虚無のひかり

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85(kau-a)
嗚呼ひかりとは
こんなにも冷たく明るく
俺達を粉々にする

灰色の瓦礫の朝から足はこぼれ
霜を踏むその仕草も凍り付いた
革の匂い草の間左手にひり付く痛み
手袋はどこにしまつたのか
きつと朝焼けの引き戸にひつかけたまんまだ
遠くに霞んだぼやけた丹沢山系に目を細めて
木々の隙間を緩やかにはしる
ごうと鳴る車輪は耳を裂き
俺は階段を下りて日常に降り立つ
そうしてまた不満を溢しながら
車輪を回しながら人を見上げながら
灯火のためにひとりの夜を越えるだろう
商店の落した香りに足を止めつつも
ひとり革靴を溢す

真っ暗な部屋 手を伸ばす前に
いつでも思う

嗚呼ひかりとは
こんなにも冷たく明るく
俺達を粉々にする