242 :
人形使い:
『三本の匙とグレープフルーツ』1/2
みっしりと紅玉の粒は立ち
金属の匙で掬うと
匙は
鋭い酸で溶けて崩れた
つるりと木卓に落ちた実を
慌てて拾い
口に入れる
みるみる舌は溶け落ち
眠るような心地がした
ふたくちめで喉の肉が崩れ
径は広がり
胸郭までの吹き通しとなり
腐れた肉で喉がつまる
みくちめを噛むと
歯は崩れ
滴りは胸のうちに達した
243 :
人形使い:04/06/10 16:56 ID:tVCzS9Ch
// 続き 2/2
わたしは空洞となり
風の吹く夢を見るのだったが
心臓だけは侵されることなく
さっぱりと表面を洗われて
赤く輝きを増してゆくのだった
その鼓動は揺るぎ無く
すべてが宇宙の中心へ収束していくという予言は偽りで
宇宙の中心が
この灼熱の心臓をめがけて落ちてくるのだと
そのとき
わたしはそう確信した