白と黒

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僕は詩人になりたくて
こっそり家を飛び出したんだ

リュックにノートと鉛筆と
親の財布から盗んだお金
喉に何かが詰まったような
変な気持ちでポケットに押し込んで

玄関のドア 閉めた途端
世界が動いている事を知ったよ
毎日毎日見てる風景
その日だけは空気の輪郭も見えたんだ

何処にでも行ける気がして
薄暗くなった街角を
遠くへ遠くへ走ったんだ

電車に乗って夜が終わる頃には
知らないマンションの階段で眠ったよ
コンクリートは冷たくて
それが生きている証のような気がして
上手く寝付けなかったけれど 嬉しくて震えたんだ

たった一人ぼっちなのに 何も怖くなくて
空が明るくなる頃 また僕は電車に乗ったんだ

ただただ遠くへ行きたくて
ただただ詩人になりたくて