一日一編

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432いぷ ◆Ipu.IfZyao



水面に浮かぶ月を見下ろした私の目は
連綿と練られた闇の中で白濁してはいないか

山際を越えてくる銃声に耳を塞いだ
肺を突き刺す冷気に息を止めた
目だけを見開いて今私は月を見ている
私は月を見ている

魚が跳ねて そして跳躍する
木葉が落ちて そして波紋する
風が吹いて そして蠕動する
そして位置を保とうとして崩れる

今 私の黄色く薄く短いアイデンティティは
錆付いた意識の蓋の奥底で微睡してはいないか

故郷を忘れて
自らを穿った銃剣を抱いて眠る人よ
どうか どうか
静寂を強いて突っ伏した私と同じ夢を見てくれ

左目は失って久しい
今は右目だけが月を見ている