「野原」
月曜日が五回あって
五度目の勤めを終えた路上で翌月の第一日目が明後日であることに気づき
妹の目がまぶたから遠く遠くはなれていくと
草が波うち、膝をくすぐり、遠ざかり
君は真夜中の中で鳴き声を聴いていたことに気づく
陽の渡りがうるさくわめき
部屋の空気を端からぬり替えてゆくと
君はそのときには、もう帰りついていたようだった
めざす大通りは高く飛びあがり
風を地上近くまでよこし
草を編む少年たちの薄着のからだにも寒気を届けている
生草の根が乾いていることに少年たちは気づかない
けれどその思考から飛び散る火花が朝露にかき消される
この平面の舞台をななめに突き破る坂道の途中から、下流を跨いでやってくる街からの招待に手を振り
君は少年たちを空中高く巻きあげて、かまいたちの渦にかき込み
こめかみにまでぎりぎりと、ほほの筋肉をつりあげた表情を、上半身に隙間なくはりつけて
背中から突き出る円錐状の翼の中に
燃えさかる牧草を束ねあげている
夜は遠く遠く泣きながら逃げ出してゆき
朝も同様に声をからして悲鳴をあげながら、その音が君の気をひいてしまうのではないかと恐れて身動きがとれなくなっている
そして敗北し、使いの足下に落ちる杖をよろよろと伸ばした手の先で触れようとしたままこと切れていた
旋回する下半身だけの翼が、つぎの狙いをつけようと目をこらしている