいから
ドリームジャンボは必ず買います
909 :
てと:2009/06/01(月) 11:45:13 ID:GEzp1vTp
「家」
あおった侮蔑が薄い腹の底でくだを巻いている
やけに冷える夜だが暖まった布団には不快感が濃い
裸のままで夢遊病者のように意識なく歩いた
昼の名残を探し
朝の気配を求めて
さ迷う
とうに凍えた足が辿りついたのは結局温い布団の前で
音も無く持ち上がるその裾に
すがりついて泣いた
910 :
てと:2009/06/02(火) 10:35:09 ID:hlMOiKos
「道標」
するするとながれでたなみだは
ぼくをこのうえなく、
わかりつくしているくせに
つんと、まるきりにしらんふりをして
ほほをかけさった
ひんやりとひかるえんぶんに
ぼくはなめくじをおもいだす
911 :
てと:2009/06/03(水) 13:11:20 ID:eQ1phuiC
終始薄暗い日の始まりに
彼女は紅茶の用意をしてながら僅か
息をついて空を見ていた
小さな窓から覗く灰色の切れはしに
小さく口角を持ち上げた
912 :
てと:2009/06/05(金) 10:39:56 ID:He3VAJbP
「疲れ」
忙しい一日に
ちくちく溜まる神経疲労
吐き出せない言葉を
まともに考えられないまま
おもらしした
汚い
913 :
てと:2009/06/05(金) 11:35:56 ID:He3VAJbP
「思い出」
まだ僕が
カリカリのトーストだったころ
芳ばしさにまろく笑い
空腹を忘れて過ごした
空には泥一つなく
ぜんぶ凪いだ
やはりくたびれていた革靴さえも
ちいさいねずみみたいに
鼻をひくつかせたりした
晩御飯はずっとカレー
じゃがいもがやけに大きくて立派だから
肉なんか無くたっていいくらい
それはもうずいぶん遠い
僕がまだカリカリのトーストだったころ
914 :
てと:2009/06/06(土) 09:14:07 ID:XQnlhR9w
「のろけ」
漁師が一人いる
僕の友人にだ
朝をまるでいとわない彼は
毎日を網で捕まえる
腹ぺこを満たす勇者
看護師が一人いる
僕の知人にだ
疲れを上手く宥めて過ごす彼女は
苦痛を槍で追い払う
そして可愛い、まさに天使
事務員が一人いる
いままさにここにだ
惰性で生きて、命をくいつぶしてる
いつも何かになりたい
ただ犯罪とは無縁の一般人
そんな僕の神様は
多分今掃除を終えて
洗濯物が洗い終わるまで一時
昨日一般人が献上した緑茶を
お飲みになられているはずだ
幸せだなぁ
915 :
てと:2009/06/08(月) 10:45:28 ID:/j7VZNtQ
「自慰」
ちいさなあたま
ちいさなてでなでる
いっしょうけんめいのばしたうでが
かわいくって
さみしい
916 :
てと:2009/06/08(月) 10:49:40 ID:/j7VZNtQ
「判断」
多少乾燥した部屋の中に
一人
取り残されたころ
まるきり昨夜の雨など知らんふりで
日は中天にかかる
眩いそれは完全に公平だ
僕は自分を責めるよりない
917 :
てと:2009/06/11(木) 10:23:17 ID:l0URkJ+k
「熱情」
あめにうたれているあいだ
ぼくの
やくにもたたないねつは
なりをひそめて
くすぶっている
すっかりひえきったあめあがりに
ぼくをころしちまうこころづもりで
いつだって
いつまでだって
918 :
てと:2009/06/11(木) 10:32:23 ID:l0URkJ+k
「飼う男」
犬を飼う男は
毎日を欲しいもので一杯にしながら
静かに黙々と働く
自由な時間を
自由な食事を
自由な睡眠を
夢見
ぼかりと空いた時間を
膝に重みの無い食事を
熱が妨げない眠りを
現実に想像して
震える
夢は夢のままがいい
919 :
てと:2009/06/12(金) 10:09:46 ID:4v3h/8Je
「不相応」
はれまにのぞくあおさが
めにいたい
ぼくのそらはくもってこそなんぼ
920 :
てと:2009/06/12(金) 10:14:18 ID:4v3h/8Je
「朝、一人」
露を含んだ葉が揺れ
ぱらりぱらりと小雨を降らす
熱の孕まない夜の名残に
僕は
泣く
921 :
てと:2009/06/15(月) 11:27:28 ID:s97SESo/
「欺瞞」
夜半に
きみがこぼしたばけつ雨は
じっくりと時間をかけて
僕の肺を役立たずにしてくれた
呼吸ほど無駄なものはないからね
なんて
どの口が言うのやら
922 :
てと:2009/06/15(月) 11:29:10 ID:s97SESo/
「矛盾」
晴れの日が大好きなきみは
でも同じくらい
てるてるぼうずが大好き
だから、僕と一緒
923 :
てと:2009/06/15(月) 11:35:28 ID:s97SESo/
「焼けない」
温度の無い光が
アスファルトに寝そべって
歌い
その場所を様々な様々が
歩き、走り、転び
地団駄を踏み
ピィピィなる小さな靴なんぞは
それだけではあきたらないとでも言うように
お漏らしまでする
ようやく温くなった光は
様々に知らん顔をしながら
つるりとアスファルトを滑ってゆく
夏はまだ先だ
924 :
てと:2009/06/16(火) 09:45:39 ID:Qd4Roz/b
「自業自得」
片隅から世界へ
ぶつぶつと転がし続ける衝動が
まわりまわって
後頭部がはげた
ひどい
涼しい
925 :
てと:2009/06/17(水) 11:49:52 ID:3pbheA0M
「晴れ間」
陽気が
ひっそりと湿り
ぶらんぶらんと
歩いてゆく
汗一つ浮かばない背中は
やけに白い
そこここに微かな血液が
透けてみえ
文字通りの静けさで
何もかも流してゆく
まだ六月
926 :
てと:2009/06/20(土) 13:46:23 ID:pfLEshe6
「羞恥心」
きみの中で飽和した僕が
思うように笑えず
やけにひきつってる
一生分叩き壊した窓硝子さえも
同情的な
穏やかな眼で
僕を殺そうとしてくる
死んでなんかやらない
927 :
てと:2009/06/22(月) 10:58:18 ID:fk/7RRDb
「気配」
ぼつぼつとうなっていたやつが
しつどをおきみやげにして
だいぶんとおざかっちまった
ぬかるんだなんやかやが
ぼくのすそをひっぱって
うっとおしくて
いとおしい
928 :
てと:2009/06/24(水) 13:52:47 ID:FYx8ZWDe
「思考」
みちでひろったこいしを
つやつやしてきれいなこいしを
きみにおくった
きみはぼくがこいしにめをとめたしゅんかんをうけとって
ありがとうとわらい
こいしをすてた
929 :
てと:2009/06/24(水) 13:56:43 ID:FYx8ZWDe
「寝床」
蒸し暑い夜に
星を投げた
無造作に転がったそれは
いるべき場所に安堵するどころか
暴投だと罵った
恩知らずめ
愛してやる
930 :
てと:2009/06/26(金) 09:19:51 ID:+d1B5jia
「一部分」
輪郭のはっきりしない影が
今日も笑いながらかしずいて
盛んに僕の足を取る
僕が転んでも
自身になんら不都合などないみたいに
それがまったくの事実であることがしゃくで
僕はうつ向いた
931 :
てと:2009/07/22(水) 10:06:13 ID:IJYIBZuz
「不安定」
昨日壊した腹が
まだ痛む
とっくに期限の切れた苦しみに
思わず笑った
932 :
てと:2009/07/22(水) 10:11:19 ID:IJYIBZuz
「不安定」
頭上から降り注ぐ不安が
僕の全身を潤わせ
拭われることないそれが
端からじわじわ
錆びてゆく
晴れはない
933 :
てと:2009/07/22(水) 10:20:39 ID:IJYIBZuz
「不安定」
雨天
足元に触れる湿度
項垂れた頭髪
後頭部の錘
眼底に貼り付く不安
さようなら
934 :
てと:2009/07/23(木) 09:10:36 ID:UqQHYlDm
「泣かないで」
あからさまに過ぎる嘲笑に
早朝から僕は呼吸をひきつらせる
見た目ほどには丈夫に出来ていないことを
きみに失念させた僕の落ち度だ
ごめんね
935 :
てと:2009/07/23(木) 09:20:42 ID:UqQHYlDm
「泣かないで」
土は火傷しない
アスファルトみたいに茹だらない
そうなりたい
936 :
てと:2010/03/20(土) 21:14:18 ID:zeovgbdp
「将来性」
影を残して飛び立つ鳥が
重たい夜を歌う
僕が笑い続けるのは
欠けた視野にきみを感じるからだ
見えなければ不安に思い
見えてしまえば不信に黙る
与えられてばかりの意気地なしは
道化になるより他に無い
中ではパーティー
わたしは廊下で荷物番
母がわたしに任命した係り
母のこういうところが嫌いだ
でもこの廊下にいることはそんなに嫌ではなかった
一掃された大地に変形した植物が並ぶ
墓標だといっても疑わない
生きる資格を失った魂での命乞い
太陽は従順に変貌したのだ
ひとであったころは一度だけの昔話
いつもより長めに電車に乗って
いつもより長めにバスに乗った
初老の夫婦が気さくに声をかけてくれた
こんな感覚いつ以来か
山を駆け足で登ってみた
半分で心臓が焼き切れ寸前
出来たての酸素を頂いてしまおう
頂上で何も考えずぼーっとする
さて、もうちょっと頑張れそうだ
コンクリートのまちに帰ろう
ピンクグレープフルーツのシャーベットを青いリキュールに溶かす
僕が溺れる様子を見てて楽しい?
純粋の名を持つもの
ひとりで泡になることは許さない
理路整然と並んだこの世限定の「生きる意味」が全て正解なのは分かるけど
君の存在ぐらいで全てを台無しにしてしまうから
君がひとりで泡になるくらいなら僕がひとりで泡になる
豆腐をつまようじでチビチビ食うようなものだ
ぐずぐずになって完食前に腐っちまう
片付けられない病です。
診断が下ったらその症状を演じればいいわけだ
お薬はキャラメルです。一生これなめてなさい。
先生の心から面倒くさいというお顔が私にとって一番の薬です
カーテンも電灯もない何も無い部屋
ひとひとりと本一冊が転がる部屋
横たわれればそれでいい
僕になってしまわないように物はいらない
なにもいらない
昨日より500gぼくが消えた
今日も消して
だんだん消せばいいんだとおもった
選択は正しかった
どんなに威嚇されようと何も起こらない
そんなものは慣れるから
くだらない迷いが消える
これまでもこれからも喋らない
霧に見え隠れするその丘には 白い樹木の脇にたつ白い馬
近づけば遠のく
白黒の世界に白と黒はないんだった
浮かび上がる影がつくる物事に示されたい
きっと耐え難いほどの事実でやっと生きられる気がするから
午前三時の屋上は無人島
地上から浮く赤い波はなにかの前兆に似ている
青白いトゲトゲの細かい星を一握り炭酸水に混ぜて飲みたい
20%くらい凍っててキンキン喉も頭も痛くなる程冷たいやつ
まったくもって夜行性動物の習性はどうしようもないな
もっともっと正論をください
心地のいい絶望が欲しいのです
きれいな水を両手にためて
そこに映る醜いものを絶望させてください
絶望に望みを託すこの大馬鹿者が絶望そのものでした
948 :
てと:2010/07/19(月) 23:11:04 ID:qHCG9hqN
「現実性」
日暮れに落ちる鳥の声
ぽつぽつと転がる嘆息
闇に浮く空
零れるほどの湿度を孕んだ風が
壊れたサッシから覗き込んでくる
あした
靴を買おう
鍵が半分開いている
出来事はいつも短い時間に起きる
鍵をかけることに疲れるか、開けっ放しに慣れるか
そんなことを考えたのはつい最近の昔のことで
今はかつての宝物がガラクタに見えてしまうんです