〜〜詩で遊ぼう! 投稿梁山泊 12th edition 〜〜

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246もっと、ぜんぜん
びっくりするほど真っ白にくもったきれいな空を、
はばたくように飛行機がとんでいきました。
もしかしたら実際にはばたいていたかもしれないあの飛行機を、
じっと見つめながら僕はマンホールをよけつつ歩いていました。

あの飛行機にまたがっているだろう君は、
雲の上に突きぬけていったのでしょうか。

君に「突きぬける飛行機」の話をしてもらったのは、
ずいぶん前のことになるかもしれません。
「さみしい思いをたくさん見てきたら、
突きぬけていく飛行機が、
あたしをさらっていって、
それでもっとぜんぜん見たこともないような思いを、
見せてくれるんだわ、きっと」

「その飛行機ははばたいてるみたいに見えるの。
でも実際にはばたいているのかもしれないのよ。
だってそれにはまたがらないとわからないし、
またがってしまったらもう見上げることなんて、
なくなってしまえるんだわ、きっと」

君は見上げたくなかったみたいだけど、
僕がいまこうして見上げてることは、
決してさみしい思いなんかじゃないよ。
もっとぜんぜん君にも見えてた思いなんだと思うよ。

そうつぶやいて僕はマンホールに飛び乗りました。