無映像詩集 十三
繰りかえす波の背に
ぽかんと開いた白いYシャツの
香りがせり上がっていく
産湯をすすって
わだかまりを見てとるのが
煩わしいと思ったので
目を閉じて浮かれるまいと
つとめた
のだが
金属音は
ふたくち目で 目まいが起きた
それこそが望まれた
偽りだと知っていて
おののきが治まらないまま
残月をくるみ
鱗を剥くまで 愛した
指に刷りこませろ
壁には馴染まないのだから
かぶさるように蛇のように
左目と右目の
間にある深い谷間
を知る ことこそが
朝露が降りるのを待って
美しくなりそこねた
羽虫の話を
耳の奥で聞いた
たゆみない丘の伏し 震え
ひととせののち
都を宿すまで 愛した