〜〜詩で遊ぼう! 投稿梁山泊 11th edition 〜〜
出せない手紙が部屋に満ちて
その上でぼくはぷうかぷうか浮かんでいるのです
もうすでに
窓は深く海中に沈み込み
かろうじて
外から聞こえてくる笑い声と
時折団地の向こうを走る電車の音で
まだ間に合うと自分に言い聞かせるのです
部屋は暑く
換気もきかないので
ダラダラと手紙に汗が染み込んで
滲んだインクで
濁った波間に揺れて
上部だけを僅かに覗かせた扉を
横目でぼんやり見つめていると
あの向こうには誰かが立っていて
ノブに手をかけているんじゃないだろうかと
不安に息を殺すのです
聞いてください
それでもここは
どろりとした海中に潜ると
すぐに光は届かなくなり
腐ったような異臭に身を包まれますが
膝を抱えると
とくんとくんと体が揺れて
とても心地よいのです
聞いてください
それでもぼくは
いつか
手紙の海にすっかり溺れてしまう前に
扉を開けて欲しいのです