636 :
題名『農夫の稲刈り』:
秋の日の涙袋 熟れた柿潰れたよう
朱が影に鎔けてゆくような夕刻の齢
その時ずっと悲しみの寝床で寝たきりの誰かが
漸くふと布団を蹴って身を起こそうとしている…
たったひとつの真実がないのならば
にぎりめし咽を通るのも私が死ぬのも同じ事
もしもこの先が無いのなら
無いことさえもわからないだろうし
もしもこの先が在るのなら
相変わらずに思い出抱いてどこへ行こうか?
曼珠沙華の花弁の取り留めのない様はこの世
今ゆっくりと 全てが影に満たされようとしている…
燃え盛る稲穂も…
刈入れの農夫も…
河原に遊ぶ彼岸の花達も…
みんなみんな 影絵になる…
今ゆっくりと… 全てがゆっくりと… そして静かに…