【一日の】塊と塊の繋芽【嘔吐】

タキシードのいぬは
昨日生まれたばかりの嘘を煮詰める
ドレスを忘れたねこは
ガス室に横たわるぬいぐるみの綿を
食べやすい大きさに千切る
召使いのひばりは
空と地面の背骨が
均等になるように木の棒で伸ばす
盲目のはとは
何も考えられずに鍋を掻き回す
家族でも親友でも恋人でもないぼくは
テーブルの上で
花言葉のない花の葬式を飾りつける
この家の主であるきみは
暖炉の火のなかでそっと身を潜めて
この家のなかに裏切り者がいないか
青い瞳から蝋を零しながら
ぼくらを見守っている
そうして晩餐がようやく朝を告げると
ぼろぼろとかび臭いパンと
味のしないシチューをこぼしながら
ぼくちはどこかへ消えてゆく