「手品」
ひとつ ふたつ みっつの玉から
弾かれ 転ばれ 呼ばれる名前を
澄ました顔して 隠しましょう
胸の内緒に縫い付けて
うしろを向いたら花を出し
振りかえったなら飲み込んで
隠しなさい 隠しなさい
あなたの両手の才能を
小指の順からボールに込めて
脚光を浴びる空中の 光のさ中に隠しましょう
隠しなさい あなたの両手の手管も技も
空に放った糸たちの並ぶ裏地に隠しなさい
綺羅を見上げるタイル地の モノクロ光が顔の上
通過してゆく茶色い鉄の レバーに一目くれてやれ
一目くれて 挨拶もせず
一目くれて 通り過ぎ
二度とは逢わない 三つの名前
ぽろん ぽろろん ぽろろろん
気づかれましたか?
私の小指は六人姉妹