お堂々         

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815快楽童子 ◆plhXCa4.HY
「ランナー」

台所へ降りるとみんなが笑っている
父も母も妹も祖母も笑っている
すがすがしい朝

玄関を出ると大きな雲が湧き上がっている
小雨がふっていたが傘はさしたくなかった
佐藤のおばさんも横川のおばさんも笑っている
大通りに出て喧騒の中、ウィンドウに鈍い光と影が流れていき
アスファルトにはまだ熱気とビーチサンダルが走っている
そして鈴木も加藤も山本先生も笑っている
雨がつよくなりだした

さかさまになったサラリーマンは風にのって笑い
日差しを避けた親子も笑う
犬も鳥も猫も草も木も笑い
本屋も服屋も八百屋も肉屋も魚屋も
僕は走りだす

日傘と小学校のプールも
うるさい蝉の声も
波の音も
入道雲も
太陽も
みんな
やさしく、やさしく笑っている
笑いながら遠くにいく

やがて雨がやんでがっしりと大きな虹ができた
僕はそれを息切れのまま
ずっと、ずっと、ながめていた