〜〜詩で遊ぼう! 投稿梁山泊 14th edition 〜〜

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188神経 1/4
1 試作


巨大な高架を支える橋脚の柱石に
落ちている赤いライターを
右折車線の窓外に見る

 (あっちの崖でさ)
 (うん)
 (あの山の、海に突き出してる・・・)

下校する高校生 ベビーカーを推す女を
田舎の道で
フロントガラスの向こうに見る

 (一番大きい?)
 (そこらしいよ)
 (じゃあ、あれ嘘だったんだ)
 
ガード下のうらびれた公園の脇に落ちる階段
その真裏の支柱を背に車を停め
買ってきたハンバーガーを食べる

 (多分)
 (あたし海いきたいなー、家やだ)
 (あの崖のカーブ、海に突き出した・・・急な)

夕暮れの空に カーステレオが鳴る
ホルダーのシェイクに手をつける
空席のナビシートには目を遣らない

 (いこうよ)
189神経 2/4:2005/04/06(水) 13:36:05 ID:OJU4Erzh
 (海?) 
 (うん)

夜 山麓を川沿いに抜ける国道を走る
あの時と同じ景色
もう一度 海へ
 
 (行こうか)



川?
うん
川沿いなんだな

 (黎明の野に鬱勃する森の影
  遠景の稜線に朝陽が留まる
  静止した分暁の空)

暗いねぇ
夜の山だから
んー 

 (女は森へ その歩行に呼応し湧出する大理石が
  彼女の蹠を受け止める 歩揺する長い黒髪は
  その一揺れに束と落ちる)

やばい眠い、危ない
川がきれいだ       

 (女を追う 大理石の経路には
  瘢痕に蝕まれた肢体の残片が
190神経 3/4:2005/04/06(水) 13:37:22 ID:OJU4Erzh
  縷々と連なり重なっている)

見えるの?
ううん
ん?

 (ウッドソールと大理石の衝突に
  明滅する言葉らが、
  足元に散る肉塊を整複していく)

見えないけど
どっち
きれい

 (歩一歩と 致命的な歩み)



透明な色石の渥美の肌に 
とりどりの華辞が彫金される

 (ここはシルバーでなく
  イエローゴールドで)

削りだされていく浮文の肌に
恍惚と浅笑する女

 (ジルコニアを埋めて 半貴石がいい
  濁った石が好きなの)

肉体を失った言葉の幽霊が
逸遊する この際涯
191神経 4/4:2005/04/06(水) 13:38:02 ID:OJU4Erzh

 (虚辞の海風がまた私の肌を磨く
  この石も あの風も 一体誰の言葉なのだろう)
 
圏点を打たれた黒髪が号してる
シフォンの海 鉄の海畔 布と金属の海景

 (でも、どうしよう)
 


2 君へ

脳神経を一本に抽象化できたとして、
その縦断面を観察する。そんな詩を書きたかった。

この抽象的脳神経は精神総体の隠喩であり、
読み手は、言語化された知覚、記憶、夢などの精神現象を、
この作に於いては意識から無意識のベクトルへ下降していく。

妄執。

試行は続く。

いつか、あの女との海へのドライブを、
記憶の捏造によって再開する為に。
そして君と、
意識の上に偽造した世界で再会する為に。

そう思っている。