*前の人がお題を書き込むスレ その9*

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930 ◆hon/GWhNf6 :2006/03/07(火) 20:52:25 ID:uVVCAw03
「ガール・デリュージョンと駅との線的関係[精神]」

薄氷を踏んで駅を目指す俺がいる
急いで学会に遅刻せねばならない
モノリシックの亀裂が執拗に追ってくるので
昔の女のアパートに身を潜めた

窓から路上をちらちら見張りながら
転がってたファッション雑誌を眺めてると
青づくめのポマード男が猛然と部屋に入ってきて
×××の×××は妄××××と×

そこで得た教訓をもとに俺は
プール開きしなければいけない
暗号解読のキーを見出さねばならぬ

鉱石ラジオから無音のシークエンス
あからさまに駅が体現する精神(亀裂)を前に
永遠に迷いつづける煉獄というわけだ


=====================
次は「風」でお願いします。
931名前はいらない:2006/03/07(火) 22:44:47 ID:XhJyZzO4
「風」

           

         
                      
              
        
                          
            
      
                     
                 
           
      

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次は「カカシ」でお願いします。
932 ◆hon/GWhNf6 :2006/03/09(木) 20:07:25 ID:DQLNZ7TZ
「カカシ」

カカシが大地に一本足を踏みしめて立っている
かつて実りを湛えたその大地も今は茫漠たる荒れ野である
カラス達は人気の絶えた集落の空虚を疾うに感じ取って
カカシの顔面を啄ばんで穴だらけにしている

そこへ大小二つの人影が差し掛かる
「ひどいな。ここにも何も残ってないみたいだ」と大きな人影
「うん。何だかイヤな静けさだね、兄ちゃん」と小さな人影
二人は命綱のように互いの手を握り合って集落を歩いて回る

その時、寒々とした突風がびょうと軒並みを吹き抜けた
カタンと響く乾いた音にぎくりと二人が振り向いてみれば
そこには遂に力尽きて横ざまに倒れたカカシである

「早く出て行こう。こういう場所は、その──物騒だから」
二つの影は頼りなさげに寄り添って
街道を集落から西へと去ってゆく


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次は「迷路」でお願いします。
933阿麻 ◆snPLcxRxd2 :2006/03/10(金) 01:08:49 ID:5Ry4mjqn
「迷路」

いらつく神経を
にぶらせ にぶらせ にぶらせ
グルグル
曲がり角というくらい
四角四面に
わかりやすく
できているはずだと
決め込んでいた
わたしという迷路は
裏切り続ける
自分も。他人も。


ーーー
次は、「ゆりかご」でお願いします。
934名前はいらない:2006/03/10(金) 21:22:23 ID:zBVhYHqk
「ゆりかご」

ゆりかご ブラブラ
木に吊るされて 風に揺れて

セミさん ジリジリ
木に登って 夏の暑さに鳴いて

赤ん坊 オギャアオギャア
必死に 泣くけど
セミさんの鳴き声に消されて届かない

誰も ゆりかご 気付かない

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次は、「雨上がり」でお願いします。
935 ◆notePDkbPQ :2006/03/10(金) 22:45:27 ID:S3uiwSH6
「雨上がり」

雨上がり
水たまりに
映った顔は
ああやっぱり
ゆがんでいる

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次は、「定規」でお願いします。
936名前はいらない:2006/03/11(土) 00:09:36 ID:YXI9IGmn
「定規」



忘れ物を しました
そういえば 今日は定規を使うんだっけ
ああ テストなのになあ
やっちまったわあ

そこへ 同類な子を発見
すかさず 定規を差し出す人
その子は別な子に 借りてったから
すかさずあたしは 貸してって

その人は黙って あたしに定規を
あたしは精一杯 笑顔でありがとう
微妙な空気が流れるけど
その辺は あたしは気にしない

ねぇ あたし達いつからこんなになった?
付き合ってた頃は なんともなかったのに
別れたら その態度
クラスメイトに戻っただけでしょ?

ああ しかも 定規返し忘れた
明日返さなきゃな たぶんまた沈黙だな
嫌だな 嫌だな 嫌だな 嫌だな
***
実話っぽいのは気にしな〜い(゚ε゚)
駄作スマソ

次のお題「花粉」で
937し ◆FCXRNaWgHs :2006/03/11(土) 01:08:21 ID:LF/NRAqN
「花粉症」

―いやあ春ですねえ
そりゃどうも
―春ですよ
ええ
―あのシーズンですね
何でずか(ずず、)
―おや、もしかして
何でずか、どうかじまじたか(ずず、)
―あれでしょ?
はっきり言ってぐださい
―だから、花粉症ですよね
いいえ
―いやあ、どうみても花粉sy
これは慢性鼻炎でず(ずず、ずず、)
―嘘だあ
花粉症はもっとびどいと聞きまず(ずずず、ずず、)
―いや十分ひどいですよ
しづこいでずね、慢性鼻炎だど言っでるでじょうか
―解りましたよ、じゃあそういうことで
ぞれでば!
―お大事に
938し ◆FCXRNaWgHs :2006/03/11(土) 01:09:03 ID:LF/NRAqN
次は「傘」でお願いします
939名前はいらない:2006/03/11(土) 01:51:23 ID:WyS0YWY4
>>937
かわいい。
940し ◆FCXRNaWgHs :2006/03/11(土) 02:10:50 ID:OGi/sKaF
>>939
ありがとうw
941 ◆hon/GWhNf6 :2006/03/13(月) 00:41:33 ID:nwnfaeaA
「雨のホーム、緑のベンチで」

その駅のホームには緑色のベンチがあり、そこで老婆が居眠りをしていた
紺色の傘を抱いた老婆の足元の床には茶の皮手袋が落ちている
宵からの霧雨に曇り空はじわりと重たくのしかかるようで
煤けた灯りは暗い周囲から駅を孤島のように切り取っている

カタタン、カタタンと、二両編成のディーゼル車が近づいてくる
眠りこむ老婆の顔を目映いヘッドライトが照らしつける
轟然と空気を震わせてホームに停車した車両から
二人の労務者風の若い男が降り立って無言で出口へと向かっていく

逆光の陰で顔の見えない乗務員がサッと左手を掲げた
列車は警笛を響かせ速度を上げると、遠ざかってすぐに見えなくなる
雨に包まれたホームは再び静けさを取り戻した

いつの間にかホームに老婆の姿はない
緑色のベンチの上には紺色の傘が横たわって残されていて
足元の床には茶の皮手袋が落ちている


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次は「タイムリミット」でお願いします。
942名前はいらない:2006/03/15(水) 17:59:34 ID:7I544zMF

机の上の鐘楼が
ほら遠いあなたの街からの電波塔とシンクロし
びりびりと零時を告げる
カチリと切り替われる贅沢さ
そしてかなしみ
知ろうともしないのかそっけないそぶりで
また鐘楼は次を準備しはじめる

僕は25時をだらだらと生き延びる






次は「雪と水銀灯」で
943 ◆L4LyBSss3w :2006/03/17(金) 22:42:44 ID:pjXYnGeF
【右腕を落とした雪達磨】

真っ暗な夜道の向こうで
半分熔けた雪達磨がじぃっと立ち尽くす
右の腕の在った場所からほとほとと零れる
流体水銀の青白いひかり

ぼこん、と小さな音を立てて
左の足が砕けた
小さな海のように水銀が拡がり、揮発して消える

とっくに落ちて洞穴だけの蜜柑の目玉
その冥いくらい穴の奥底で
何度も繰り返す、ひとつきりの記憶
呟いてみたけど声にはならず

声は誰にも届かず


何処かのトラックが雪の塊を掻き散らして走り去った



次のお題は【いちご】でお願いします。
944ジベレリン電波:2006/03/18(土) 03:02:21 ID:AocKb1Np
軒下の白さで夕陽がかすむのをみて
晩飯にいちごを食って
水仙が口をあけて
晩飯にいちごを食って
埃まみれでかけてきて
晩飯にはいちごを食って
生ぬるい風が吹いて
ばんめしにいちごをくって
夏が来ても それでも
晩飯はいちごを食ってると
思っていた子どもがいる

ジョッキの汗をすくった指先が赤かった
口に運んだら 悔しいとしかいえない



次のお題は「反骨。アマチュア精神」でおながい
945名前はいらない:2006/03/18(土) 21:32:10 ID:0BXfKmBh
『反骨。アマチュア精神』 【副題:職人モドキは電気ウナギの夢を見るか?】

                             
                        
                
                                      
                        
           
                                          
                               
                   
                                
                  
                                      
それでも、俺は諦めない
                 
                      
   
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次のお題は「空白、美」でお願いします。
946 ◆hon/GWhNf6 :2006/03/20(月) 21:38:50 ID:ugZXqQgF
「小骨と風車」


郷愁に                 多忙に
     攪拌された
            二重に象った

                     悲観的な日々が
あり         一方では奔流
のような

     情趣の望む         所でもある
     いみじくも           帆影が孕んだ
緩や
かな
   漸近線に      波は
               抑えら

れている             波は
      満ちている         隠している

永遠の           世界の
     美貌に             韻脚に




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次は「階段」でお願いします。
947名前はいらない:2006/03/25(土) 03:42:00 ID:xTlB4hNQ
階段

とんとん
とんとん
空に向かって伸びる階段
てっぺんには神様がいるのかしら
一年に一段?それとも5段?
私を抜かしてゆく人達はもうずっと遠くに行ってしまったみたい
もうてっぺんまで上ったのかしら
とんとん
とんとん
ゆっくり上っていた私にも
そろそろてっぺんが見えてきたみたい
顔を覆うほどの眩しい光が差している
ああ、やっと上りきった
後ろを向いて下を見下ろすと、眠る私の姿が見える
人形のように眠っているわ



次は『ミジンコ』でお願いします
948 ◆L4LyBSss3w :2006/03/25(土) 22:02:46 ID:W5yZSAkv
『羅列式ミジンコ』

初めて顕微鏡を覗いた時の背筋がざわつく気味悪さ
蔓延した蟲の群棲
ミジンコは小さい、埃よりも小さい、ゴミに等しく

食物連鎖の端っこに佇む
釣り餌のオキアミ団子の臭気にむせる
ミジンコは小さい、埃よりも小さい、ゴミに等しく

生命だ、と誰かが言った
その証拠に目玉も肢も揃っている
それを思い出す度に無性に手を洗いたくて仕方無くなる

ざりざりと今も肌を逆撫でる
黴臭い図鑑の中の
写真の



次は【豚】でお願いします。
949豆乳 ◆notePDkbPQ :2006/03/25(土) 22:42:04 ID:lYVaNaHs
「豚」

ランドレース
耳慣れないその名前は
豚の品種である

異様に胴長なその姿
肉を多く取る為の
「改良」だそうだ

ランドレース
よく転ぶという
人間の我侭の結果である



次は「アンコウ」でお願いします。
950 ◆L4LyBSss3w :2006/03/26(日) 22:53:57 ID:ktukHoFt
【吊るし鮟鱇】

鉤に提げられたグロテスクな肉に
慣れた手捌きでするっと鋼の刃が差し込まれて
驚く程豊潤な生命が
あたたかな湯気を立てて溢れ流れ落ちる

鮟鱇は何処へ行ったのだろう
重く冥い海底を這っていた、さかなの存在は。

鉤に吊られたままの大きな口
其処に連なった目玉がぎょろんと蠢く
鮟鱇はまだ鮟鱇なのか
豊穣はもう奪われたのに

さかな、として
いのち、として
あんこう、は

微かな腐臭と共に鮟鱇は鮟鱇である事を終える



お次は【消毒】でお願いします。
951名前はいらない:2006/03/26(日) 23:37:04 ID:/IGamINr
『消毒』

農薬が散布された農園にて
虫すら寄り付かぬ 完璧な形の野菜が育てられる
とても綺麗で色鮮やかな野菜
それは農夫の苦労の結晶であり 地上の造形芸術である
生まれ出でた時から その本分は定められており
自らの意思すら 農薬に解けて土に還っていく事だろう

野菜は この地上に蠢く寄生虫に与えられる
やがて 自らが美とする病に蝕まれようとも
寄生虫は美しい野菜を貪り続けるだろう

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お次は【あたたかい】でお願いします。
952名前はいらない:2006/03/27(月) 00:11:15 ID:Ix9Q9/k3
「あたたかい」

桜の季節
遊歩道
切ない
春の
記憶

戻らない
体温
あたたかい
手の中

あたたかい
日差しの中で

抱かれたモノ
全てを

回想することで
浄化する

あたたかい
手の中
風が吹いて
集めた
トランプ
散らばして

次は「規則」
953名前はいらない:2006/03/27(月) 15:56:34 ID:HDWsKZ4g
「規則」

縛り上げて愉快なサディスト
縛られて愉快なマゾヒスト
暴れて拒むサディスト
拒まれてにやつくマゾヒスト

造られたら従う
地球の仕組
従わない者は殺してしまえ

この世は常にサディスティックに
運営されている


次の人は「目線」
954曾村益廊 ◆/5SxO/M3XU :2006/03/27(月) 16:00:47 ID:ZBLS/nR6
『目線』

高架下で吐いてから
時折瞬きをした
たぶんドロップキックのせいだと思った
あとは子犬を飼いたいがアパートなので飼えない時のために実家から持って来たぬいぐるみを捨てるだけだ
ところでさっきから僕を見ているあなたは誰ですか?

次は『クリャンヌ』で
955 ◆L4LyBSss3w :2006/03/28(火) 22:01:13 ID:rJ+qbbSd
『クリャンヌ』

解説をさせて頂きますと
3連目の『クリャンヌ』と言う言い回しには
人が待ちぼうける哀しみとユーモアと
人類愛と白い犬の尻尾の毛を暗示させています
その程度読み取って下さい
クリャンヌですよクリャンヌ
勿論再評価を希望します当然じゃないですか



お次は【掩蓋】でお願いします。
956名前はいらない:2006/03/28(火) 23:30:59 ID:658enBi4
【掩蓋】

第八次世界言語大戦期に作られた巨大な壁
様々な言語兵器による攻撃を妨げてきた
罵倒や侮辱、嫌味から小言に至るまで
多種多様な攻撃環境下にも適応した万能掩蓋である
この掩蓋の御蔭で、我が国の守備は正に堅牢豪壁であった。

まあ、この万能過ぎる掩蓋の成果によって我が国は滅びたのだが・・・

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お次は【言葉では言い表せないけど、とにかく凄い】でお願いします。
957名前はいらない:2006/03/30(木) 15:29:02 ID:Y65sDYUs
「言葉では言い表せないけど、とにかく凄い」

「ちょっと聞いて!」
「何さ?」
「ちょっっ凄いんだって!!」
「え?何が?」
「だから・・凄いんだってのっ!とにかく!!!」
「だからー何がよっ?!」
「だから・・・何か・・こう・・分からない??」
「分かるかっっての!!!!」

次は「届かぬ思い」でお願いします
  
958 ◆L4LyBSss3w :2006/03/31(金) 23:52:05 ID:FTU9wK4Y
【声】

おおきな塊を吐き戻すように
拒否反応で胆の底が痙攣するように
涙も鼻水も垂れ流すままに
おおきな熱のままに震えて

なのに外へ放せたのは声だけで

意味さえ定かでは無い、声だけで。



次のお題は【黒】でお願いします。
959 ◆notePDkbPQ :2006/03/32(土) 00:19:52 ID:TETmbrUL
「黒」

綺麗なパスタ屋 君と僕
お勧めメニューは 何ですか
いかすみスパは いかがです
そうしましょうか 君と僕
ちょこっと待たされ 出てきたよ
いかとトマトといかすみの 
茹で立てパスタが 出てきたよ
美味しかったね 君と僕
互いに微笑み 歯を出して
変な笑顔で 君と僕


お次は
「ボールペン」で
960 ◆hon/GWhNf6 :2006/04/03(月) 22:18:44 ID:CXGUCGQu
「ペンを乞う男」

はあはあと激しく肩で息をした
なんとかギリギリ時間に間に合ったらしい
どうやら愛する妻を死なせずにすんだ
あとは提示された書類にサインすれば助命嘆願は成立するのだ
そのときポケットのボールペンがないことに気付いた
急ぐ余りどこかに落としたようだ
受付嬢にペンを借りようと頼んだが規約で禁じられているという
「あと十分」受付嬢はやるせない、といった同情の顔で微笑んだ
「落としたのが近くだと良いですわね」
私は全力で事務所を飛び出していた

人も通わぬ山奥の僻地──私は来た道を調べながら戻っていた
ドブをさらい落ち葉を掻き分け猟犬のように嗅ぎ回った
だがペンは見つからず時間だけがじりじりと過ぎてゆく
いつしか辺りの風景は来た道とまるで違うようだった
私は吼えていた
「ボールペン一本が人の命か!」
すると十二時を告げる教会の鐘が街から街へと響き渡った
こんなことで全てが終わるのだろうか?
私は何か呆然と現実感を失ったようになっていた
やがて一軒の白塗りの壁の酒場の前に私は立っていた
「注文は何になさいます?」
酒場のカウンターで恰幅の良い女店員にペンを頼んでみた
あっけなく借りることができた
「どうしたんだい、このお客は?」厨房にいた男が訊くと女は答えた
「頼まれてペンを貸してやったら突然泣き出したのさ
妙なお客だよ、注文もしないで!」

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次は「恐竜」でお願いします
961名前はいらない:2006/04/03(月) 23:20:21 ID:qU74ZQNq
「絶滅種」

博物館に鎮座している 語らぬ白骨死体
それは何億年か前に地上を蹂躙していたのだった
しかし その姿は今日まで残る事はなかった
それが絶滅した明確な理由は未だに判明されていない
一説には 強過ぎたが故に滅んだとされている

その博物館には同じ様に絶滅した様々な動物の模型が展示されていた
幾多にも枝分かれした立派な角を生やした鹿の模型
青く美しい毛並みと澄んだ瞳を持つ山羊みたいな牛
その雄雄しく荒々しい牙から害獣と判断され皆殺しにされた狼
彼らは皆 家畜にすらなれなかったから滅びたと言われている

今 巨大なコンクリートタワーのオブジェに飾られ
オフィスビル街のモニュメントを行き交う様を電子映像で流し続けながら
文明と言う標識と共に人間という生き物が飾られている
自然から離れた生活を営み 自然から独立した結果 自然とは別の何かに成り果てた
彼らは 生きながらにして滅びたのだ

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次は「混ざる」でお願いします
962 ◆L4LyBSss3w :2006/04/07(金) 22:01:05 ID:4qa7yLNZ
「閾」

何度かくしゃみをしながら
桜の樹を見上げる
夕方の風はまだ少し冷たい

そこを占めるのはさくらで
その向こうには朱の輪郭をした雲があって
ただ きれいで

もう一度くしゃみ
惚けたこころはあっさり引き戻されて
私は わたしのまま

角砂糖が溶けて混ざるようにはいかないね。

冷え込む前に帰ろう
少し早足で公園を抜ける



次は【仮想】でお願いします。
963名前はいらない:2006/04/07(金) 23:11:46 ID:+76q/S6F
「プラタクル」

僕は僕のまま 僕でありたかった 僕は僕の外で 壊れかけていた
僕は僕の事を 守りたかった 僕は僕の中で 僕を作り上げた

僕は僕の中で 僕を作り続けた 僕が壊れた時 僕と取り替えた
僕は僕の中で 僕を支えあった 僕は僕の中で 僕と共に居た

僕は僕の中で 僕と語り合った 僕は僕の中で 僕と慰めあった
僕は僕の中で 僕と励ましあった 僕の中で 僕は増えていった

僕は僕の中で 僕が好きになった 僕は僕の中で 僕に嫉妬した
僕は僕の中で 僕を取り合った 僕は僕の中で 僕とケンカした

僕は僕の中で 僕と争った 僕は僕の中で 僕を奪い合った
僕は僕の中で 僕と殺しあった

僕は僕の中で (作り続けた 取り替えた 支えあった 共に居た)
僕は僕の中で (語り合った 慰めあった 励ましあった 増えていった)
僕は僕の中で (好きになった 嫉妬した  取り合った ケンカした)
僕は僕の中で (争った 奪い合った 殺しあった 作り続けた)



  僕  が  溢  れ  て  ゆ  く  



僕は僕のまま 僕でありたかった
僕は僕の中で 壊れてしまった
僕は僕の事を 守れなかった
僕は僕のまま 僕である事をやめた
964名前はいらない:2006/04/07(金) 23:12:18 ID:+76q/S6F
次は 【四次元】でお願いします。
965 ◆hon/GWhNf6 :2006/04/10(月) 23:57:31 ID:QVSraacI
「四次元の遡行」

そこは白く四角い部屋だった
採光の窓もなく蛍光灯もなく
壁全体が淡く光を帯びていた
四畳半ほどの広さの部屋の中央には丸い机があり
その上に花瓶の影が置かれているが
花瓶そのものの実体は見あたらない
出入口は一切なく均質に閉ざされた空間で
自分はどこから入ってきたのだろうかと考えながら
歩いていると赤いビニールボールが横から
ポーンと飛んできたので慌てて避けると
部屋の外にいた

結局は出たわけでも入ったわけでもなく
内は即ち外であり
ちょうどボールが飛んでこなければ気付かずに
ずっと閉じ込められていたわけだ

外は少し肌寒いがいい天気だった
散歩でもしてこようか
剥きだしの地面に机の影が落ちていて
その上にはガラスの花瓶が置いてある
机そのものの実体は見あたらないが
そこらにボールが見あたらないのはきっと
今は部屋の床に転がっているのだろう


=======================
次は「四月」でお願いします。
966名前はいらない:2006/04/11(火) 21:48:47 ID:o4a8hO5A
「四月の頃」

三月が明けて間もなく 桜の花弁が空を覆いました
風に揺れながら落ちる花片が 並木道に桜色の絨毯を作っていました
空気が暖かい 日差しが心地良い なんだか眠い
垣根に胡坐の野良猫を羨ましく眺めながら 私は職場へ向かうのです

何をやるにも上手くいかなくても 桜は所々で目に映って
景色を色鮮やかに彩るものですから 失敗ばかりの日々でも楽しく思えるのです
桜吹雪に映える宵月と 安酒をすする貴方の横顔が
恋ボケした私の心に 春を教えてくれるのです

-------------------------
次は「我が家」でお願いします。
967 ◆L4LyBSss3w :2006/04/11(火) 23:31:53 ID:AdxzDAG8
【形而上house】

屋根と壁が有って雨露を凌げる
ドアの鍵は私が持ってる
表札には自分ひとりの名前

まいにちを暮らす部屋
此処は、我が家なのかな

ほんのひととき
身を寄せるだけの宿木
いつまでもそんな気分が抜けなくて

水面を漂う泡みたいに
不確かでぱちん、と消える
それだけの

それだけの。



次は【ニュース】でお願いします。
968青の羊 ◆pNGtbbWniA :2006/04/14(金) 03:37:05 ID:G6vmQA9B

【ニュース】

僕にとってのニュースという言葉は単なる有用な最新情報に留まらない
活動自粛気味のアイドルグループやら
NEWS→玄武、青龍、白虎、朱雀まで
ぐるグル guruっぐる……してしまう

こんな時間なら尚更/3:36am
「おーいお茶」を飲みすぎて眠れなくなった僕に
すっきりした顔のキャスターが
「おはようございます。」と笑顔で今日のニュースを告げた



次は【美味しい…】でお願いします。
969心霊写真 ◆Mummy.hmy6 :2006/04/15(土) 01:41:11 ID:qeNg2WTt
【美味しい…】

ひさしぶりに美味しい・・・
なああんた殺すつもりやろていうか死ぬつもりやろ
早く死んで早く死んで早く死んで早く死んで

私は死体をバシバシ叩いて次なる貝料理をせがむんや
三葉虫の化石を抱いてアンモナイトに耳あてて

私の望む終わらない食事はな
過程はあってもオチがいつも無くオチがあったら胃が足りない
デザートなんてあるはずも無くピシピシ吐いてフェイドアウト
二、三人が最前列を死守するバイキングは
そりゃいつまでも順番は来ないけど
餓死するなんて冗談でしょう

さっさとアンコールの手を叩いて
なんにも出てこなかったなら
「ああ幸せの真っ最中でしたね」って
誰もわからなくて良いから
誰か思って


次のお題は「すすきの」でお願いします。
970 ◆hon/GWhNf6 :2006/04/17(月) 21:35:12 ID:jEcJSLWO
「一夕之酔話」

どのみち、今日なり明日なり、すすきの界隈なら
コロポックリあたりの炉辺焼きで、な
昨今は猫も杓子も「いんたあねっと」だから
なにしろIT長者だか知らないがマスコミも
強きを助け弱きを挫いてる有り様だ
東京に長く居りゃ“蟹が食いたい”ってさ
出ばってみれば“霧の摩周湖”だったりね
あとちょいの辛抱したら、うん、本社へ戻されるから
で、そのあの、理想の話ですけど菱沼聖子さん、いいですね
知らない?動物のお医者さんって漫画がありまして……
ほう、知床行きたがってたカップルいたねぇ
それにつけても最近の若いのは使えないよ、本当
向こうでサラリーマンが何か大いに喚いてるけど
こないだ知り合いの息子がエイズになったとかでね
自暴自棄になっちゃってアレ、大変らしい
そうさなぁ、ふん、ありゃ大変だ
それで毎朝、大学に行くと新雪に体半分埋まってるわけです
近道するもんでハマっちゃう、毎朝です、そんな菱沼さんですよ
なに、またマンガの話かね
おっちゃん熱燗ひとつとほっけ焼いておくれ
結局ンところ、な、犯人はヤスなのかな?
いや、いいよ、隅っこの方でちびちびやってるから
そいつが言うわけ、つくづく平凡が一番だってさ
役者をやるって友人で都会にしがみついてるのがいたっけ
本当に人間ってえやつは幾星霜、何十年来の
復讐だか怨念もみいんなみんなオホーツクに消えてしまった
いかんせん、な──“わたしはまりも”

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次は「予感」でお願いします。
971 ◆L4LyBSss3w :2006/04/21(金) 23:59:02 ID:2dRwA1Si
【予感を】

一閃の風にさらん、と揺れるゆきやなぎの白
昼下がりの眩しいアスファルト

とうに花を散らして、萌黄色にささやく桜。

抱えた黒いファイルケースはそのまま
ひととき足を留めて、ゆるりと呼吸を意識する。


安らかに、死ねる。
唐突に浮かんだ想いに戸惑う。


微かに苦笑い、襟元を指で調えながら歩き出す。




次は【銀色】でお願いします。
972スークー ◆KUSO6ymY8A :2006/04/24(月) 19:35:28 ID:cUkdLpvg
「銀色」

お父ちゃんあれ追い抜いて
ちがう向こうやこっちやないて なあおっさん聞けや
高速ムカつく なんでこんな曲がりくねっとんねん
あいつの雲はまっすぐに線ひいとんのにやー
くそーなんであんなにカッコええねん ピッカー光っとるし
あかん パンクや完璧わからん
ちょっと冷静に考えてみるからおっさんフランク買うてくれ
無視すんなやあほもっとスピード出せ
おおぉ夕日綺麗なあー
あれっ おっさんも頭にまっすぐな銀色走っとるで
なんやお前もなかなかカッコええやんけペシペシ



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次は「がびーん」でおねがいしMAX
973名前はいらない:2006/04/24(月) 21:21:37 ID:UsTJ+qWG
「とある日常」

藍色の空が徐々に白む頃に私は帰途に着く
始発の電車に疎らな人は皆、思う所へと向かうのだろう
その幾つかは途中で降りる。その幾つかは私と共に終点まで向かう

揺れながら眺める広告 徐々に増える人 人 人
込み合い 圧し合い 時々 睨み合う
その様を眺めながら 私は狭い席の中 自宅の猫を想う

いつもと同じ風景 いつもと同じ時間 いつもと同じ場所で
私はいつもの様に 帰途へ向かうのだ



そんな夢を見て ふと目覚める
職場のデスク上でパソコンが午後3時を告げていた
仕事が溜まっていた 帰れなかった

五日経って 急いで帰った
猫は餓死していた

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次は「夕焼け」で御願いします。
974 ◆L4LyBSss3w :2006/04/24(月) 23:30:13 ID:MiTg4RI1
「夕焼け」

そらのいろ、が
あかく かわっただけ、で

むねのまんなか、の おくのおく
くちを かたくふうじて
ころしてしまったはず、の

ちいさな
わたしが
ふるえるよ。




次は【散歩】でお願いします。
975 ◆hon/GWhNf6 :2006/04/27(木) 00:05:11 ID:zlf6hhj6
「プロムナード」

尖塔が正円を描いて灰色の空を指す
窓辺に暗がりの男が仮面を伏せる
庭園
十字路の小道
芝草の匂いが午後の湿度に浸透する
雷鳴
遠くに 遠くで
中耳を軋るような
ゆっくりと
小道の十字路を巡る
一定のパターンに組み上げたそれは
精緻な散歩
いつしか口の中が切れていて
血の塩味を噛みしめる
いつしか窓辺に暗がりの男が
姿を消した
毎日 毎晩 一生
費やされる夢の これが
あらゆる目覚め
そのことを待っている
知っている
大気は潤う


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次は「横切る」でお願いします。
976名前はいらない:2006/04/28(金) 07:21:44 ID:P0o70LIx
【風】

横切ったのは風
あなたとの思い出の詰まった風
もう見えない風


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次は精液でおねがいします
977霧都 ◆SNOW/oy/Uw :2006/04/28(金) 23:29:47 ID:e5KgbTpp
膨大に精製され
目標へと泳ぐ

感情のない粘液は
遺伝子の魔力に逆らえない

本能という人もいるけれど
それはまさに恋の波紋

例え一夜の伽であろうと
白い魂達は

まっしぐらに突き進む


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次は 『PMS』 で、お願いします。
978 ◆L4LyBSss3w :2006/05/02(火) 22:29:27 ID:u+7FpCKv
【化学的周期的躁鬱】

積み重ねた小さな理性の塔も
貼り付けた笑顔で得た人当たりも
ひとつまみにも足りない酵素の流れで
あっさりと壊れて

胸ポケットに刺した3色ボールペンで
この煩い客の目玉を突き刺せばスッキリするかな
それともメーカーの担当を縊り殺すかなぁ
あぁもうみんな死んじゃえ私も死んじゃえあああえあああ
ああ嫌いだあああああもう嫌だああああああああああ
ああ死ね死ね死死死死あああああ死ね死死死死ああああああああああああ


泥水溜まりと等しい有機コロイドは
今月もまたバランスを崩して分離しました。





次は【クロスワード】でお願いします。

979鬼津月 ◆tBqj2O1lqQ
  クロスワード

細切れにされた
角張る空白の連鎖に
満たされない心は
重なり合う真実の言葉を
強く欲していた
外に、渦巻く雑音は
縦横に嘴を挟んでは
手掛りの秘められたという謎をかけ
冷淡に通り過ぎてゆく
取り残され、途方に暮れたものは
空白の箱に落ちて、頭を抱え
降り注ぐ文字を、両手に受けながら
とめどない言葉の積み木に、黙々と
駆り立てられていった

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お次は「皇帝」で。