804 :
名前はいらない:
『バス停』
心が、ぱきっ、と折れてしまって逃げ出したあの日
電車のシートで我に返ってポケットを探ったけど、何処かに泊まれるお金さえ無かった
よく知らない駅で降りて、ただ、ただ、歩く。
コンビニを渡り歩いて、なんとか真夜中まで時間を潰す
誰とも触れたくないから、体を売るのは思い留まっていた
体が千切れてぽたぽた流れそうな疲労。
やっと見付けたバス停のベンチに、自分を抱くような姿勢で体を投げ出して。
どろどろに疲れ切って、かえって眠れないままずっと空を仰いでた
耳が痛くなるくらい、静かな、よる。
こんなに、こんなに、月が明るくて大きい。
ひとつ、大きく深く息を吐いて、生まれて初めて自分の為に泣けた気がする。
結局、誰も何も変わったものなんか無くて、綱渡りみたいな日々が戻っただけ
それでも、前よりは少しだけ頑張れる、と思う。
夜が暗くて、月が明るいことを忘れずにいられるあいだは。