白と黒

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街は夏に覆われて
おれはアスベストの舞うセンター街を
前掛けを腰に巻きつけ
走っていたんだ

崩れた街は「頑張ろう」を合言葉に
再生の新芽を育てていて

おれは配達のバイト

サインを貰う時に女子店員の胸元からブラを見る術を会得したり
どうすればサボれるかを真剣に考えたり
ポケベルが主流で携帯は高値の花で
何もかもが夏で彩られていて
その土地で出会う人の大半は
必ず 家族か知り合いが死んでいて

瓦礫の街は甦るために必死に生きていた
おれはそこでのうのうと息をしていたんだ

懐かしい友人に声を掛けるように
死にも気軽に声を掛けたよ

誰よりも大声で笑い
誰よりも空想し
誰よりも己が可愛かった

夏の湿度がおれを満たして
暗い夜を作ったんだ 光と影があるように
こっそりと