「秋の日に」
落ち葉を踏みながら散歩道を歩く
雨に打たれ、金具に青錆浮かせたブランコも
目を向けられる事もない盛りを過ぎた桜並木も
静かに風と揺れるばかり
夕日が海へと溶けていく
蒲公英の綿帽子は赤く染まり
枯れ葉と共に揺れながら風に流れる
青深い影が山間から後を追い
遠い空に鰯雲が濃淡を浮かべ
やがて月が星と共に版図を占める
草木から蟋蟀の独唱が彼方此方に響く
水辺は蛍の煌きに彩り飾られる
薄野は金の身を月光に晒し
彼らの愛を風とざわめく
秋の日に
老いたもの 出でるもの 恋するもの
全てに風は吹いていた