339 :
向日人:
待ち合わせ
「何時もの場所で待っている」
僕にそう言い残して彼は姿を消した
僕は携帯電話で彼の文字列を探してみたが
そうだ彼は携帯なんて持っていない
携帯をポケットにしまうと
僕は何時もの場所を探し歩いた
空の下 人々は血管を巡る血液のような動き方をしている
街中売りたいものだらけだ
炉端でアクセサリーを並べて売る若者や
道路にはみ出てまで商品を置いて 安いよ安いよのオッサン
体だけ 起き上がり溢しのような営業マン
無料だといって ちゃっかり名前を売っているフリーペーパー
「我々には時間がない 我々には金がない
労働は戦争だ 人生だ 安息の地は墓場のみである」
僕は街中を走り回る宣伝カーに追い回されながらも
財布の中身と相談しつつ歩道を歩き回る
少しだけその場所が分かったつもりでも
彼の居る座標は正確な時間軸を
使ったとしても大きくずれ込んでしまう
僕は労働する時間に挿げ替えて
彼との待ち合わせ場所を探さなくてはならない
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340 :
向日人:2007/05/30(水) 01:49:31 ID:vChtyBgq
僕は小さな思い出を頼りに市内の駅を訪ねる
彼の立っていたホームには御年寄りが居るだけだ
キヨスクのおばさんに訪ねたって絶対分からない
僕は小さな勘を頼りに駅裏の公園を訪ねる
彼の座っていたベンチには
ノラ猫を抱いた学生が神妙そうにこちらを見る
この子に聞いたって何も分からない
僕はお腹が減ったから駅前のコンビニのドアをくぐった
立ち読みしている人達の中に見慣れない影が揺れているように
僕は見えた
僕は何も買う当てが無かったので
遠慮がちにガムを1個買ってその場を後にした
小さな手からお釣を貰い それを財布にしまう
「よぉ 遅かったな」