君のセンス五段階+αで評価するよ [Part.12]

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野原に沈んだ草の深緑は、和菓子のほんのりとした甘みを思わせた。
草に埋もれた僕たち二人は蒼天を仰ぎ、餅を搗いた様に不恰好な雲を眺めてた。

空気は何処までも透明で、風一つない。
このガラス細工の如き繊細な雰囲気は、一言でも喋ればひび割れて消え去ってしまうような気がした。

雲はみじろぎせずに浮かんでる。
多分、町の雑踏を歩いたり走ったり、うろついてたりしたら、本当に動かなかったに違いない。
でも、今僕たちは草や花の間に伏して、白い雲を見上げてるんだ。
ここでは、ごく僅かな動きを、はっきりと目に焼き付ける事が出来るのさ。

「ねえ君、僕たち地球の何処ら辺にいるんだろう」

「はて、何処だったかしらね。何処でもいいじゃない。」
 貴方が望むなら地獄で業火に焼かれたって本望だわ」

「それじゃ、余りに救われないよ。
 神様だってにこにこと僕らを見下ろしていてくれてるさ」

「そうね、じゃあ天国にでもしようかしら。二人そろって行けるといいわね」