無 音 独 奏 第2楽章

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738やわらかい蟹 ◆6P3vWUZtcI

     「 まんげつやぶれ 」

黒衣の裾野を切り立つ声だ まわる まんげつ
まんげつ 霜がねむる たべるリンゴ

りょくもんがんの こえ  
りょくもんがんの こごえ
まんげつが 落ちる  
まんげつが 溶ける
ひとひとり たちさるはやさだ

悲しくもうれしくもないけれど モノクロームの草原 頬にチクチクと
火をはなつ まんげつ 腰を軸にしてひねるまひる
燃えているのもやっぱりまんげつ
リズムに乗って泣いたまんげつ まんげつ ひとつぶ まんげつ
まんげつ 向かいの旋盤工場から いっしょうけんめい手を振る 
壁掛け時計のように スタッカートしたまんげつあざやか
はんぶんがザラザラしているのはしょうがないとしても
突っ伏して頬を押しつけていたいのは
なぜだろう?


739やわらかい蟹 ◆6P3vWUZtcI :2005/11/25(金) 00:26:00 ID:LB2U+xTT

肌と肌がふれあって はなそうとすると爛れてしまう
ことばが先かこころが先か もはやまんげつだ
男はさむざむとしたそらをさししめし そろそりしり するすれよ
まんげつに撃ちおとされた女 足首から電柱にまきつき
もう少し ふたりでいたいから いたいから
地面にすりつけた黄燐マッチ 昔語りをして けむりも残らぬ季節を なつかしむ
――ある日 まんげつが 光りのように生まれたけれど
――それは にんげんのことばで ころされてしまったよ
――君とぼくが ぼくと枯木が 枯木とこころが やぶれたヒフみたいにばらばらなのは
――大地が まんげつのなきがらを はんぶん 引き裂いたせいさ
――ちかごろ はんぶんだけ冬の匂いがする
――風がまんげつをあける音 まんげつ まんげつ
――君の血がかたまる音だ!