855 :
名前はいらない:
真っ黒に雲った 夜の空を歩く
いびつな月の光が 多角形の視覚を作る
嗚呼これが 道でしょう(せめてその無軌道な歪さが補正できることを願います)
光は薄く 濁った紫色に見えるのは何かの欲求なのだろうか
眩しくなく 強くなく 美しくなく ただ怖い
何故に それでも歩いてゆけるのだろうか
買ってもらったブーツは もうないよ 裸足は 少しだけ 寒い
(冬の闇の上空がこれほど寒いと思っていませんでした)
もうせめて ドラマチックに みぞれが打ち付けてくれないか
もしくは真っ白な雪で 温かく見えるように してくれないか
誰か横で 独り言を言って くれないか
もしくは 落下を許可して くれないか
もう 許しては くれないか
嗚呼この空の道は 重く 沈み ひどく歩きにくい(この暗さによって引力が増していると思うのです)
どうにも 足に伝わる 感覚が ないんだ
銀河鉄道の夜で 涙した光景など ないんだ
あまりに薄暗く 星はなく お連れはなく 涙もなく
僅かな紫色の夜に囲まれて びくつきながら 最期の宣告に向かって 歩く
恐ろしい 夜