74 :
曾村益廊:
「牡蠣と老人」
老人は 牡蠣に食べられてしまいました
牡蠣猟の日 私と老人は遠海へ舟を 漕ぎ出しました
二、三時間後 老人の白髪が太陽で灼け 匂いがこちらまで漂って来ました
臭い すごく臭い と思いました
その刹那 とても大きく 臭い匂いを発した何か が老人を襲いました
牡蠣です
体長およそ4mはあろうかという牡蠣が 老人をひと飲みにしてしまいました
牡蠣の中から老人のくぐもった声が聞こえてきました
「おい あけてくれ この中から早く出してくれ おい 早く出し、、、いや出さな、、出さないでくれ 儂はまだ出たくない」
私はあらかじめ用意してあった銛を掴むと 勢いよく 牡蠣のどてっ腹目掛けて突き刺しました
中から 「ぎゃあああああああああああ」 という声が聞こえました
どうやら私の突いた銛が老人のどてっ腹にめり込んだ様でした
その声に驚いた牡蠣は 老人を吐き出しました
しかし 出てきたのは老人ではなく 赤ん坊でした
産まれたての赤ん坊は 腹から血を流し 苦しそうに笑っていました
私は牡蠣から吐き出された赤ん坊を抱きかかえ思いました
(まったく、生臭せぇなぁ・・・・・)と
おしまい