『膜』
いつのことだっただろうか
アメーバが全力疾走している
そんな朝に僕は人生の幕を見た
あの日、浪人5年目のベンゾウさんは
やっと光合成ができるようになったといって葉緑体を分けてくれた
しかも口移しで
生まれて初めて死を意識した
きっと世界のどこかでは尼さんがお経唱えながらオナニーしていたし
一方では道に迷ったピザ配達員が商品をつまみ食いしていたという可能性もあったのに
僕は自分のことしか考えてなかった
ベンゾウさんの舌の感触は今でも鮮明に残っている
きっとその感触こそが人生って奴なんだろうと
浪人1年目の僕は思うのである