291 :
bottom in the depths ◆hmvCcJH4do :
体育すわりをしていると
こどくにおそわれるのはなぜでしょう
ぼくはときどき思います
せかいじゅうの人たちが
もしもすべて死んでしまったら
ぼくはどうなるのか
ぼくはもっとおおきなこどくに
おそわれてしまうのでしょうか
ぼくはそれを思うと
よけいにいまの体育すわりがとてもこわくなります
いまがとてもこわいので
ぼくはいつもねむってしまいます
ねむるとぼくは
すべての感情をふりきって
ぜんりょくで
せかいを
ひていします
ぼくはぼくがきらいです
キャッチボールができるようになりたいのです
292 :
bottom in the depths ◆hmvCcJH4do :2006/06/17(土) 17:57:33 ID:TkboNrNc
ぼくはさびしい
まいにちまいにち
おもいのだけれど
きょうはとてもおもい
つまらないべんきょうをして
つまらないアルバイトをして
つまらないマスターベーションをして
つまらないゆめをみる
つまらないまいにちのなかで
つまらないじかんをすごす
つまらないぼくは
ほんとうにつまらないにんげんだ
からだがおもいので
いっそしんでしまいたいぐらい
ぼくはさびしい
あさはくるまがうるさい
ひるはにんげんがうるさい
よえるはひかりがうるさい
うるさくて
とりのめざましも
せみのなきごえも
ほしのまたたきも
ぼくのなかからきえてしまった
うるさいつまらなくてうるさい
しづかなしづかな胎動のなかに
あたまをうずめてかえりたい
さびしくてつまらなくて
つかれてもうるさくて
しねないぽつんと月のした
たまごと豚ロース肉の詰まった
スーパーマーケットのふくろをぶらさげて
とぼとぼと歩くぼく
293 :
bottom in the depths ◆hmvCcJH4do :2006/06/17(土) 17:58:11 ID:TkboNrNc
りんごはどうしてあかいのか
ぼくはせつめいできません
どうしてあおいものもあるのか
ぼくはせつめいできません
りんごをみていると
ぼくは穴のふさがった女のひとを思います
とてもみずみずしくて
とてもかわいらしい女のひとを思います
かじってしまうと
なかからあまいみつが
とろとろでてきて
のうみそがしびれそうになる
あたまからでた
ちょこんとした枝は
ぼくにはほやほやのへその緒に見えます
つながりたいと思う
女のひとのせつなるねがいに見えます
そのねがいのしたにある種が
ぼくにはそれが女のひとの想いのかたまりのように見えて
ぼくはそれまでもたべてあげたい
あさぐろくひかって
とてもいじらしくあいらしい味がきっとするのでしょう
りんごはどうしてあかいのか
ぼくはせつめいできません
どうしてあおいものもあるのか
ぼくはせつめいできません
ぼくのいなかは秋田です
つぎにうまれるときは
きっと青森にうまれたい
そうしたらちゃんとりんごのせつめいができると思うから
いまは想うことでせいいっぱいです
294 :
bottom in the depths ◆hmvCcJH4do :2006/06/17(土) 17:58:54 ID:TkboNrNc
ろっぴゃくえんのウィスキーボトル片手に
犬の散歩にでかけます
田んぼのあぜ道を
ぶらぶら歩いていると
いいにおいのする
女にであいました
けっして逆らわない
おおきなからだをしていて
ゆらゆらと炎のように
つかめないからだを
ぼくにみせつけるようにして
けっして逆らわず
そよいでゆきます
犬はひどく怯えています
ぼくは逆らってしまって
逆らうことしかできず
女はわらいながら
消えてゆきました
犬はよだれをたらして
ないています
じめんのしたを
とおっていった風は
なまぬるく
ぼくに逆らって
犬をつれさってしまいました
ちょうど雨のにおいがした
そんな灰いろのゆうがた
ぼくはひとり
つちのなかにいる
酩酊の妻を思うのです
295 :
bottom in the depths ◆hmvCcJH4do :2006/06/17(土) 17:59:27 ID:TkboNrNc
あなたが殺された
わたしが丸くなって手をあげた
みんないっしょに
かわゆらしい
血だらけの手をあげた
月が出た
丘の上に人が立っている
帽子の下に顔がある
犬の影におびえながら
みんないっしょに
かわゆらしい
手をつなぎ
竹の音を聞き
月を見た
丘の上に人が立っている
帽子の下に顔がある
わたしが殺された
みんなも殺された
丘の上に人が立っている
帽子の下に顔がある
その影に
犬がおびえている
竹が地面の顔に
ひかっている
帽子の下の
かゆらしい
あなたの顔
月にてらされた
わたしの幼い
おもいで
296 :
bottom in the depths ◆hmvCcJH4do :2006/06/17(土) 18:12:43 ID:TkboNrNc
さんびなぁ、さんびなぁ
からだのなかの先っぽていう先っぽ
じりじり、じりじり、ぎりぎり、ぎりぎり
じらじら、じらじら、ぎろぎろ、ぎろぎろ
どれも違うなぁ、でもいでんだ
いでいで、いでいで
ああ、あん時のおめもいでがったんべが?
「これ本命だから」
それだけ言って走ってった
なんで好きって言わねがったのよ?
おれどうしたらいが分がんねべよ?
三月十四日におれがら言えば良がったんが?
なしてその次の日からおれをじっと見んのよ?
教室でも廊下でも校門でもなんで見でんなよ?
おれ初めでだったから
そんなの初めでだったから
知らねふりしてだけど
おめはいっつもおれを見でる
いでがったんが?
ずっと待ってんのいでがったんが?
さんびなぁ、さんびなぁ
こんなにさんびのに
月はあんなにきれいだがら
今年の今日は勇気だして
名前でおめを呼んでみるが
えーと、んーと
好きです、好きです
大好きだ、大好きだよ
「おめ」
いでいで、いでいで
こんどは先っぽじゃねくて芯のほうが
ああ、いでいで
297 :
bottom in the depths ◆hmvCcJH4do :2006/06/17(土) 18:13:17 ID:TkboNrNc
ゆっくりと
ねっとりと
たべていって
はっていって
もどかしくて
ときどき
のらいぬになって
きばとつめで
あなたをうしろから
むさぼりたくなります
まだあおすぎたひのおもひでも
あっというまに
ちゃいろのからにつつまって
ぶらさがって
なんだかかなしいひを
すごしています
あなたとは
たがうことのない
そらのした
ああ、てふてふ
ああ、てふてふ
わたしには
成りきることなどできやしない